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049 : 草笛の響き
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私達はそれから数日を小島で過ごした。
ジョセフの言ってた果物は、本当に甘く瑞々しい果汁がたっぷりでとても美味しいものだった。
「しかし、どういうことだよ。
じいさんもばあさんもこの果物の名前を知らないとは…」
「年を取ると、名前のことなんざぁ、どうでもよくなってくるもんじゃ。
うまけりゃなんでも良いじゃないか。」
「まぁ、それはそうだけどな…
それはそうと、この実は売りに行ったらけっこうな値段で売れるんじゃないか?」
「売ってどうするんじゃ。
わしゃあ、もう金なんぞに興味はないからな。
ここには野菜も魚もある。
それで十分じゃ。
金なんか持っとっても使い道がないからな。」
「ばあさんは欲がないんだな。」
「あんたもわしらみたいな年寄りになればわかるさ。」
リュックは困ったような顔を私に向けて微笑んでいた。
もう少しでリュックが緑の玉を飲まなくなって一ヶ月程になるはずだ。
今の所は、まるで変わったことはないが、それがこの先も続くとは限らない…
考えてどうにかなることではないので、私はあえてそのことは考えないようにしているのだが、時折、不安な気持ちになってしまうのも否めない。
「リュック、今日もあの果物を採りに行くのか?」
私は、心の中の不安を打ち消すためにそんなどうでも良いことを彼に尋ねた。
「あれなら、昨日採って来たのがまだあるじゃないか。」
「そうか…じゃあ、今日はどこへ行くんだ?」
「そうだなぁ…」
「そうじゃ!
今日はあんたらを面白い場所へ連れて行ってやることにしよう!」
「面白い場所?この島にそんな場所があったのか?」
「ジョセフは来んでええ!
今日は若いもん限定じゃ!」
「そりゃ、どういうことじゃ!
わしが行ったらまずい場所なのか?」
「そうじゃ!あんたみたいのが来たら困るんじゃ!」
「ふん!そうかい、そうかい。
わしもそんな所、別に行きたかぁないさ。」
ジョセフはへそを曲げたらしく、ぷいと外へ出て行ってしまった。
ジョセフの言ってた果物は、本当に甘く瑞々しい果汁がたっぷりでとても美味しいものだった。
「しかし、どういうことだよ。
じいさんもばあさんもこの果物の名前を知らないとは…」
「年を取ると、名前のことなんざぁ、どうでもよくなってくるもんじゃ。
うまけりゃなんでも良いじゃないか。」
「まぁ、それはそうだけどな…
それはそうと、この実は売りに行ったらけっこうな値段で売れるんじゃないか?」
「売ってどうするんじゃ。
わしゃあ、もう金なんぞに興味はないからな。
ここには野菜も魚もある。
それで十分じゃ。
金なんか持っとっても使い道がないからな。」
「ばあさんは欲がないんだな。」
「あんたもわしらみたいな年寄りになればわかるさ。」
リュックは困ったような顔を私に向けて微笑んでいた。
もう少しでリュックが緑の玉を飲まなくなって一ヶ月程になるはずだ。
今の所は、まるで変わったことはないが、それがこの先も続くとは限らない…
考えてどうにかなることではないので、私はあえてそのことは考えないようにしているのだが、時折、不安な気持ちになってしまうのも否めない。
「リュック、今日もあの果物を採りに行くのか?」
私は、心の中の不安を打ち消すためにそんなどうでも良いことを彼に尋ねた。
「あれなら、昨日採って来たのがまだあるじゃないか。」
「そうか…じゃあ、今日はどこへ行くんだ?」
「そうだなぁ…」
「そうじゃ!
今日はあんたらを面白い場所へ連れて行ってやることにしよう!」
「面白い場所?この島にそんな場所があったのか?」
「ジョセフは来んでええ!
今日は若いもん限定じゃ!」
「そりゃ、どういうことじゃ!
わしが行ったらまずい場所なのか?」
「そうじゃ!あんたみたいのが来たら困るんじゃ!」
「ふん!そうかい、そうかい。
わしもそんな所、別に行きたかぁないさ。」
ジョセフはへそを曲げたらしく、ぷいと外へ出て行ってしまった。
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