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水嶋ゆらぎ(無口で無表情、大人っぽい金髪ロングちゃん。女医さんの魔の手で)

水嶋ゆらぎ③

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 鬼型妖魔は水嶋ゆらぎの全ての霊力を吸い尽くしたと、ご馳走を食べ終わった後のように、舌で自分の口の周りをなめた。
 ゆらぎは喘ぎ声を漏らすことはなかったが、体力的にも精神的にも限界で、ぐったりとしている。肉棒もさすがにヘナヘナになっていた。絶頂のたびに射精と同時に潮も吹いたため、ゆらぎの周りは愛液で水浸しだ。
 霊力を奪い尽くされたゆらぎは、もはやただの一般人と変わらない。それはつまり、いよいよ用済みとなり、生かしておく必要がなくなったことを意味する。妖魔としても、もう充分に楽しんだことだろう。
(殺される……)
 ゆらぎは理解していたが、疲労が溜まって体がほとんど動かない。逃げることも抵抗することもできそうにない。
 鬼型妖魔は、その筋肉質の腕でゆらぎの首をつかみ、高く持ち上げた。妖魔が力を込めると、気道が詰まり、息ができなくて苦しいが、ゆらぎにはどうすることもできない。
 妖魔がさらに力を込めると、ゆらぎの首の骨が軋(きし)んだ。
「アッ……グッ……」
 口から苦痛の音が漏れる。このまま窒息するのが先か、頚椎(けいつい)が折れるのが先か。視界が暗く、狭くなって、意識が遠のいていく――。
(だれか……)
 そのとき、妖魔の背後で何かが風を切ったような、ヒュンという短い音がした。遅れてゆらぎの首をつかんでいた妖魔の腕の力が緩み、ゆらぎは地面に倒れた。さらに妖魔もバッタリと倒れて動かなくなった。
 誰かの足音が近づいてくる。視界に入ってきたのは、黒のハイヒール。
「もう大丈夫よ。安心して」
 消えかかっていた意識の端で、ゆらぎは優しい女性の声を聞いた。


 ゆっくりと目蓋を開けると、明るい天井が目に映った。
 どうやらベッドに寝かされているらしい。学校の保健室を思わせる、小綺麗な部屋だ。白衣をまとった女性が、スチール机に向かって書き物をしている。ゆらぎは強張った体をそっと起こした。
 その気配を察して、女性が振り向いた。
「ああ、目が覚めたのね」
 黒縁のメガネをかけた、理知的な印象の大人だ。二十代後半くらいで、ツヤのある巻き髪を垂らしている。
「ここは……」
 ゆらぎが呟くと、白衣の女は親しみのこもった笑みを見せた。
「大丈夫よ、あの妖魔は私が抹殺しておいたから。ここは私の診療所。気絶していたあなたを連れてきたの」
 ゆらぎが倒せなかった妖魔をあの一撃で倒してしまったのだとしたら、相当の実力者に違いない。そして命の恩人というわけだ。
「ありがとうございました」
 ベッドの上で頭を下げる。
 と、自分が裸であることに気付いて、ゆらぎはシーツを引き寄せ、前を隠した。
「恥ずかしがらなくていいわ。それに、何も心配はいらないのよ。あなたの体は、私がきちんと、丁寧に、隅々まで、綺麗に洗っておいたから……」
 そう言って、女性は優し気に微笑む。
 なんだかそれが演技のように見えて、ゆらぎはかすかな違和感を抱いたが、今は自分が安全なところにいるという事実に、とにかくほっとするのだった。
(そういえば、あれは……)
 ゆらぎは何気ない様子を装って、こっそりとシーツの中に手を差し入れて、股間の辺りをまさぐってみた。
 ……ある。
「それは放っておいても、そのうち自然に縮んでなくなるわ」
「そ、そうですか」
 ゆらぎは、女性に見抜かれたことが恥ずかしくて少し顔をうつむかせた。体を洗ってもらったときに、直接見られたに違いない。
