お題小説

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
492 / 641
075 : 嘘と約束 白いネコ

しおりを挟む
私達は、思い思いの場所でつるはしをふるっては、それらをふるいにかけた。
フランクの様子には、何か鬼気迫るものを感じた。
たとえ一分一秒でさえも無駄にしたくなさそうに、力をこめてつるはしをふるっていた。
暗くなっても彼はその作業をやめようとはしなかった。



「僕はこのままここに残りますから、お二人はお帰り下さい。」

「そんな無理をなさってはお身体にさわりますわ。」

「いえ…僕なら大丈夫です。」

「もしも、治療費のことでしたら、さしでがましいですが私達がなんとか…」

「いえ!そんなご迷惑をおかけすることは出来ません。
僕なら、本当に大丈夫ですから、ご心配なく。」

彼が自分の意思を曲げるとは思えなかったので、私達は、フランクをその場に残して立ち去った。
帰る道すがら、彼のふるうつるはしの音が耳に残った。



「フランクさん、かなり必死のようですね。
本当に大丈夫でしょうか?」

「明日は、彼に少し栄養のつくものを差し入れしてはいかがでしょう?」

「そうですね。そうしましょう。
それと、身体の疲れを取るお薬も持っていくことにします。」



私達は宿に戻り、私が風呂からあがるとちょうどリュックが診療所から戻って来た所だった。
クロワは、明日、フランクに食べさせるものを買いに出たという。
私は、早速、リュックにフランクのことを話した。



「そんなに頑張らなくても、金のことなら俺達がなんとかしてやるのにな。」

「見ず知らずの者に金を借りるのは、気がひけるのかもしれないな。
それで、ユベールの様子はどうなんだ?」

「相変わらずだ…
少し目を覚ましては、まただるそうに眠ってしまう。
相当良くないようだな。」

「病名はわからないのか?」

「オデットさんの話によると、うまれつき身体が弱いってことだったが…
あれは身体が弱いなんてもんじゃないな。
もしかして良くない病気なんじゃないだろうか?」

「良くない病気…?」

「俺には詳しい事はわからないが…
身体が弱いだけとは思えないんだ。
そういやあ、ユベールはいくつか知ってるか?」

「三つか四つあたりじゃないのか?」

「それがもう五歳らしいんだ。」

「五歳!それにしてはひどく小さいな。」

 私の頭の中にはエリックの姿が思い浮かんでいた。
 将来、神の楽器ミューズの奏者となるべき、あの少年だ。
あのエリックとユベールが同じ年だとは、とても信じられない。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

深淵に眠る十字架

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
悪魔祓いになることを運命付けられた少年がその運命に逆らった時、歯車は軋み始めた… ※※この作品は、由海様とのリレー小説です。 表紙画も由海様の描かれたものです。

処理中です...