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第百二十七話 新たな始まり
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「ご馳走様、セレンさん。とても美味しかったわ」
私は、パンがゆを食べ終わるとセレンさんにお礼の言葉を告げた。ダンテさんとショウは私がゆっくり休めるようにと部屋を出て行った。
ベッドの脇ではなぜか美味しそうにグレンもパンがゆをご馳走様になっている。恨めしそうに私が食べているのを見ていたグレンに気づいてセレンさんがあげたのだ。
グレンは相変わらずマイペースである。でも私はグレンに問いたださねばならない。
「グレン、私は最初からベアトリーチェだったのね‥‥‥」
私の言葉を受けたグレンはジッと私の瞳を凝視している。
『いかにも。カリンは始めからベアトリーチェである。あの時、ベアトリーチェは生きる気力を無くしていた。某が差し出した命の水さえ拒絶する程に。命の灯火が消え、魂が体から完全に切り離されないように繋ぎ止めてからラシフィーヌ様の元へ送ったのだ』
そう、確かにあの時のベアトリーチェ‥‥‥前世の記憶が蘇る前の私だけど‥‥‥は罪悪感に苛まれてこの世界から消えたいと思っていたわね。
『ラシフィーヌ様はこのままでは、ベアトリーチェの死によって精霊王の怒りを買い、この世界から精霊が消える事を危惧して、ベアトリーチェの前世の記憶を呼び覚ます事にしたのだ。前世のカリンは一人でも強く生きていたからな。その強さに期待したのだ』
グレンの言う事はとても分かる。私の母はシングルマザーで私は生まれた時から父親を知らない。母の親戚には私生児だと蔑まれた事もあった。
それだけではない。学校で虐められたこともあった。そんな時も仕事で忙しい母に心配をかけたくなく、一人で耐えていたのだ。幼い頃から母の苦労を見て来た私は何とか母の助けになろうと奮闘していた。
高校生で母親の死。親戚さえも頼ることができなかった私は一人で生きていくしかなかった。
大人になっても付き合っていた男性に何度も裏切られ、一人で生きていく為に自分の夢を実現させようと頑張って働いてお金を貯めた。それなのに直前で命を失った私の人生は何だったのだろうか?
前世で様々な試練に晒されたのだから強くもなれると言うものだ。
しかし、ベアトリーチェはどうだっただろう? 同じく父親はいなかったものの王女という立場から蝶よ花よと育てられた。憂いる事もなく何の心配事もなく。ただ笑って人々の優しさだけに触れて、何の悪意にも晒されない。
そんなベアトリーチェは、人を疑う事も知らなかった。ましてや父親とそっくりな兄弟が自分を傷つけ、己の欲望のままにクラレシアを乗っ取ろうとするなんて思いもよらなかったのだ。
美しく気高い母親のメディアーナに溺愛され、周りから大切に扱われていたベアトリーチェ。
それまで誰からも傷つけられる事がなく、強固な守りの中でこの世界の綺麗な部分しか見てこなかったベアトリーチェ。
だから打たれ弱い。
たとえ僅か13才だったとしてもカリンの13才の頃とでは雲泥の差である。
それでも、ベアトリーチェは人の生死や国の滅亡に関わる重すぎる間違いに関与している。いくら私が前世で40年近く生きた記憶があるにしても心が折れてしまいそうになる。
でも、それはベアトリーチェ一人の間違いだと考えてしまうからだ。
前世では成人前の子供の罪は親が責任を持つものだった。だとすれば、ベアトリーチェだけの罪だとは言えない。
守られるだけだったベアトリーチェだったが、クラレシアに関してはベアトリーチェだけではない。大人達も神の結界に守られて当たり前の様に平和な生活を送り、危機感がなかったのだと思う。
与えられた情報だけを受け取り、大人さえそんな平和な生活を享受していたのだ。きっとクラレシア人はそんな平和な生活が突然壊れるなんて露程も考えていなかったのだろう。
物質世界に於いて永遠に続く幸せなんてどこにもないのに……
「そうね、あのままでは私はそのまま死んでいたわね。何の責任も果たせず、ただ罪悪感だけを抱いて無駄な死を迎えていたわね。グレン、私を助けてくれてありがとう」
そして、ラシフィーヌ様‥‥‥ありがとう。
私はグレンに感謝の言葉を告げ、心の中でラシフィーヌ様にも同じ様に伝えた。
その時、ラシフィーヌ様が私に優しく微笑んでくれた様な気がした。
「カリンちゃん‥‥‥よく分からないけど大変だったわね。でも、大丈夫よ。私達がいるから、いつでも私達を頼って」
いつのまにか頬を伝っていた涙をハンカチで優しく拭いながらセレンさんが私に微笑む。
「そうだカリン、俺達もいる」
「私の事もいつでも頼れ」
ショウとダンテさんが扉を開けてそう言った。
きっと部屋の外で私達の話を聞いていたのだろう。
「ありがとう。それで、私から皆さんに伝えたい事があります。聞いてくれますか?」
