277 / 506
047 : 猫の目
9
しおりを挟む
「あんたの気持ちはわかる。だけど……」
「リュック……もう少しリンゼイさんの話を聞こう。」
リュックが言おうとしたことには見当が付いたが、リンゼイの話はまだ終わった様子はない。
私は、彼女に話を続けさせた。
「飛び出たのは良いですが、やはり私も心細かった……
両親に逆らって出て行くのだからと思い、私…たいしたものは何も持たずに出てしまったんです。
だから、それほど遠くに行こうにも旅費がなくて行けず……我ながら、なんて無謀なことをしたんだろうと後悔しました。
宿に泊まるお金もなく、困り果てていた時に、たまたまこの家の持ち主の方と出会い、裏の畑仕事を手伝う代わりにここを貸していただくことになったんです。
……私、家を出たらすぐに住みこみの仕事をみつけようと簡単に考えてたんです。
だけど、私は働いたこともですが、知らない人と話したことさえほとんどなくて……人の目が気になり、声をかけることすら出来なかったんです。
ですから、あの時、チェスターさんが声をかけて下さらなかったら私は今頃どうなっていたことか……」
「良かったわ…良い方にめぐりあえて……」
クロワはそう言いながら、リンゼイの手を優しく握る。
リンゼイはその行為に一瞬驚いたような顔を見せたが、やがてその顔ははにかんだような表情に変わった。
「ええ…本当に……」
「それで、ここの場所のことは家に連絡したのか?」
「いいえ、でも、すぐにみつかって……
何度も両親がここに来ました。
だけど……私は一度も会いませんでした。
何度来ても一度も……」
リンゼイもそのことを後悔しているのか、そう言うとそっと顔を伏せた。
「リンゼイさん…あんたの気持ちはわかるよ。
全くあんたの言う通りだ。
あんたの痣はあんたのせいじゃないし、勇気を出して世間に飛び出したのはすごいことだと思うぜ。
ただ……ご両親にしたことは間違ってる。
特に、おやじさんが亡くなった時にも帰らなかったっていうのは、絶対に間違ってると思うぜ……」
「それは……」
リンゼイは急に言葉を詰まらせ、みるみるうちに大きな瞳に涙が溢れ出し、ついには声を上げて号泣し始めた。
「リュック……もう少しリンゼイさんの話を聞こう。」
リュックが言おうとしたことには見当が付いたが、リンゼイの話はまだ終わった様子はない。
私は、彼女に話を続けさせた。
「飛び出たのは良いですが、やはり私も心細かった……
両親に逆らって出て行くのだからと思い、私…たいしたものは何も持たずに出てしまったんです。
だから、それほど遠くに行こうにも旅費がなくて行けず……我ながら、なんて無謀なことをしたんだろうと後悔しました。
宿に泊まるお金もなく、困り果てていた時に、たまたまこの家の持ち主の方と出会い、裏の畑仕事を手伝う代わりにここを貸していただくことになったんです。
……私、家を出たらすぐに住みこみの仕事をみつけようと簡単に考えてたんです。
だけど、私は働いたこともですが、知らない人と話したことさえほとんどなくて……人の目が気になり、声をかけることすら出来なかったんです。
ですから、あの時、チェスターさんが声をかけて下さらなかったら私は今頃どうなっていたことか……」
「良かったわ…良い方にめぐりあえて……」
クロワはそう言いながら、リンゼイの手を優しく握る。
リンゼイはその行為に一瞬驚いたような顔を見せたが、やがてその顔ははにかんだような表情に変わった。
「ええ…本当に……」
「それで、ここの場所のことは家に連絡したのか?」
「いいえ、でも、すぐにみつかって……
何度も両親がここに来ました。
だけど……私は一度も会いませんでした。
何度来ても一度も……」
リンゼイもそのことを後悔しているのか、そう言うとそっと顔を伏せた。
「リンゼイさん…あんたの気持ちはわかるよ。
全くあんたの言う通りだ。
あんたの痣はあんたのせいじゃないし、勇気を出して世間に飛び出したのはすごいことだと思うぜ。
ただ……ご両親にしたことは間違ってる。
特に、おやじさんが亡くなった時にも帰らなかったっていうのは、絶対に間違ってると思うぜ……」
「それは……」
リンゼイは急に言葉を詰まらせ、みるみるうちに大きな瞳に涙が溢れ出し、ついには声を上げて号泣し始めた。
0
あなたにおすすめの小説
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる