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第二章 ホムラでの大決戦

第四十六話 ホムラ領主の息子との遭遇

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 零夜達の前に現れた男はは豪華な和服を着ていて、年齢は零夜よりも年下ぐらいだろう。
「何か用なのか?」
「お前じゃない。俺はこの女性に用がある」
「私の事ですか?」
 男はルリカに用があり、彼女はキョトンとする。
「そうだ。貴様の事だ」
「ルリカと申します」
「そうか。随分と可愛らしいじゃないか。俺の女になれ」
 男がそう宣言したその時、零夜がルリカの前に出る。
「お前な……悪いけど、俺はこの女性と契約しているからな。勝手にそんな事しないでくれるか?」
「貴様、この俺を知らないのか?」
「知るわけないだろ。異世界から来たからな!」
「異世界……ん?」
 男は零夜のバングルに視線を移し、納得の表情をする。
「なるほど。そのバングルがあるのなら、納得がいくな。なら、教えるとしよう。俺はこのホムラを治める領主の息子、アルフレッド・ムラマツだ!」
「領主の息子か……どうやらこいつは面倒臭い奴に絡まれたな……」
 アルフレッドの自己紹介に零夜がため息をつく中、武士姿の兵士達が彼等を囲む。
「何の真似だ。言っておくが、金なんか払っても無駄だからな」
「俺は領主の息子だぞ。反逆罪に問われたいのか?」
「そんな権限あっても知るかよ。そっちがその気なら……こっちだって方法はあるぜ!」
 零夜はルリカを背負いつつ、跳躍して屋根の上に飛び乗る。
「貴様!人の話を聞いていなかったのか!?」
「お前等にルリカを渡すぐらいなら、反逆罪に問われようとも……俺はお前を殺す覚悟だ!」
 零夜はルリカを屋根の上に置いて跳躍したと同時に、次々と手刀を兵士達の首に浴びせて倒した。
「なんて奴だ……」
「アルフレッド様、奴は選ばれし戦士である以上、撤退するのが手だと……」
「選ばれし戦士達でも構わん。だが、このまま情けない姿を見せるのなら……」
「話をする暇があれば戦えよ!」
「へぶら!?」
 アルフレッドは急接近してきた零夜のアッパーを下顎から受けてしまい、高く飛んでしまう。そのまま彼は地面に墜落し、ヒクヒクと倒れてしまった。
「アルフレッド様が……倒れた……」
 この光景に兵士達が唖然とする中、零夜は彼等に視線を移す。
「おい、このバカを連れて行け」
「は、はい!」
「それと……この事についてはアンタ等が突っかかっていたからな。二度と……ん?」
 零夜は失神しているアルフレッドの右肩部分の服を見た途端、見覚えのマークがあるのが見つかった。
「これは……アークスレイヤーの紋章……どういう事か説明してもらおうか!」
「ひっ!」
 零夜の睨みに兵士達は怯えてしまい、観念して話す事に。
「はい。領主様はアークスレイヤーと手を組んでおりまして、その為にも賄賂や違法品、薬物となる植物の販売などをしています!」
「なんだって!?ホムラの領主はそこまでやっていたとは……」
「他にも奴隷をアークスレイヤーに送ろうとしていましたが、なかなか届かずに苛立ちを……」
「そう言う事か……それはどうもありがとう……」
「「「ひっ!」」」
 零夜の怒りの笑みに兵士達はガタガタ震えてしまう。
「アークスレイヤーと絡みがあるのなら、こいつは見逃す事はできない。この件に関しては公表させてもらう!良いな?」
「「「はい!」」」
 兵士達はアルフレッドを担いでその場から立ち去り、零夜は屋根の上にいるルリカに視線を移した。
「もう大丈夫だ!」
「ありがとうございます!」
 ルリカは屋根の上から飛び降りて着地し、零夜に抱き着いた。
「本当に助かりました!それにしても凄かったです!あの領主の息子であろうとも、一歩も引かないのですね」
「まあな。あいつ、強がっている割には大した事なかったからな。しかし、領主がアークスレイヤーと繋がっていたとは想定外だったな……」
 零夜が真剣な表情をする中、ヒューゴが彼の元に駆け付けてきた。
「今、騒ぎが起きていたけど何かあったのか?」
「ヒューゴ!実は……」
 零夜はこれまでの事をヒューゴに話し始めた。

     ※

「「「ええっ!?領主の息子を殴り飛ばした!?」」」
 その後、ミミ達も駆け付けて零夜からの話に驚きを隠せずにいた。
「そうだ。それに奴等はアークスレイヤーと手を組んでいるだけでなく、薬物植物、違法品の販売までしていた!」
「まさかホムラでその様な事が隠されていたなんて……でも、二人が無事で良かったわ……」
「迷惑掛けて悪いな……」
 零夜がすまなさそうに謝罪するが、倫子は彼のおでこにデコピンをする。
「痛っ!」
「ここが異世界だから良かったけど、私達の世界だと犯罪になるからね。プロレスラーは基本的に暴力行為は禁止なんだから!」
「すみません……」
 倫子からの指摘に零夜は俯いてしまうが、彼女は彼の頭を撫でる。
「でも、アークスレイヤーと組んでいるという情報を聞き出せたのは凄いと思う。後は領主達をどう取り押さえるかね」
「ええ。騎士団の中には領主達と通じている輩もいますし、アルフレッドに囚われた女性達もいます!」
「となると……このホムラ支部の前に……ホムラの領主屋敷へと向かう必要があるわね」
 倫子が零夜を褒める中、紬は騎士団の情報を伝え、クロエは真剣な表情で推測する。
「零夜さん、覚悟はできていますか?」
「勿論だ。奴等の野望は……俺達の手で終わらせる!」
 零夜の決意の瞳を見たジャンヌ達は、その姿にコクリと頷いたのだった。
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