養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
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第40話 暴かれた秘密①
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「急に妙なことを申し上げましたね。
申し訳ありません。」
「あ、いえ……。」
「……実は最近、結婚を考えるようになりまして。それでついつい、そういうことを想像してしまいまして。お恥ずかしい。」
「そうなのですね。」
「……夫婦になるからには、よい夫、よい妻であることも大切ですが、──よい父、よい母であることは、もっと大切だと考えているものですから……。」
「とても素晴らしいお考えだと思いますわ。
私もそれはとても大切なことだと思っているのです。実家はあまりそうとは言い難い家でしたので、次に結婚をする際は、実家とは違う家庭を築きたいと考えているのです。」
「……僕の家もです。父は商人としては大変優秀な人ですし、尊敬もしているのですが、よい夫、よい父かと言うと違います。僕は父のような父親にはなりたくないのです。」
「……私たち、似ているかも知れませんね。」
「ええ。そのようです。」
ヴィリと私は思わず微笑みあった。意外な共通点だわ。私たち、気が合うかも。
「ああ、絵をお願いしていたのでしたね。
ローゼマリーは、あまりじっとしていない子なので、僕が膝に乗せている必要がありますが、それでよろしいでしょうか?」
「抱いていなくても問題ないのですか?」
「僕がそばにいればだいじょうぶです。離れているとすぐにやって来てしまうので、そばにいるか膝の上に乗せるのが1番じっとしているかと。まあ、そこが可愛いんですが。」
「わかりますわ。」
離れていたらすぐに寄って来てくれるペットだなんて、それはもう可愛くて仕方がないでしょうね。羨ましいくらいだわ。
「では僕の膝の上ということで。」
ヴィリが椅子を運んで来て、そこに腰掛けると、ローゼマリーを膝の上に置いた。私はその向かいのソファーをすすめられた。
ローゼマリーは一瞬ヴィリのほうを見上げたが、ヴィリが微笑みかけて背中を撫でてやると、すぐに大人しく膝の上に座り直した。
だいじょうぶそうね。
「問題なさそうですね。」
「はい、よろしくお願いします。」
私はヴィリに借りた画材を使って、ローゼマリーの絵を描き出した。
「……なんだか、僕がモデルになったような気になりますね。ロイエンタール伯爵夫人に、じっと見つめられているような気持ちになります。ちょっと落ち着かないですね。」
恥ずかしそうにヴィリが微笑んだ。
「確かに、そうですわね。」
私も釣られて微笑む。時折ローゼマリーを優しく撫でる、ヴィリの大きな手のひら。
それだけでも、ヴィリが優しい人だとわかるわ。ローゼマリーをとても大切に思っていることが、伝わってくるかのようね。
「せっかくですから、このままおしゃべりしませんか?──あ、絵を描くお邪魔じゃなければ、ですが。なんだか手持ち無沙汰で。」
「もちろん構いませんわ。」
モデルはひたすら無言で、じっとしていなくてはならないものね。もちろんヴィリにモデルを頼んだわけではないけれど、ローゼマリーの為に座ったままじっとしていなくてはならないことに、代わりはないものね。
「……ロイエンタール伯爵夫人の子どもの頃は、どんなお子さんだったんですか?」
「私の子どもの頃、ですか?特に取り立てて語ることのない子ども時代でしたわ。」
「もしもそうだとしても、ぜひ知りたいのです。どんなことがお好きだったのですか?」
「そうですね……。父は花嫁修業以外を許してくれない人でしたから……。」
「貴族令嬢は、そういう方が多いと聞きますね。特に家の為の結婚を望まれていると。」
「ええ。だから刺繍をしたり、本を呼んだりですとか、そのくらいです。」
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申し訳ありません。」
「あ、いえ……。」
「……実は最近、結婚を考えるようになりまして。それでついつい、そういうことを想像してしまいまして。お恥ずかしい。」
「そうなのですね。」
「……夫婦になるからには、よい夫、よい妻であることも大切ですが、──よい父、よい母であることは、もっと大切だと考えているものですから……。」
「とても素晴らしいお考えだと思いますわ。
私もそれはとても大切なことだと思っているのです。実家はあまりそうとは言い難い家でしたので、次に結婚をする際は、実家とは違う家庭を築きたいと考えているのです。」
「……僕の家もです。父は商人としては大変優秀な人ですし、尊敬もしているのですが、よい夫、よい父かと言うと違います。僕は父のような父親にはなりたくないのです。」
「……私たち、似ているかも知れませんね。」
「ええ。そのようです。」
ヴィリと私は思わず微笑みあった。意外な共通点だわ。私たち、気が合うかも。
「ああ、絵をお願いしていたのでしたね。
ローゼマリーは、あまりじっとしていない子なので、僕が膝に乗せている必要がありますが、それでよろしいでしょうか?」
「抱いていなくても問題ないのですか?」
「僕がそばにいればだいじょうぶです。離れているとすぐにやって来てしまうので、そばにいるか膝の上に乗せるのが1番じっとしているかと。まあ、そこが可愛いんですが。」
「わかりますわ。」
離れていたらすぐに寄って来てくれるペットだなんて、それはもう可愛くて仕方がないでしょうね。羨ましいくらいだわ。
「では僕の膝の上ということで。」
ヴィリが椅子を運んで来て、そこに腰掛けると、ローゼマリーを膝の上に置いた。私はその向かいのソファーをすすめられた。
ローゼマリーは一瞬ヴィリのほうを見上げたが、ヴィリが微笑みかけて背中を撫でてやると、すぐに大人しく膝の上に座り直した。
だいじょうぶそうね。
「問題なさそうですね。」
「はい、よろしくお願いします。」
私はヴィリに借りた画材を使って、ローゼマリーの絵を描き出した。
「……なんだか、僕がモデルになったような気になりますね。ロイエンタール伯爵夫人に、じっと見つめられているような気持ちになります。ちょっと落ち着かないですね。」
恥ずかしそうにヴィリが微笑んだ。
「確かに、そうですわね。」
私も釣られて微笑む。時折ローゼマリーを優しく撫でる、ヴィリの大きな手のひら。
それだけでも、ヴィリが優しい人だとわかるわ。ローゼマリーをとても大切に思っていることが、伝わってくるかのようね。
「せっかくですから、このままおしゃべりしませんか?──あ、絵を描くお邪魔じゃなければ、ですが。なんだか手持ち無沙汰で。」
「もちろん構いませんわ。」
モデルはひたすら無言で、じっとしていなくてはならないものね。もちろんヴィリにモデルを頼んだわけではないけれど、ローゼマリーの為に座ったままじっとしていなくてはならないことに、代わりはないものね。
「……ロイエンタール伯爵夫人の子どもの頃は、どんなお子さんだったんですか?」
「私の子どもの頃、ですか?特に取り立てて語ることのない子ども時代でしたわ。」
「もしもそうだとしても、ぜひ知りたいのです。どんなことがお好きだったのですか?」
「そうですね……。父は花嫁修業以外を許してくれない人でしたから……。」
「貴族令嬢は、そういう方が多いと聞きますね。特に家の為の結婚を望まれていると。」
「ええ。だから刺繍をしたり、本を呼んだりですとか、そのくらいです。」
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