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048 : 枯れ井戸のウワサ
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リュックの涙はまるで自分の意思では止められないかのように、いつまでも流れ続けた。
「リュック…花を投げ入れてはどうだ?」
「うん、そうだな…」
リュックは先ほどの花束を枯れ井戸に投げ入れた。
「あ………」
「どうした…?」
「鍵が…」
どうやらリュックは手に持っていたあの鍵を花束と一緒に投げ落としてしまったらしい。
「取りに行くか?」
「……いや、いいよ。」
「リュック、怖いのなら私が代わりに行って来ましょうか?」
「いや…そうじゃないんだ…
良いんだ…あの鍵はもう…」
私達は、それからローズの家に戻った。
「ありがとうよ!
俺、やっぱり行ってみて良かったよ。
なんだか、胸のつかえが降りたような気がするよ。」
「良かったのう…
きっとあの枯れ井戸のべっぴんさんも喜んでるじゃろう…
わしもなぜ今までなにもしてやらんかったんじゃろうなぁ…
花を手向けてやることさえ気付かんじゃった。」
「クロワさんのおかげだよ。」
「そんなことないわ…
でも、これで少しでもその人の心が慰められたら嬉しいわ…」
「あぁ、きっと喜んでくれてるさ。」
次の朝…
目を真っ赤にしたリュックが私の所へやってきた。
「マルタン…昨夜、またあの女性が夢に出て来たんだ…」
「またか…!」
「違うんだ!
……昨夜のあの人は、いつもと違ってとても幸せそう顔をしてた…
誰かわからないけど、若い男と手を繋いで…
二人とも、ものすごく幸せそうな顔をしてたんだ…
俺、その姿を見たらなんだか嬉しくて……」
リュックはそう言って、溢れる涙をそっと拭った。
「そうか…良かったじゃないか…
その人になにがあったのかはわからないが、君のおかげできっと幸せになれたんだ…」
「俺のおかげ?
花束のことか?」
「……なんのおかげかはわからないが…
私はきっとそうだと思ってるよ…
君のおかげで、彼女はきっと幸せな笑顔を取り戻す事が出来たんだ…」
リュックは不思議そうな表情を浮かべながらも、大きく頷いた。
「リュック…花を投げ入れてはどうだ?」
「うん、そうだな…」
リュックは先ほどの花束を枯れ井戸に投げ入れた。
「あ………」
「どうした…?」
「鍵が…」
どうやらリュックは手に持っていたあの鍵を花束と一緒に投げ落としてしまったらしい。
「取りに行くか?」
「……いや、いいよ。」
「リュック、怖いのなら私が代わりに行って来ましょうか?」
「いや…そうじゃないんだ…
良いんだ…あの鍵はもう…」
私達は、それからローズの家に戻った。
「ありがとうよ!
俺、やっぱり行ってみて良かったよ。
なんだか、胸のつかえが降りたような気がするよ。」
「良かったのう…
きっとあの枯れ井戸のべっぴんさんも喜んでるじゃろう…
わしもなぜ今までなにもしてやらんかったんじゃろうなぁ…
花を手向けてやることさえ気付かんじゃった。」
「クロワさんのおかげだよ。」
「そんなことないわ…
でも、これで少しでもその人の心が慰められたら嬉しいわ…」
「あぁ、きっと喜んでくれてるさ。」
次の朝…
目を真っ赤にしたリュックが私の所へやってきた。
「マルタン…昨夜、またあの女性が夢に出て来たんだ…」
「またか…!」
「違うんだ!
……昨夜のあの人は、いつもと違ってとても幸せそう顔をしてた…
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俺、その姿を見たらなんだか嬉しくて……」
リュックはそう言って、溢れる涙をそっと拭った。
「そうか…良かったじゃないか…
その人になにがあったのかはわからないが、君のおかげできっと幸せになれたんだ…」
「俺のおかげ?
花束のことか?」
「……なんのおかげかはわからないが…
私はきっとそうだと思ってるよ…
君のおかげで、彼女はきっと幸せな笑顔を取り戻す事が出来たんだ…」
リュックは不思議そうな表情を浮かべながらも、大きく頷いた。
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