恋ってウソだろ?!

chatetlune

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恋ってウソだろ?! 27

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「俺、そんな、浮かれてたっけ?」
 実はそんな風に言われたのは浩輔が最初ではない。
「佐々木ちゃん、今日何だかすんごくハッピーって感じ? どしたん?」
 直子がそう指摘して下さったのは昨日のことである。
 参ったな………
 事実だとしたら可笑しな話だ。
 仕事を離れると、自分が自分でないみたいなのだ。
 あいつ、トモのことですぐ頭がいっぱいになる。
 こうして浩輔と一緒にいてさえ、油断しているとすぐトモが頭の中を侵食してくるのだ。
 あり得ないだろう、こんなこと。
 
 
 
 
 青山プロダクションでは藤堂も合流した。
 プロダクション所属の中川アスカ、南澤奈々との打ち合わせのあと、ちょうど社長の工藤がオフィスに立ち寄ったので、佐々木は挨拶に立った。
「いよいよ、佐々木さん、動き出すってところですか。これまで以上に期待していますよ」
「よろしくお願いします」
 工藤はまたすぐに外出したが、「すごいね」とすかさず藤堂が言った。
「鬼の工藤に期待されてますとかって言わせるとは、さすが佐々木さん」
「プレッシャーかけんといてくださいよ」
 佐々木は苦笑する。
「いや、ほんとですよ、工藤さん、滅多に人を褒めないし」
「佐々木さんて、すごい人だったんだ、実は」
 良太までが感心したように言う。
「やめてくれよ、良太ちゃんまで。それより、男性モデル、絞っとこか」
「あ、はい、小笠原、大丈夫そうなんで、あとは、文化人から三人、スポーツ界から三人くらい?」
 小笠原祐二はやはり青山プロダクション所属俳優で、人気だけでなく最近は実力をつけてきている。
「文化人は、佐々木さんと弁護士の佐古田さんでどう? スポーツ界は……」
 藤堂がさりげなく進めていくのに、「ちょ、待った」と慌てて佐々木は口を挟む。
「佐々木さんって、俺のことやないよね?」
「他に誰が?」
「お茶を点てるのはええとしてもショーに出るなんて、言うてへんで」
「佐々木さんが出なくて、このショーは成り立たないと思わないか?」
 藤堂が他の面子に確かめるように尋ねた。
 すると良太も浩輔も、一様に頷く。
「わかった。ほな、藤堂さん、あんたも出るってんならやってもええ」
「え、俺? 俺じゃ役不足だろ。文化人ってほどでもないし」
「なら、俺かて同じや」
 佐々木は腕組みをして言った。
「茶道師範といえば、立派な文化人。あとは、どうかな、棋士の新山氏ってとこ?」
「そうですね、そのあたりですよねぇ」
 佐々木の抗議はなかったことのように、打ち合わせが進んでいく。
「スポーツ選手は、やっぱ古谷さん」
「古谷って、ああ、元野球の監督さんやったか?」
 良太が上げた名前に佐々木も頷く。
「スポーツ界はあまりよく知れへんからな、テニスの錦田くらいしか」
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