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恋ってウソだろ?! 63
しおりを挟むACT 5
そりゃ、わかっていたさ。
いきなり電話がつながらなくなれば。
あの人が故意に俺を避けているのだと……。
まだパーティで盛り上がっているマンションを出た沢村は、小雨がそぼ降る中、とぼとぼと首都高の下を歩いていた。
帰ろうとしている佐々木に気づいた時、我を忘れて佐々木を追おうとした。
もう、佐々木には手が届かなくなるような気がして焦りまくった。
藤堂に腕を押さえられた時、沢村ははたとそこがどこか思い出した。
いくらなんでも佐々木の友人宅で揉め事を起こすようなマネはしたくはない。
そのまま沢村もマンションを出たのだが、既に佐々木たちの姿はどこにもなかった。
出掛けに藤堂は何か言いたげな顔をしていたが。
おそらく、佐々木はテレビに出た自分を見たのだろう。
あまりテレビなど見ないと言っていたから、スルーしてくれるんじゃないかなんて。
甘かったな。
だから、あの時話したのに、聞いてないんだもんな、肝心なこと。
いや、同じことか。
くそっ! そんなに、野球選手が嫌いなのかよ。
沢村は拳を握り締めた。
いや…………あの直って子からいろいろ聞いたのかもしれないな、俺のことを。
だからマスコミは嫌いなんだ! あることないこと書き立てやがって!
朝、電話で佐々木にきっぱり拒絶された沢村は、それでも諦めきれず佐々木のオフィスの近くまできて、車を停めてずっと佐々木を待っていた。
我ながら立派なストーカーだと思いながら。
ところが仕事を終えた佐々木は直子と連れ立ってオフィスを出ると、二人でタクシーに乗った。
まさか、二人でホテルにでも行くのかと頭に血が上った沢村は、二人の乗ったタクシーを追った。
二人がタクシーを降りたのはホテルではなくハイグレードなマンションだった。
簡単にあとを追うこともできないとマンションの前に車を停め、悶々とエントランスを睨みつけていた沢村の前を、着飾った男女が次々とマンションの中に消えていく。
パーティらしいと気づき、何とか中に紛れ込む手立てはないかと、ハンドルを握りしめていたところへまたタクシーが停まり、降りたのは何と良太だった。
沢村は、考えた挙句良太の携帯を鳴らした。
案の定、良太はプラグインのパーティだと答えた。
「俺も行く、そのパーティ」
咄嗟に沢村は宣言していた。
「…え? いや、ちょっと聞いてみないと……」
良太はいきなり沢村にそんなことを言われて戸惑っていた。
「別に構わないだろーが、俺ひとりくらい混じったって、お前のダチって言えば」
怪訝そうな良太に強引に言い募ると、案外簡単に了解をとりつけられた。
慌ててホテルに戻り、佐々木への土産にと以前買っておいた酒などを持ってまたマンションに引き返した。
だが、いざ中に入ってすぐ佐々木を見つけたものの、容易に佐々木に近づくこともはばかられた。
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