養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第30話 意外な妻の噂②
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サロンとは違い、パーティーでは、女性は知り合い同士で固まって会話をするものである。男性であれば仕事の話で会話が成立する為、知らない相手とも親しくなれる。
領地や家の管理を引き継がれている夫人同士であれば、まだその話で会話を成立させることも出来る為、それなりに初対面でも親しくなることはある。
だが母親の嫌がらせで女主人としての仕事をさせてもらえない妻が、会話する為の話題を持たず、他の貴族夫人たちや従者から舐められているのを、イザークは妻本人の性格のせいだと思っていた。
伯爵夫人としての自覚を本人がちゃんと持っていれば、堂々と従者とも他の貴族とも、渡り合える筈である、と。
イザークは自分が妻の世界を狭くし、結果として自分が望む、上級貴族夫人と親しくなる機会を奪う結果になっていることを、まるで理解していなかった。
なぜあんな妻をめとってしまったのか。
毎日うんざりしながら、いずれは自分の望む妻に成長出来るよう、イザークは根気よく妻の相手をしているつもりでいた。
常に陰気で、少しも自分の思う通りにならない女。それがイザークにとっての妻の評価であったが、ここにきて、急に妻に対する世間の評価が大きく変わるとは思わなかった。
朗らか?奥ゆかしい?何より美しい?
どれもイザークの中にはない言葉だった。
いつも俯いて、自分と目を会わせない妻。
それがイザークの中でのイメージだ。
イザークは王女にこっぴどく振られてからというもの、かなりの女性不信に落ちいっていた。女性とどんな風に会話を成立させていたのかすら、今はもう思い出せない。
リハビリとしてメイドと話してみてはどうかしら?という母親のすすめで、メイドとは積極的に話すように心がけた。
雇われの身だけあって、こちらを傷付けるような言葉は一切使わず、常に朗らかで、イザークはメイドと話すことだけは、気が楽だと感じるようになっていった。
だがメイドと違って、妻はあれこれ要求をしてくる。それもイザークが望まないことばかりを。いつしか妻と話すこと自体が煩わしいと感じられるようになっていった。
メイドと話をしていると、いつも求めらていないのに割り込んで、会話に加わろうとしてくる。話なら朝、必要なことを話しているのだから、それ以外は自由にさせて欲しい。
自分の話すことを楽しげに聞いてくれるだけのメイドと違って、自分のことをあれこれ話そうとしてくる妻に、どう返事を返したらいいかがわからず、男としてのプライドが折られる気がするのだ。
心が傷付けられた時のまま、時間が止まってしまっているイザークは、自身の精神的な未熟さに気が付いていなかった。
ただ楽しげに話を聞いてくれるだけでいいのに。いちいち悲しげな顔をする人間と、すすんで話をしたいとは思わなかった。
それなのに、自分以外の前では朗らかで、親しみやすく、美しいという妻。
なぜ自分にはそう出来ないのか。
イザークは内心苛立っていた。
「なあ、今度君の家に遊びに行かせてくれないか?奥方様がパーティーをしたがらないのはわかっているが、商談を家でして、そのまま飲むくらいならよくあることだろう?」
「ああ、それはいいな、ぜひとも参加させてくれよ。噂の奥方様を拝ませてくれないか?
少人数なら奥方様も気が楽だろう?」
「アデリナ・アーベレ嬢に匹敵するという美女を、独り占めするなんてずるいぞ?」
「いや、私はそんなつもりは……。」
「明日から買付で遠出するんだろう?
だったら今日はどうだい?
