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第2章 完全自己中、2年D組
第7話 『転校生と書いて災害と読む』
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「...説明してくれるかしら?」
「やぁやぁお嬢さん、さっきぶりだね。そんなに怖い顔をしてどうしたんだい?」
本日の授業が終わるや否や、お嬢は上方に詰め寄っていた。
「どうもこうもないわよ。何で上方さんがここにいるのかしらって話なんだけど?」
威圧するお嬢だったが、上方は少しも怖気付く様子がない。
...お嬢って怒ると結構怖いんだよな。
ところで僕はというと、『上方と知り合いである』という疑いについて男子連中から尋問にかけられていた。
「おい。お前みたいなゴミがあのような美少女と知り合いなわけないよな?」
「俺たちはな、これ以上クラスメイトを手にかけたくはないんだよ」
...お嬢なんかよりずっと迫力満点だ。
いや、そんなことを考えている場合じゃない。早く言い訳しないと冗談抜きで僕の人生が終了する可能性がある。
「ご、誤解なんだ!上方さんとは、今朝たまたま知り合っただけで_____」
「女子と一緒に登校、マイナス95点」
どうやら、墓穴を掘ったらしい。
「待った!ここはお嬢の秘蔵オフショットで手を打たないか」
「「「「異議なし」」」」
ふぅ...こいつらがクズで助かったぜ。
ひとまず危機を脱したことに安堵しつつ、僕は上方の席へと向かった。
彼女は授業が終わった後も席を立っていなかった。...いや、立てなかったと言うべきか。
「おいお嬢、あんまし威圧するもんじゃないぜ」
お嬢と上方の間に緊張感が走っているせいで、周りの連中は一歩引いていた。中には上方に話しかけたい女子や男子(こっちは不純な動機な気がするが)もいただろうに、難儀なものである。
しかしながら、お嬢はそんな現状なぞ知ったことかと言わんばかりに僕を睨みつけた。
「秘蔵オフショット?」
「げ」
聞こえていたみたいだ。ま、秘蔵オフショットは実際にはないんだけどね。男子連中から逃げるための口実だ。
「歓迎されないねぇ、私も」
唐突に、ぽつりと上方が呟く。
「...いや、まぁ僕とお嬢以外は歓迎してるんじゃないか?」
「歓迎より先に事情を説明してほしいわね。こちとら昨日の今日で混乱してるんだから」
矢継ぎ早に苦情を言う僕達を見て、上方は苦笑した。どうやら、まともに説明する気はないようだな...。
「お前ら、あんま転校生いじめんなよ」
と、ここで第三者の声が挟まる。
声の主は上方の隣の席の男子生徒だ。
「いや、小鳥遊は知らないかもしれないけどな、僕たちは面倒なことに巻き込まれちまったんだよ」
今まで黙って僕らの話を聞いていたのは小鳥遊 遊。僕の数少ない友人の1人、と言ってもいいかもしれない。
いい奴だが、こいつもこいつで少々厄介なところがある。
(というか、なんで上方さんが小鳥遊の隣なのよ)
「ほうほう、なるほどなるほど」
お嬢の呟きを耳ざとく聞きつけ、にやにやする上方。
そう、もうお分かりかもしれないが、お嬢は小鳥遊に対してホの字なのだ。
「さっさと告れや」
「な、何の話!?」
とまぁ、お嬢は非常にわかりやすい反応を見せるのだが...。
「...? ほんとに何の話をしてるんだ?」
一切彼女の好意に気が付かないのがこの小鳥遊という男である。
(今時ラブコメの主人公でもいないわ、そんな奴)
「じゃあそろそろ帰ろうか、不動君」
「あ?」
前触れなしにスッ、と席を立つ上方。
結局、お嬢には一言も説明せずに帰るようだ。
「ちょっと待ちなさい!」
「まぁまぁ、お嬢さんは小鳥遊君と話してなよ」
「くっ...!」
赤面するお嬢を横目に、上方はケラケラと笑いながら教室を後にした。
「おい待てよ!」
僕も慌てて上方の後を追う。
教室のドアを開けると、ご丁寧にそのすぐ側で上方は待っていた。
「じゃ、帰ろうか」
「何を当たり前のように一緒に帰ろうとしてんだ...?」
「仕方ないじゃないか、私は家なき子なんだから。不動君の家に居候しないと毎日野宿だよ」
そんな上方の声を聞きつけ、廊下を歩いていた連中がざわざわし出す。コイツ、わざとやってるんじゃないだろうな...?