 そのとき、ゆらぎのお腹がグゥと鳴った。まもたや恥ずかしさで、顔を伏せ、縮こまる。
「お腹、空いてるのね。ちょっと待ってて」
 女性は部屋から出ていき、サンドイッチと温かい紅茶を手に戻ってきた。
「遠慮しないで食べて。……全部、残さずね」
「すみません。ありがとうございます」
 あまりに空腹だったので、女性の優しさに甘えることにした。その味は、今まで食べたどんな料理よりも美味しく感じられた。
「私の名前はリンネ。ここで医者をやりながら、退魔師もやってるの」
 ゆらぎが食事を終える頃、女性は自己紹介をした。
「あなたは?」
「水嶋ゆらぎです。高校二年生です。ごちそう様でした。おいしかったです」
「ゆらぎちゃん、ね。あなたが無事で、本当に良かったわ」
 リンネはゆっくりとゆらぎに近づいて、ベッドに腰かけ、タイトスカートから伸びる脚を組んだ。その物腰が優雅でセクシーだったので、ゆらぎはちょっとドキドキした。
「戦いで、とっても疲れたでしょう? マッサージしてあげる。得意なのよ」
 リンネの手が、ゆらぎの肩に触れる。
「あ、あの……そういうのは、やったことがなくて……」
 お金も持っていないのに申し訳ないという気持ちと、他人に体を触られることへの抵抗から、ゆらぎは遠回しに断ろうとした。だがリンネの手は遠慮を知らず、ゆらぎの乳房を円を描くように揉んだ。
「ちょ、ちょっと、それは……」
「マッサージしたほうが、元の体に早く戻れるわ」
 それは魅力的な話だったが、やはり裸を見られるのは恥ずかしい。しかしリンネは命の恩人でもあり、医者であるなら妖魔の呪いに詳しそうだから、無碍に突き放すわけにもいかない。
「大丈夫。これも治療よ。リラックスして、体を私に預けて」
 ゆらぎはいつの間にかベッドの上でリンネに密着されて、豊満な胸の感触を腕に感じていた。体を隠していたシーツは半分めくられてしまい、上半身の素肌があらわになる。さすがに下半身はシーツで隠したままだが。
 そのまま成り行きでベッドに仰向けに寝かされ、マッサージを受ける格好になってしまった。あまり気は進まなかったが、早くこの体が元に戻るなら、とゆらぎはしぶしぶ自分を納得させて、大人しく目を閉じた。
「リラックスできるように、特製のオイルを塗っていくわね」
 ベッドのそばの棚にはオイルの小瓶が並んでいたが、リンネはそれではなく、引き出しの奥から別の瓶を取り出した。ふたが開くと、花のような甘い香りが漂ってきた。
 リンネはゆらぎの肩や首にオイルを塗りながら、筋肉を揉みほぐしていく。得意だと言うだけあり、慣れた手つきだったので、ゆらぎはすぐにリラックスした気持ちになり、強張った筋肉がほぐされていくのを感じた。
「ゆらぎちゃんの肌、本当に素晴らしいわ……。滑らかで、素敵……」
 うっとりした声で誉められたが、ゆらぎは何と答えていいか分からず、黙っていた。
 リンネの手がゆらぎの乳房にオイルを塗っていく。周りから中心へ。しかし中心の乳首には触れそうで触れない。治療の一環のマッサージなので、当然だろう。
 さらにマッサージは体の下のほうへと進んでいく。
 リンネの手が、ゆらぎの下半身を隠すシーツを取り去ろうとして持ち上げた。
「ここまでで……いいです」
 ゆらぎが体を起こすと、リンネはいったん手を止めた。
「全身に塗ったほうが効き目があるわ。女同士だし、恥ずかしいことないのよ」
「で、でも……」
「あと何日も、こんなものが生えたままでいいのかしら?」
「それは……」
「最悪、友だちや家族に見られるかもしれない。そうなったら……」
「…………」
 ゆらぎは嫌な想像をしてしまい、怖くなった。一秒でも早く、元の体に戻れるなら戻りたい。観念して従順に体を横たえる。