そのまま家に泊めてくれよ。」
「いや、今日は……。」
いつものルーティンで、長期に家をあける前は、夫婦の営みの時間を持つことにしている。いくらなんでも取引相手かつ友人が家に泊まっている状態でそれを行う気はしない。
「じゃあこうしよう。君が今日奥方様を見せてくれたら、次回の納品を1割上乗せしようじゃないか。それでどうだい?」
「なるほど、なら俺は、君がずっと飲みたがっていた希少なワインを土産にしようじゃないか。それを君の家で飲むのはどうだい?」
「え?オドルボの限定品をか?」
オドルボのワインには、イザークの父親が生前探し求めて手に入れられなかった、希少な限定品が存在する。
もともと高級品であったが、もっとも当たり年と言われた年のワインは、それこそ金を積んだだけでは手に入れられない一品だ。
父の墓前にそれを捧げられるかも知れないと、イザークは心が揺れた。
「そうさ。ロイエンタール伯爵家の妖精姫には、それだけの価値があるということだ。」
妻との夜の営みは、ただの自分のルーティンというだけだ。今日それをしないからといって、何に違反するわけでもない。妻といたす約束を交わしたわけでもない。
「……わかった。必ずオドルボのワインを持って来るんだぞ。それと納品1割上乗せ。それを条件に、妻をお前たちに会わせよう。」
イザークは急な来客を承諾したのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。
領地や家の管理を引き継がれている夫人同士であれば、まだその話で会話を成立させることも出来る為、それなりに初対面でも親しくなることはある。
だが母親の嫌がらせで女主人としての仕事をさせてもらえない妻が、会話する為の話題を持たず、他の貴族夫人たちや従者から舐められているのを、イザークは妻本人の性格のせいだと思っていた。
伯爵夫人としての自覚を本人がちゃんと持っていれば、堂々と従者とも他の貴族とも、渡り合える筈である、と。
イザークは自分が妻の世界を狭くし、結果として自分が望む、上級貴族夫人と親しくなる機会を奪う結果になっていることを、まるで理解していなかった。
なぜあんな妻をめとってしまったのか。
毎日うんざりしながら、いずれは自分の望む妻に成長出来るよう、イザークは根気よく妻の相手をしているつもりでいた。
常に陰気で、少しも自分の思う通りにならない女。それがイザークにとっての妻の評価であったが、ここにきて、急に妻に対する世間の評価が大きく変わるとは思わなかった。
朗らか?奥ゆかしい?何より美しい?
どれもイザークの中にはない言葉だった。
いつも俯いて、自分と目を会わせない妻。
それがイザークの中でのイメージだ。
イザークは王女にこっぴどく振られてからというもの、かなりの女性不信に落ちいっていた。女性とどんな風に会話を成立させていたのかすら、今はもう思い出せない。
リハビリとしてメイドと話してみてはどうかしら?という母親のすすめで、メイドとは積極的に話すように心がけた。
雇われの身だけあって、こちらを傷付けるような言葉は一切使わず、常に朗らかで、イザークはメイドと話すことだけは、気が楽だと感じるようになっていった。
だがメイドと違って、妻はあれこれ要求をしてくる。それもイザークが望まないことばかりを。いつしか妻と話すこと自体が煩わしいと感じられるようになっていった。
メイドと話をしていると、いつも求めらていないのに割り込んで、会話に加わろうとしてくる。話なら朝、必要なことを話しているのだから、それ以外は自由にさせて欲しい。
自分の話すことを楽しげに聞いてくれるだけのメイドと違って、自分のことをあれこれ話そうとしてくる妻に、どう返事を返したらいいかがわからず、男としてのプライドが折られる気がするのだ。
心が傷付けられた時のまま、時間が止まってしまっているイザークは、自身の精神的な未熟さに気が付いていなかった。
ただ楽しげに話を聞いてくれるだけでいいのに。いちいち悲しげな顔をする人間と、すすんで話をしたいとは思わなかった。
それなのに、自分以外の前では朗らかで、親しみやすく、美しいという妻。
なぜ自分にはそう出来ないのか。
イザークは内心苛立っていた。
「なあ、今度君の家に遊びに行かせてくれないか?奥方様がパーティーをしたがらないのはわかっているが、商談を家でして、そのまま飲むくらいならよくあることだろう?」
「ああ、それはいいな、ぜひとも参加させてくれよ。噂の奥方様を拝ませてくれないか?
少人数なら奥方様も気が楽だろう?」
「アデリナ・アーベレ嬢に匹敵するという美女を、独り占めするなんてずるいぞ?」
「いや、私はそんなつもりは……。」
「明日から買付で遠出するんだろう?
だったら今日はどうだい?
そのまま家に泊めてくれよ。」
「いや、今日は……。」
いつものルーティンで、長期に家をあける前は、夫婦の営みの時間を持つことにしている。いくらなんでも取引相手かつ友人が家に泊まっている状態でそれを行う気はしない。
「じゃあこうしよう。君が今日奥方様を見せてくれたら、次回の納品を1割上乗せしようじゃないか。それでどうだい?」
「なるほど、なら俺は、君がずっと飲みたがっていた希少なワインを土産にしようじゃないか。それを君の家で飲むのはどうだい?」
「え?オドルボの限定品をか?」
オドルボのワインには、イザークの父親が生前探し求めて手に入れられなかった、希少な限定品が存在する。
もともと高級品であったが、もっとも当たり年と言われた年のワインは、それこそ金を積んだだけでは手に入れられない一品だ。
父の墓前にそれを捧げられるかも知れないと、イザークは心が揺れた。
「そうさ。ロイエンタール伯爵家の妖精姫には、それだけの価値があるということだ。」
妻との夜の営みは、ただの自分のルーティンというだけだ。今日それをしないからといって、何に違反するわけでもない。妻といたす約束を交わしたわけでもない。
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