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075 : 嘘と約束 白いネコ
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意気揚揚と出かけた私達だったが、帰りには口数も少なく足取りも重くなっていた。
「掘るって作業はけっこう腰に来るな。
マルタン、大丈夫だったか?」
「あぁ、大丈夫だ。
果樹園以来、腰はなんともない。
でも、確かにきついな。
クロワさん…こ…」
こんな大変な作業を毎日やってらっしゃったんですね。
…そう言いかけて、私は咄嗟に口をつぐんだ。
リュックには、クロワが、私達が着く何日も前からここで作業をしていたことが内緒なのだから。
「どうしたんだ?」
「あ…あぁ…
クロワさん、お疲れになりませんでしたか?」
「私なら大丈夫ですよ。
今日は何もみつかりませんでしたが、また明日、頑張りましょう!」
宿に戻り、風呂で汗と土の汚れを洗い流すと、食欲より先に睡魔が襲って来た。
自分で思っている以上に、疲れていたようだ。
こんなことをずっと一人でクロワは続けていたのか…
それも、すべてはジャクリーヌのため…
ジャクリーヌは今頃、どうしているのだろう。
別れた当時は元気そうに見えていたが、あれからもうずいぶん経っている。
彼女も、ユベールのように弱っているのだろうか…
(ユベール……まさか……!!)
もしかしたら、あのユベールも不治の病に冒されているのか?
それで、フランクも陽炎の化石を探しに…
…いや、そんなことはあるまい。
たまたま、同じ時期に、そんな絵空事のようなものを探しに来る者同士が鉢合わせする事などあるはずはない。
フランクは、息子の治療費のために宝石を探しているだけなのだ。
そう考える方が自然だ。
しかし、次の日、私のその考えは少しずつ揺らぎはじめることになる。
いつものようにユベールの様子を見に診療所を訪ねると、フランクが自分も行くと言い始めたのだ。
宝石のことは、私達にまかぜるようにと言ったが彼は聞かず、結局、リュックが彼の代わりに診療所に残る事になった。
「ユベールの傍にいらっしゃれば良いのに…」
「いえ…採掘はとても疲れる作業ですから。
そんな大変なことをあなた方にまかせっきりにしていくわけにはいきません。
それに、鉱脈の場所は慣れてないとわかりにくいものですから。」
そう言って、彼は頑強に採掘現場について来た。
「掘るって作業はけっこう腰に来るな。
マルタン、大丈夫だったか?」
「あぁ、大丈夫だ。
果樹園以来、腰はなんともない。
でも、確かにきついな。
クロワさん…こ…」
こんな大変な作業を毎日やってらっしゃったんですね。
…そう言いかけて、私は咄嗟に口をつぐんだ。
リュックには、クロワが、私達が着く何日も前からここで作業をしていたことが内緒なのだから。
「どうしたんだ?」
「あ…あぁ…
クロワさん、お疲れになりませんでしたか?」
「私なら大丈夫ですよ。
今日は何もみつかりませんでしたが、また明日、頑張りましょう!」
宿に戻り、風呂で汗と土の汚れを洗い流すと、食欲より先に睡魔が襲って来た。
自分で思っている以上に、疲れていたようだ。
こんなことをずっと一人でクロワは続けていたのか…
それも、すべてはジャクリーヌのため…
ジャクリーヌは今頃、どうしているのだろう。
別れた当時は元気そうに見えていたが、あれからもうずいぶん経っている。
彼女も、ユベールのように弱っているのだろうか…
(ユベール……まさか……!!)
もしかしたら、あのユベールも不治の病に冒されているのか?
それで、フランクも陽炎の化石を探しに…
…いや、そんなことはあるまい。
たまたま、同じ時期に、そんな絵空事のようなものを探しに来る者同士が鉢合わせする事などあるはずはない。
フランクは、息子の治療費のために宝石を探しているだけなのだ。
そう考える方が自然だ。
しかし、次の日、私のその考えは少しずつ揺らぎはじめることになる。
いつものようにユベールの様子を見に診療所を訪ねると、フランクが自分も行くと言い始めたのだ。
宝石のことは、私達にまかぜるようにと言ったが彼は聞かず、結局、リュックが彼の代わりに診療所に残る事になった。
「ユベールの傍にいらっしゃれば良いのに…」
「いえ…採掘はとても疲れる作業ですから。
そんな大変なことをあなた方にまかせっきりにしていくわけにはいきません。
それに、鉱脈の場所は慣れてないとわかりにくいものですから。」
そう言って、彼は頑強に採掘現場について来た。
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