養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第57話 フェルディナンドさまとの花茶会③
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「⋯⋯うむ。問題はないな。これで魔法使用権利料の支払いについては解決した。月ごとに支払われるので確認して欲しい。」
「わかりました。」
「それとこれは別件なのだが、君を魔塔の賢者の1人として推薦することが決まった。」
「え?わ、私を、ですか?」
寝耳に水の話だった。
「なにせこれだけの実績を作ったのだ。本来の魔法絵師のスキル同様に、描いたものを呼び出す魔法。それも魔法絵師のスキルとは異なり、実態を呼び出す特別なものだ。」
「それに加えて時間を操る魔法ですからね。これだけでも凄い実績ですよ?魔塔の賢者でこれだけの結果を出せている人はむしろ少ないほうです。推薦も当たり前ですね。」
エイダさんが補足するように、笑顔でそう言ってくれる。
「は⋯⋯。私が、魔塔の、賢者⋯⋯。」
まるで実感がわいてこないわ。
「魔塔の賢者ともなれば、我々同様に自由に魔塔に出入り出来る腕輪が支給される。
今までのように招待状を使って来る必要はない。いつでもどこからでも、魔塔に通じるゲートを呼び出すことが可能になるんだ。」
「私は常に魔塔につめてますから、お時間のある時にでも、ぜひ遊びにいらしてくださいね!私ともぜひお茶会をしましょう!」
とエイダさんが微笑んでくれる。
「は、はい、ぜひ⋯⋯!」
この私が、名誉ある魔塔の賢者の仲間入りだなんて凄いことだわ。魔法絵師として認められただけでも凄いことなのに。
魔塔というものは、魔法使いの中でも、特に優れた、研究者としても力のある人しか所属出来ないものと聞いたことがある。
たとえ王国魔法師団の団長であっても、認められなければ魔塔の賢者に名を連ねることはない。強いだけではなることが出来ない。それが魔塔の賢者が名誉職たるゆえんだ。
このことを知ったら、私を追い出そうとしていた義母はどんな顔をするかしら。離婚するまで黙っておいて残念がらせてやりたい。
私を散々無能と馬鹿にし、それを貴族の間に浸透させる為に立ち回っていた義母のことだ。元嫁が魔塔の賢者なんてことが社交界に知れ渡ったら、顔が潰れることだろう。
「それでは、こちらは推薦に同意するという書類だ。こちらにサインをして欲しい。こちらを魔塔主を含めた賢者10名で審査をし、最終的な確定になるが、何、形式的なものだから、終われば確実に賢者となるだろう。」
「なにせ今回の推薦を決めたのが、魔塔主さま御本人ですからね。決まらなかったら不思議ですよ。おめでとうございます。私たちの仲間入りを歓迎致します。」
私は推薦に同意する書類、魔塔の賢者として情報を外部に漏らさない契約書、身上書などの諸々の分厚い書類すべてにサインした。
「結果が出たらすぐに知らせよう。
──ようこそ、魔塔へ。
フィリーネ・ロイエンタール伯爵夫人。」
「あ、いえ、その⋯⋯。」
「いや、フィリーネ・メッゲンドルファー子爵令嬢、になるんだったか。
無事に離婚も出来るといいな。」
「はい、ありがとうございます。」
フェルディナンドさまが右手を差し出し、微笑んでくれる。私はその手を握り返した。
エイダさんがお盆を小脇に抱えたまま、パチパチと笑顔で拍手をしてくれる。
こうして私は、新人の魔法絵師としてでなく、新たに魔塔の賢者の1人として、活躍することが決まったのだった。
離婚の準備は着々と進んでいた。後は無事に弁護士が決まるだけだったが、自宅に戻ったらヴィリからの手紙が届いていた。
弁護士を頼んだが、今は忙しいと断られてしまったのだと。私は露骨にガッカリした。弁護士のあてなんてない。他にどうやって離婚に強い弁護士を探したらいいのかしら。
⋯⋯そうだわ。あの方は、何かご存知ではないかしら。私が離婚したいという事情もご存知だし、何より貴族に顔が広い。
特にあの方は、たくさんの貴族の女性の方々と親しいのだもの、貴族の離婚に強い弁護士の1人や2人、ご存知かも知れないわ。私はとある男性の顔を思い浮かべていた。