「わかった!わかったよ!わかったからちょっと声のボリュームを落としてもらえますかね...?」
仕方なく降伏宣言をする僕を見て、上方は満足そうに笑った。
「じゃ、帰ろうか」
「結局そうなるんですね...」
美少女と一緒に下校_____。
その響きは、あまりに甘美なものであるはずだったが、今の僕にはそうは思えなかった。
その後、大した会話もなく帰路に着いた僕達だったが、突然上方が口を開いた。
「しかしまぁ、不動君は異常なクラスに属しているんだねぇ」
「異常って...まぁ多少は変だと思うけどね僕のクラス」
異常ときたか。相変わらず急に口が悪くなるなぁ、コイツ。
道端の石ころを蹴り上げながら、上方は続ける。
「いや、変どころじゃないね。あれは異常だ」
どうやら冗談めかして言っている訳ではなかったらしい。何か根拠があるようだ。
「私はね、あっちで意識を保てる_______つまり、超自己中な人間がある程度見分けがつくんだよ」
「...?」
完璧に見分けられる訳ではないんだけどね、と上方は前置きしたうえで、難しい顔をしながら続ける。
「君のクラスは異常だよ。クラスの全員が、とんでもない自己中だ」
「な_____、」
上方の衝撃の発言に驚愕しつつ、僕は今日のお嬢の発言を思い出していた。
...すなわち、「このクラスの全員が、昨日同じ夢を見た」。
「そんなバカな...」
「もしお嬢さんの聞き込みの内容が本当だとするなら、これはとんでもない事態だ。...いや、まぁある程度予想はついていたからこのクラスに入った訳だが」
ぶつぶつと呟く上方を横目に、僕はあまりの衝撃に途方に暮れていた。
昨日から、一体何が起こっているというのか。なんで僕なんだ。別に人より優れたところもない、特別なところもない。僕は、至って平均で平凡な人間なのに_______。
「おっと、不動君じゃないか。もう学校は終わったのかい?」
走り出した僕の思考は、聞き覚えのある声によって中断された。
この声は_____。
「赤田さん...」
目の前には、スーツ姿の男性。僕のお隣さんの赤田 悟が立っていた。
「やぁやぁお嬢さん、さっきぶりだね。そんなに怖い顔をしてどうしたんだい?」
本日の授業が終わるや否や、お嬢は上方に詰め寄っていた。
「どうもこうもないわよ。何で上方さんがここにいるのかしらって話なんだけど?」
威圧するお嬢だったが、上方は少しも怖気付く様子がない。
...お嬢って怒ると結構怖いんだよな。
ところで僕はというと、『上方と知り合いである』という疑いについて男子連中から尋問にかけられていた。
「おい。お前みたいなゴミがあのような美少女と知り合いなわけないよな?」
「俺たちはな、これ以上クラスメイトを手にかけたくはないんだよ」
...お嬢なんかよりずっと迫力満点だ。
いや、そんなことを考えている場合じゃない。早く言い訳しないと冗談抜きで僕の人生が終了する可能性がある。
「ご、誤解なんだ!上方さんとは、今朝たまたま知り合っただけで_____」
「女子と一緒に登校、マイナス95点」
どうやら、墓穴を掘ったらしい。
「待った!ここはお嬢の秘蔵オフショットで手を打たないか」
「「「「異議なし」」」」
ふぅ...こいつらがクズで助かったぜ。
ひとまず危機を脱したことに安堵しつつ、僕は上方の席へと向かった。
彼女は授業が終わった後も席を立っていなかった。...いや、立てなかったと言うべきか。
「おいお嬢、あんまし威圧するもんじゃないぜ」
お嬢と上方の間に緊張感が走っているせいで、周りの連中は一歩引いていた。中には上方に話しかけたい女子や男子(こっちは不純な動機な気がするが)もいただろうに、難儀なものである。
しかしながら、お嬢はそんな現状なぞ知ったことかと言わんばかりに僕を睨みつけた。
「秘蔵オフショット?」
「げ」
聞こえていたみたいだ。ま、秘蔵オフショットは実際にはないんだけどね。男子連中から逃げるための口実だ。
「歓迎されないねぇ、私も」
唐突に、ぽつりと上方が呟く。
「...いや、まぁ僕とお嬢以外は歓迎してるんじゃないか?」
「歓迎より先に事情を説明してほしいわね。こちとら昨日の今日で混乱してるんだから」