「偉いわ」
 下半身のシーツがそっと取り払われ、灯かりの下に、ゆらぎの全裸がさらされた。
 自分の体に男のものが生えているのを見られていると思うと、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「見られて、少し興奮してる?」
「ち、違います」
「じゃあ、どうしてこんなに硬くなっているのかしらね」
「分かりません……」
 そう言ってゆらぎは顔を横にそむけた。
 リンネがゆらぎの下半身のマッサージを始める。太ももの内側や、脚の付け根など、際どい部分にもオイルが塗り込まれていく。女性らしい、丁寧で繊細なタッチで……。
 ゆずりは治療のためだと思って、できるだけリンネの手つきを意識しないようにした。だがそうすると、オイルの甘い香りが余計に意識されて、頭がぼーっとしてしまう。
「顔に、タオルをかけるわね」
「はい……」
 蒸されたタオルが目の辺りに載せられると、蒸気の熱でじんわりと疲労が溶けていく気がした。ただ、視界が真っ暗になると、リンネの際どいマッサージの感触が強く意識されしまう。
 リンネは乳房を揉みしだいても、先端には触れそうで触れない。男のものの付け根、女の肉の割れ目にも、今にも触れてきそうになので、ゆらぎが密かに身構えると、指が遠ざかっていくのだ。
「……っ♡」
 ゆずりは体が疼くのを感じて、身じろぎしてしまう。リンネの指先の動きを、鮮やかに感じ取ってしまう。
 何かが、おかしい。体も、心も――。
「脚を開いて。もっと……、そう……いい子ね」
 ゆらぎは恥ずかしいから脚を開くのは嫌だと思ったのに、リンネの愛撫に導かれるようにして、無意識のうちに脚を開いていた。そして、さらに際どい部分――陰部の肉の花びらまで、いじられてしまう。
「……くっ……ん♡」
 やがて淡い声が漏れ始める。体は小刻みに震え、時には腰が浮き上がりそうになり、もどかしくて、じっとしていられない。全身に鳥肌が立っている。触れられた肌が熱くなって、敏感になって、指先に反応してしまう。見なくても、自分の乳首が、男のものが、痛いくらい硬くなっているのが分かる。
(どうして触ってくれないの……?)
 自分からお願いするわけにもいかず、ゆらぎは唇を噛んで、待つことしかできない。
「あっ……ん♡ ふぅ……♡ んくぅ♡」
(こんなの続けられたら……おかしくなる……)
 しかし「もうやめてください」という言葉は、なぜか声にならず、代わりに自分のものとは思えぬ湿った声が漏れるだけだった。
 焦らされすぎて、いよいよ頭がおかしくなりそうになった頃、リンネが突然、手を止めた。
「はい、これでマッサージは終わり」
「えっ……?」
 顔にかぶせてあったタオルが取り払われると、まぶしい光の中、リンネが見下ろしていた。ゆらぎはその言葉の意味がすぐには理解できず、惚(ほう)けた顔をしていた。
「シャワーを浴びたら帰っていいわ。ゆらぎちゃんが着ていた制服はボロボロだったから捨てちゃったけど、代わりの服を置いておくわね」
 どんどん話が進んでいくので、ゆらぎは口を挟まずにはいられなかった。
「で、でも……」
「ああ、新しい服は返さなくていいわ。それに、駅まで車で送ってあげるし、電車代も返す必要はないからね」
(そうじゃなくて……)
 体が疼いて仕方がないのだが、ゆらぎは自分から言い出すことができない。何をどう伝えればいいのかも分からなくて、言われるがままシャワーを浴びに行く。
 浴室のドアを閉めると、一人になった。ゆらぎはどうしていいか分からず、しばらく放心したように、ぼーっと立ち尽くしていた。

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