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第一部 桃井さんとイチャイチャしたい編
13,アレには様々な呼び方がある
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食堂には俺が見かけた四人に加え、さらに四人、合計八人の生徒が来ていた。
フロアは、テーブルとイスを全部片付ければテニスもできそうなほど広い。今は生徒たちが、二人ずつに分かれて距離をとって座っていた。うまく男女のペアができている。
いつも日替わりメニューや限定メニューについて書いてある立て看板には、「本日のメニュー ジャイアントロングウインナー」と書いてある。それが示す通り、全員、大きな皿にどんと置かれた特大のウインナーを思い思いに食っていた。
「なんでウインナーなの?」
宮本さんが眉をひそめた。
「俺たちを爆死させるための罠。あるいは単純に主催者はそういう絵面が好きなんだ」
俺はお食事中の生徒のほうは見ず、代わりに天井付近から俺たちを見下ろしている監視カメラに顔を向けた。
「あとで口元だけモザイクかけてニヤニヤするのかもな」
「どういうことなのそれ」
くだらなすぎて説明したくなかったので、俺ははぐらかした。
「とにかく言えるのは、ランチのメニューが特大ウインナーしかないこと。ウインナーはナイフとフォークで切ってから上品に食べるべきだということ。下手にかぶりつくと死ぬ」
「ど、どうしてウインナーにかぶりつくと死ぬのよ!?」
宮本さん、本当に何も分からないんだろうか? ピュアかよ……。
「スケベなマンガやイラストでは読者サービスとして使われる手法だからだよ。ウインナー、バナナ、棒アイスなんかは全部危ない」
「スケベなマンガ……!?」
「とにかく俺の言う通りにすれば死なずに済むと思うよ。あとできるだけ余計なことをしゃべらないほうが長生きできる」
「し、仕方ないわね、今だけはあなたに従うわ」
俺たちは黙ってランチの受け取りカウンターに並んだ。奥には人間ではなくロボットがおり、勝手に二人分のウインナーを運んでくると、俺たちのおぼんに載せてくれた。
辺りを見回して座る席を慎重に選んでいると、手前のテーブルにいた男女……一ノ瀬ノノ(いちのせ のの)と、豪山岩男(ごうやま いわお)のペアが声をかけてきた。
「ねえねえ宮本さんも、いっしょにソーセージ食べよー?」
向かいに座っていた豪山が、「一ノ瀬、違う、これはソーセージではない」とツッコミを入れる。
なんでこの二人ペアになってんだ? 普段、接点なくないか? 豪山はガタイのいい柔道部の柔道バカで、カタブツだから、女子としゃべっているところなんて見たことがない。一ノ瀬さんはサラサラのロングヘアの美人だが、あまり特定の友人とつるまないで我が道を行くタイプだ。
まあ、この二人も俺と宮本さんのように成り行きでペアになっただけかもしれないが、いずれにせよ、大人数でわいわいランチを食べるのは無駄に危険すぎる。それに、三人以上でまとまって食事をとった場合、ミッションの指示の『男女二人一組』という条件を満たすのか分からない。
だから断るべきだ。
そんなことを考えていると、一ノ瀬さんが
「えっと、あー、宮本さんも、いっしょにこのウイ……肉の棒、食べよー?」
「いや、おかしいだろ! なんでそんなふうに言い直すんだよ!」
思わず俺はツッコミを入れてしまった。
が、一ノ瀬さんのほうを見るのは危険なので、俺は明後日のほうを向いている。だって、俺が一ノ瀬さんを見ているとき、もし彼女がウインナーの端っこをぱくっとくわえでもしたら、絵面的にラッキースケベ判定が下されて爆死っていうこともあり得る。
「なんでって、食べてるうちに、男の人のあれに見えてきちゃったから。あははー」
一ノ瀬さんはとんでもないことを言いやがった。死にたいのか!? っていうか痴女かよ!?
「男の人のあれとは? 柔道に、関係がありますか?」
あるわけないだろ! 今度は豪山がとんでもないパスを出しやがった。こいつも死にたいのか!?
「豪山くん、あれっていうのはね……」一ノ瀬さんは向かいに座る豪山の股間の辺りに視線を落とす。「専門的に言うと、おちん……」
「やめてくれ一ノ瀬さんそれ以上しゃべらないでくれ死人が出るからあああああっ!!!」
俺は大声でさえぎった。
今俺たちはウインナーを載せたおぼんを持っているので、耳をふさげない。だから大声で奇声を上げながら二人から離れるしかなかった。
ダメだあいつら! 一緒にいたら死ぬ! こっちまで死ぬ!