宮廷に出入りする化粧師、フィッツェンハーゲン侯爵家3男、シュテファン・フォン・フィッツェンハーゲンさまのお顔を。
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「わかりました。」
「それとこれは別件なのだが、君を魔塔の賢者の1人として推薦することが決まった。」
「え?わ、私を、ですか?」
寝耳に水の話だった。
「なにせこれだけの実績を作ったのだ。本来の魔法絵師のスキル同様に、描いたものを呼び出す魔法。それも魔法絵師のスキルとは異なり、実態を呼び出す特別なものだ。」
「それに加えて時間を操る魔法ですからね。これだけでも凄い実績ですよ?魔塔の賢者でこれだけの結果を出せている人はむしろ少ないほうです。推薦も当たり前ですね。」
エイダさんが補足するように、笑顔でそう言ってくれる。
「は⋯⋯。私が、魔塔の、賢者⋯⋯。」
まるで実感がわいてこないわ。
「魔塔の賢者ともなれば、我々同様に自由に魔塔に出入り出来る腕輪が支給される。
今までのように招待状を使って来る必要はない。いつでもどこからでも、魔塔に通じるゲートを呼び出すことが可能になるんだ。」
「私は常に魔塔につめてますから、お時間のある時にでも、ぜひ遊びにいらしてくださいね!私ともぜひお茶会をしましょう!」
とエイダさんが微笑んでくれる。
「は、はい、ぜひ⋯⋯!」
この私が、名誉ある魔塔の賢者の仲間入りだなんて凄いことだわ。魔法絵師として認められただけでも凄いことなのに。
魔塔というものは、魔法使いの中でも、特に優れた、研究者としても力のある人しか所属出来ないものと聞いたことがある。
たとえ王国魔法師団の団長であっても、認められなければ魔塔の賢者に名を連ねることはない。強いだけではなることが出来ない。それが魔塔の賢者が名誉職たるゆえんだ。
このことを知ったら、私を追い出そうとしていた義母はどんな顔をするかしら。離婚するまで黙っておいて残念がらせてやりたい。
私を散々無能と馬鹿にし、それを貴族の間に浸透させる為に立ち回っていた義母のことだ。元嫁が魔塔の賢者なんてことが社交界に知れ渡ったら、顔が潰れることだろう。
「それでは、こちらは推薦に同意するという書類だ。こちらにサインをして欲しい。こちらを魔塔主を含めた賢者10名で審査をし、最終的な確定になるが、何、形式的なものだから、終われば確実に賢者となるだろう。」
「なにせ今回の推薦を決めたのが、魔塔主さま御本人ですからね。決まらなかったら不思議ですよ。おめでとうございます。私たちの仲間入りを歓迎致します。」
私は推薦に同意する書類、魔塔の賢者として情報を外部に漏らさない契約書、身上書などの諸々の分厚い書類すべてにサインした。
「結果が出たらすぐに知らせよう。
──ようこそ、魔塔へ。
フィリーネ・ロイエンタール伯爵夫人。」
「あ、いえ、その⋯⋯。」
「いや、フィリーネ・メッゲンドルファー子爵令嬢、になるんだったか。
無事に離婚も出来るといいな。」
「はい、ありがとうございます。」
フェルディナンドさまが右手を差し出し、微笑んでくれる。私はその手を握り返した。
エイダさんがお盆を小脇に抱えたまま、パチパチと笑顔で拍手をしてくれる。
こうして私は、新人の魔法絵師としてでなく、新たに魔塔の賢者の1人として、活躍することが決まったのだった。
離婚の準備は着々と進んでいた。後は無事に弁護士が決まるだけだったが、自宅に戻ったらヴィリからの手紙が届いていた。
弁護士を頼んだが、今は忙しいと断られてしまったのだと。私は露骨にガッカリした。弁護士のあてなんてない。他にどうやって離婚に強い弁護士を探したらいいのかしら。
⋯⋯そうだわ。あの方は、何かご存知ではないかしら。私が離婚したいという事情もご存知だし、何より貴族に顔が広い。
特にあの方は、たくさんの貴族の女性の方々と親しいのだもの、貴族の離婚に強い弁護士の1人や2人、ご存知かも知れないわ。私はとある男性の顔を思い浮かべていた。
宮廷に出入りする化粧師、フィッツェンハーゲン侯爵家3男、シュテファン・フォン・フィッツェンハーゲンさまのお顔を。
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