転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

文字の大きさ
75 / 93
連載

第百三十七話 カリンのレシピ

しおりを挟む
 もふもふの巨大な猫……ではなく神獣に跨り、周りの景色が飛んでいくほどの速さで駆け抜けていく。いつもと違うのは、私の後ろにショウも一緒に乗っている事だ。


「ブラックシュリ? え? 海の虫だよな。え? あれって食べられるの?」
 私がエンサの町で欲しい食材があることを説明したら、ショウは訝しげな顔で私に問うた。

 ブラックシュリ……前世では海老のことだけど、やはりこの世界では「海の虫」という認識の様だ。

 私が初めてエンサの町に行った後、クランリー農場に海の幸のお土産を持って行ったけど、その時はショウは不在だったからショウはその美味しさを知らない。

「もちろん食べられるわ。とっても美味しいのよ。お弁当にブラックシュリフライを入れようと思うの」

『おお、ブラックシュリフライか! 其もまたあの味を堪能したい。白いソースを掛けて食べると美味なのだ』
「そんなに美味しいのか?」

 グレンの言葉を聞いたショウは、ブラックシュリフライに興味を示した。

 するとショウも一緒にエンサの町に行くと言いだしたのだ。まあ、ショウが一緒に行ってくれるなら心強いので私は迷うことなく了承したのだった。


 それから一夜明けて、朝早くに私達はエンサの町に出発することにした。

 躊躇しながらグレンの背中に乗ったショウは初めて乗るもふもふの背中に感動していたようだった。

 二人を背に乗せてもグレンのスピードは衰えることはない。程なくして潮の香りが漂ってきた。

 町に入り人通りの少ない路地で認識阻害の魔法を解く。グレンから降りた私とショウは猫サイズに戻ったグレンを伴って、港を目指して歩を進める。

 心なしか以前より賑わっているように感じるのは気のせいだろうか?

 カラフルな町並みを横目に進んで行くと磯の香りと共に香ばしい香りが鼻腔に届いた。コバルトブルーの海が次第に近づくと、彼方此方で屋台から客を呼ぶ声が聞こえる。

「ブラックシュリの串焼きだよー!」
「ブラックシュリ入りスープだよ!」
「ブラックシュリサンドだ、美味しいよー!」

 ん? ブラックシュリ? 以前来たときは海の虫だと言われて敬遠されていたけど、少しの間にこの町では人気食材になっているのかしら?

 そう考えていたら、大きな籠を肩に担いだ見覚えのあるタンクトップ姿の筋骨隆々の男が正面から歩いてくる。

 その男……以前この町で出会ったカイトさんは私を一目見ると満面の笑みを浮かべながら足早に近づいて来た。

「おお!! カリンじゃないか!! 良く来てくれた。カリンのお陰でこの町ではブラックシュリが大人気なんだ」
「カイトさん、こんにちは。そうみたいですね。こんなにブラックシュリの屋台ができているなんて吃驚です」

 日に焼けた笑顔に懐かしさを感じながら私はカイトさんに挨拶した。

「ん? そこの坊主は嬢ちゃんのコレかい?」
 カイトさんが小指を立てて私に軽い調子で尋ねた。

「え? いえいえいえ、違いますよ。友達です!」
 私は慌てて否定する。

 小指を立てて恋人だと言う表現はこちらの世界でもあるんだなと思ったと同時に、何故か自分自身にそんな表現で尋ねられると恥ずかしくなってしまう。

「ショウと言います。カリンの友達です」
「おお、俺はカイトと言う。漁師をしてるんだ。カリンには以前世話になったんだ」

「あら、お世話になったのは私の方よ。海の幸を沢山頂いたのだから。それにしても以前は全然なかったブラックシュリの屋台が今はこんなにあるなんて驚きです」

「そうだろ? まあ、これもカリンのお陰さ。ピエトロのレストランでブラックシュリを出してから瞬く間にこの町にその美味しさが広がったんだ。で、ご覧の通りさ」

 カイトさんは周辺にあるブラックシュリの屋台に目を向けながら苦笑いをした。

「あの、それでカイトさん。私にもブラックシュリを譲って欲しいの。今回は結構沢山必要なんだけど大丈夫かしら?」

「おお、もちろんだ。この町の港付近ではブラックシュリが驚くほど捕れるんだ。以前は避けていたんだが、カリンにブラックシュリが美味しく食べられること教わってから積極的に捕るようにしているからな。お蔭で今は町の名物になっているくらいだ。カリンにならいくらでもやるよ」

「ありがとう、カイトさん。でもちゃんとお金は払うわよ」
「いや、カリンからお金なんて貰ったら俺が町のみんなから怒られるよ」

「でも、いつもタダだなんて申し訳なくて次回から遠慮して貰いに来られなくなるわ」

 カイトさんのありがたい申し出だけど、お店がオープンしたら私は海の幸を使ったメニューも提供する予定だ。だから、私は今後もビジネスとして取引したいと思っている。

 どちらか一方が損をする取引は後が続かなくなる。お互いに対等でなければいつか不満が出てくるものなのだ。

「そうか……そうだな。では、卸値の半額で譲ることにするよ、次回からは」
 私の言葉にカイトさんは少し考えると口を開いた。

 次回からは……?

 結局私は頑ななカイトさんに今回は100匹あまりのブラックシュリンプを頂く事になった。

 タダで。

 でも、次回からはカイトさんの提案通り卸値の半額で買い取ることに決まった。


 帰りに私はショウをピエトロさんのレストランに案内して食事をする事にした。

 初めて食べるブラックシュリ料理にショウは

「海の虫がこんなに美味いなんて知らなかった。やっぱりカリンは天才だなぁ」
 と感心してたけど、

「ショウ、それ私が作った料理じゃないわよ」
 と言ったら、

「カリンが考えた料理なんだからカリンが作ったのと一緒だよ」
 と意味不明な理屈を宣った。

 ショウ、その料理私が考えたのでもないんだけどね。

 私はショウに心の中でそう反論した。

 それよりも私はピエトロさんのお店の看板を目にして驚いた。

『カリンのレシピ・港街レストラン』

 と表示されていたのだ。

「え? 私の名前が入ってる? 何で?」
 ピエトロさんにそう聞いたら、私が教えたレシピを使っていかにも自分が考えたようにお店で提供するのが後ろめたく思ったそうだ。

 いや、だからね、そもそも私が考えた料理じゃないのですよ。

 と言いたかったけど、じゃあ誰が考えたんだ? という疑問が生まれるので黙っていることにした。

 でも私はこの時まだ全然予想もつかなかった。後に「カリンのレシピ」と言う言葉がブランドとして世界中に広がって行くことが。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。