瞳に力を宿らせた私は、頬を湿らせたまま本当のことを話そうと決心したのだった。
私は、パンがゆを食べ終わるとセレンさんにお礼の言葉を告げた。ダンテさんとショウは私がゆっくり休めるようにと部屋を出て行った。
ベッドの脇ではなぜか美味しそうにグレンもパンがゆをご馳走様になっている。恨めしそうに私が食べているのを見ていたグレンに気づいてセレンさんがあげたのだ。
グレンは相変わらずマイペースである。でも私はグレンに問いたださねばならない。
「グレン、私は最初からベアトリーチェだったのね‥‥‥」
私の言葉を受けたグレンはジッと私の瞳を凝視している。
『いかにも。カリンは始めからベアトリーチェである。あの時、ベアトリーチェは生きる気力を無くしていた。某が差し出した命の水さえ拒絶する程に。命の灯火が消え、魂が体から完全に切り離されないように繋ぎ止めてからラシフィーヌ様の元へ送ったのだ』
そう、確かにあの時のベアトリーチェ‥‥‥前世の記憶が蘇る前の私だけど‥‥‥は罪悪感に苛まれてこの世界から消えたいと思っていたわね。
『ラシフィーヌ様はこのままでは、ベアトリーチェの死によって精霊王の怒りを買い、この世界から精霊が消える事を危惧して、ベアトリーチェの前世の記憶を呼び覚ます事にしたのだ。前世のカリンは一人でも強く生きていたからな。その強さに期待したのだ』
グレンの言う事はとても分かる。私の母はシングルマザーで私は生まれた時から父親を知らない。母の親戚には私生児だと蔑まれた事もあった。
それだけではない。学校で虐められたこともあった。そんな時も仕事で忙しい母に心配をかけたくなく、一人で耐えていたのだ。幼い頃から母の苦労を見て来た私は何とか母の助けになろうと奮闘していた。
高校生で母親の死。親戚さえも頼ることができなかった私は一人で生きていくしかなかった。
大人になっても付き合っていた男性に何度も裏切られ、一人で生きていく為に自分の夢を実現させようと頑張って働いてお金を貯めた。それなのに直前で命を失った私の人生は何だったのだろうか?
前世で様々な試練に晒されたのだから強くもなれると言うものだ。
しかし、ベアトリーチェはどうだっただろう? 同じく父親はいなかったものの王女という立場から蝶よ花よと育てられた。憂いる事もなく何の心配事もなく。ただ笑って人々の優しさだけに触れて、何の悪意にも晒されない。
そんなベアトリーチェは、人を疑う事も知らなかった。ましてや父親とそっくりな兄弟が自分を傷つけ、己の欲望のままにクラレシアを乗っ取ろうとするなんて思いもよらなかったのだ。
美しく気高い母親のメディアーナに溺愛され、周りから大切に扱われていたベアトリーチェ。
それまで誰からも傷つけられる事がなく、強固な守りの中でこの世界の綺麗な部分しか見てこなかったベアトリーチェ。
だから打たれ弱い。
たとえ僅か13才だったとしてもカリンの13才の頃とでは雲泥の差である。
それでも、ベアトリーチェは人の生死や国の滅亡に関わる重すぎる間違いに関与している。いくら私が前世で40年近く生きた記憶があるにしても心が折れてしまいそうになる。
でも、それはベアトリーチェ一人の間違いだと考えてしまうからだ。
前世では成人前の子供の罪は親が責任を持つものだった。だとすれば、ベアトリーチェだけの罪だとは言えない。
守られるだけだったベアトリーチェだったが、クラレシアに関してはベアトリーチェだけではない。大人達も神の結界に守られて当たり前の様に平和な生活を送り、危機感がなかったのだと思う。
与えられた情報だけを受け取り、大人さえそんな平和な生活を享受していたのだ。きっとクラレシア人はそんな平和な生活が突然壊れるなんて露程も考えていなかったのだろう。
物質世界に於いて永遠に続く幸せなんてどこにもないのに……
「そうね、あのままでは私はそのまま死んでいたわね。何の責任も果たせず、ただ罪悪感だけを抱いて無駄な死を迎えていたわね。グレン、私を助けてくれてありがとう」
そして、ラシフィーヌ様‥‥‥ありがとう。
私はグレンに感謝の言葉を告げ、心の中でラシフィーヌ様にも同じ様に伝えた。
その時、ラシフィーヌ様が私に優しく微笑んでくれた様な気がした。
「カリンちゃん‥‥‥よく分からないけど大変だったわね。でも、大丈夫よ。私達がいるから、いつでも私達を頼って」
いつのまにか頬を伝っていた涙をハンカチで優しく拭いながらセレンさんが私に微笑む。
「そうだカリン、俺達もいる」
「私の事もいつでも頼れ」
ショウとダンテさんが扉を開けてそう言った。
きっと部屋の外で私達の話を聞いていたのだろう。
「ありがとう。それで、私から皆さんに伝えたい事があります。聞いてくれますか?」
瞳に力を宿らせた私は、頬を湿らせたまま本当のことを話そうと決心したのだった。
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