矢継ぎ早に苦情を言う僕達を見て、上方は苦笑した。どうやら、まともに説明する気はないようだな...。
「お前ら、あんま転校生いじめんなよ」
と、ここで第三者の声が挟まる。
声の主は上方の隣の席の男子生徒だ。
「いや、小鳥遊は知らないかもしれないけどな、僕たちは面倒なことに巻き込まれちまったんだよ」
今まで黙って僕らの話を聞いていたのは小鳥遊 遊。僕の数少ない友人の1人、と言ってもいいかもしれない。
いい奴だが、こいつもこいつで少々厄介なところがある。
(というか、なんで上方さんが小鳥遊の隣なのよ)
「ほうほう、なるほどなるほど」
お嬢の呟きを耳ざとく聞きつけ、にやにやする上方。
そう、もうお分かりかもしれないが、お嬢は小鳥遊に対してホの字なのだ。
「さっさと告れや」
「な、何の話!?」
とまぁ、お嬢は非常にわかりやすい反応を見せるのだが...。
「...? ほんとに何の話をしてるんだ?」
一切彼女の好意に気が付かないのがこの小鳥遊という男である。
(今時ラブコメの主人公でもいないわ、そんな奴)
「じゃあそろそろ帰ろうか、不動君」
「あ?」
前触れなしにスッ、と席を立つ上方。
結局、お嬢には一言も説明せずに帰るようだ。
「ちょっと待ちなさい!」
「まぁまぁ、お嬢さんは小鳥遊君と話してなよ」
「くっ...!」
赤面するお嬢を横目に、上方はケラケラと笑いながら教室を後にした。
「おい待てよ!」
僕も慌てて上方の後を追う。
教室のドアを開けると、ご丁寧にそのすぐ側で上方は待っていた。
「じゃ、帰ろうか」
「何を当たり前のように一緒に帰ろうとしてんだ...?」
「仕方ないじゃないか、私は家なき子なんだから。不動君の家に居候しないと毎日野宿だよ」
そんな上方の声を聞きつけ、廊下を歩いていた連中がざわざわし出す。コイツ、わざとやってるんじゃないだろうな...?
「わかった!わかったよ!わかったからちょっと声のボリュームを落としてもらえますかね...?」
仕方なく降伏宣言をする僕を見て、上方は満足そうに笑った。
「じゃ、帰ろうか」
「結局そうなるんですね...」
美少女と一緒に下校_____。
その響きは、あまりに甘美なものであるはずだったが、今の僕にはそうは思えなかった。
その後、大した会話もなく帰路に着いた僕達だったが、突然上方が口を開いた。
「しかしまぁ、不動君は異常なクラスに属しているんだねぇ」
「異常って...まぁ多少は変だと思うけどね僕のクラス」
異常ときたか。相変わらず急に口が悪くなるなぁ、コイツ。
道端の石ころを蹴り上げながら、上方は続ける。
「いや、変どころじゃないね。あれは異常だ」
どうやら冗談めかして言っている訳ではなかったらしい。何か根拠があるようだ。
「私はね、あっちで意識を保てる_______つまり、超自己中な人間がある程度見分けがつくんだよ」
「...?」
完璧に見分けられる訳ではないんだけどね、と上方は前置きしたうえで、難しい顔をしながら続ける。
「君のクラスは異常だよ。クラスの全員が、とんでもない自己中だ」
「な_____、」
上方の衝撃の発言に驚愕しつつ、僕は今日のお嬢の発言を思い出していた。
...すなわち、「このクラスの全員が、昨日同じ夢を見た」。
「そんなバカな...」
「もしお嬢さんの聞き込みの内容が本当だとするなら、これはとんでもない事態だ。...いや、まぁある程度予想はついていたからこのクラスに入った訳だが」
ぶつぶつと呟く上方を横目に、僕はあまりの衝撃に途方に暮れていた。
昨日から、一体何が起こっているというのか。なんで僕なんだ。別に人より優れたところもない、特別なところもない。僕は、至って平均で平凡な人間なのに_______。
「おっと、不動君じゃないか。もう学校は終わったのかい?」
走り出した僕の思考は、聞き覚えのある声によって中断された。
この声は_____。
「赤田さん...」
目の前には、スーツ姿の男性。僕のお隣さんの赤田 悟が立っていた。
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