「ふう、セーフだったか。危機一髪だった。あの二人はやばい。やばすぎる。まったく危機感がないというか、そもそもこのデスゲームのルールを理解しているのか? 美少女が卑猥なワードを口にする、というのはラッキースケベ判定されてもおかしくないシチュエーションだ。一ノ瀬さんは美人だが変人。しかも食事中に、素の状態で卑猥なワードをなんのためらいもなく口にするような痴女。歩く爆弾だと思ったほうがいい。っていうか、どうでもいいけど全然専門的に言ってない」
「ちょっと……置いていくなんて、ひどいじゃないの」
宮本さんが俺を追ってきた。
「すまん、命がかかってたもので」
「でも一ノ瀬さん、なんて言おうとしていたのかしら?」
「宮本さんも分かってないのかよ!?」
この人と一緒にいるのも、かなり危ないような気がしてきたぞ……。
振り返って離れたところからあの二人を見ても、二人の首のリングは爆発していなかった。一ノ瀬さんがお下品なワードを口に出すのをやめたのか、俺の奇声で豪山にはよく聞こえなかったのか、そもそも下品なワードを言うこと自体はラッキースケベにはならないのか?
とにかく、下手に他のペアと近づくのはやめたほうがいい。爆死に巻き込まれるのはごめんだ。
「それでいいのですか?」
宮本美夜子ではなく、桃井さんの声が俺の頭の中で問いかけてきた。
「一ノ瀬さんはとても危うい状況にあります。彼女のような人ほど、誰かがサポートしてあげなければ生き残れないのではないでしょうか?」
女神な桃井さんが言いそうなことだ。
いや、でも。
一ノ瀬さんは自由人だし。言動が予測できない不思議ちゃんだし。俺みたいなヤツが彼女をコントロールできるとは思えない。
俺や宮本さんまで巻き込まれて死んだら、元も子もないじゃないか。
不意に。
そんな反論を吹き飛ばす大声が響き渡った。伊集院慧(いじゅういん けい)が叫びながら入り口から入ってきたのだ。
「食堂にいる者たちよ、気をつけろ! ウインナーは男根を意味している! 女子はくわえずに切ってからひと口ずつ食べろ! 男子は女子が男根をくわえているところを見るな! 繰り返す! ウインナーは男根を意味している!」
1日目 12:30
生存者 21人
フロアは、テーブルとイスを全部片付ければテニスもできそうなほど広い。今は生徒たちが、二人ずつに分かれて距離をとって座っていた。うまく男女のペアができている。
いつも日替わりメニューや限定メニューについて書いてある立て看板には、「本日のメニュー ジャイアントロングウインナー」と書いてある。それが示す通り、全員、大きな皿にどんと置かれた特大のウインナーを思い思いに食っていた。
「なんでウインナーなの?」
宮本さんが眉をひそめた。
「俺たちを爆死させるための罠。あるいは単純に主催者はそういう絵面が好きなんだ」
俺はお食事中の生徒のほうは見ず、代わりに天井付近から俺たちを見下ろしている監視カメラに顔を向けた。
「あとで口元だけモザイクかけてニヤニヤするのかもな」
「どういうことなのそれ」
くだらなすぎて説明したくなかったので、俺ははぐらかした。
「とにかく言えるのは、ランチのメニューが特大ウインナーしかないこと。ウインナーはナイフとフォークで切ってから上品に食べるべきだということ。下手にかぶりつくと死ぬ」
「ど、どうしてウインナーにかぶりつくと死ぬのよ!?」
宮本さん、本当に何も分からないんだろうか? ピュアかよ……。
「スケベなマンガやイラストでは読者サービスとして使われる手法だからだよ。ウインナー、バナナ、棒アイスなんかは全部危ない」
「スケベなマンガ……!?」
「とにかく俺の言う通りにすれば死なずに済むと思うよ。あとできるだけ余計なことをしゃべらないほうが長生きできる」
「し、仕方ないわね、今だけはあなたに従うわ」
俺たちは黙ってランチの受け取りカウンターに並んだ。奥には人間ではなくロボットがおり、勝手に二人分のウインナーを運んでくると、俺たちのおぼんに載せてくれた。
辺りを見回して座る席を慎重に選んでいると、手前のテーブルにいた男女……一ノ瀬ノノ(いちのせ のの)と、豪山岩男(ごうやま いわお)のペアが声をかけてきた。
「ねえねえ宮本さんも、いっしょにソーセージ食べよー?」
向かいに座っていた豪山が、「一ノ瀬、違う、これはソーセージではない」とツッコミを入れる。
なんでこの二人ペアになってんだ? 普段、接点なくないか? 豪山はガタイのいい柔道部の柔道バカで、カタブツだから、女子としゃべっているところなんて見たことがない。一ノ瀬さんはサラサラのロングヘアの美人だが、あまり特定の友人とつるまないで我が道を行くタイプだ。
まあ、この二人も俺と宮本さんのように成り行きでペアになっただけかもしれないが、いずれにせよ、大人数でわいわいランチを食べるのは無駄に危険すぎる。それに、三人以上でまとまって食事をとった場合、ミッションの指示の『男女二人一組』という条件を満たすのか分からない。
だから断るべきだ。
そんなことを考えていると、一ノ瀬さんが
「えっと、あー、宮本さんも、いっしょにこのウイ……肉の棒、食べよー?」
「いや、おかしいだろ! なんでそんなふうに言い直すんだよ!」
思わず俺はツッコミを入れてしまった。
が、一ノ瀬さんのほうを見るのは危険なので、俺は明後日のほうを向いている。だって、俺が一ノ瀬さんを見ているとき、もし彼女がウインナーの端っこをぱくっとくわえでもしたら、絵面的にラッキースケベ判定が下されて爆死っていうこともあり得る。
「なんでって、食べてるうちに、男の人のあれに見えてきちゃったから。あははー」
一ノ瀬さんはとんでもないことを言いやがった。死にたいのか!? っていうか痴女かよ!?
「男の人のあれとは? 柔道に、関係がありますか?」
あるわけないだろ! 今度は豪山がとんでもないパスを出しやがった。こいつも死にたいのか!?
「豪山くん、あれっていうのはね……」一ノ瀬さんは向かいに座る豪山の股間の辺りに視線を落とす。「専門的に言うと、おちん……」
「やめてくれ一ノ瀬さんそれ以上しゃべらないでくれ死人が出るからあああああっ!!!」
俺は大声でさえぎった。
今俺たちはウインナーを載せたおぼんを持っているので、耳をふさげない。だから大声で奇声を上げながら二人から離れるしかなかった。
ダメだあいつら! 一緒にいたら死ぬ! こっちまで死ぬ!
「ふう、セーフだったか。危機一髪だった。あの二人はやばい。やばすぎる。まったく危機感がないというか、そもそもこのデスゲームのルールを理解しているのか? 美少女が卑猥なワードを口にする、というのはラッキースケベ判定されてもおかしくないシチュエーションだ。一ノ瀬さんは美人だが変人。しかも食事中に、素の状態で卑猥なワードをなんのためらいもなく口にするような痴女。歩く爆弾だと思ったほうがいい。っていうか、どうでもいいけど全然専門的に言ってない」
「ちょっと……置いていくなんて、ひどいじゃないの」
宮本さんが俺を追ってきた。
「すまん、命がかかってたもので」
「でも一ノ瀬さん、なんて言おうとしていたのかしら?」
「宮本さんも分かってないのかよ!?」
この人と一緒にいるのも、かなり危ないような気がしてきたぞ……。
振り返って離れたところからあの二人を見ても、二人の首のリングは爆発していなかった。一ノ瀬さんがお下品なワードを口に出すのをやめたのか、俺の奇声で豪山にはよく聞こえなかったのか、そもそも下品なワードを言うこと自体はラッキースケベにはならないのか?
とにかく、下手に他のペアと近づくのはやめたほうがいい。爆死に巻き込まれるのはごめんだ。
「それでいいのですか?」
宮本美夜子ではなく、桃井さんの声が俺の頭の中で問いかけてきた。
「一ノ瀬さんはとても危うい状況にあります。彼女のような人ほど、誰かがサポートしてあげなければ生き残れないのではないでしょうか?」
女神な桃井さんが言いそうなことだ。
いや、でも。
一ノ瀬さんは自由人だし。言動が予測できない不思議ちゃんだし。俺みたいなヤツが彼女をコントロールできるとは思えない。
俺や宮本さんまで巻き込まれて死んだら、元も子もないじゃないか。
不意に。
そんな反論を吹き飛ばす大声が響き渡った。伊集院慧(いじゅういん けい)が叫びながら入り口から入ってきたのだ。
「食堂にいる者たちよ、気をつけろ! ウインナーは男根を意味している! 女子はくわえずに切ってからひと口ずつ食べろ! 男子は女子が男根をくわえているところを見るな! 繰り返す! ウインナーは男根を意味している!」
1日目 12:30
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