261 / 506
045 : 盗み聞きの値段
16
しおりを挟む
*
「じゃ、行ってくるね!」
「あぁ、気をつけてな!」
テリーは無邪気な笑みを浮かべ、私達に手を振り駆け出して行った。
リュックの用意した朝食は、私達が持っていた缶詰やパンや果物だったのだが、そんなものにもテリーは顔を綻ばせた。
私が推測していた以上に、彼らの生活は逼迫したものだったのだろう。
台所にも食料らしきものはほとんどなかった。
野菜のくずやパンの耳、そして野草…
こんなものしか食べていないのでは、母親の病気が良くなるどころか、子供達もいつ倒れてもおかしくない状況だ。
「さて…と。
マルタン、診療所をまわって、それから買い物にでも行くか。」
リュックが何をしようとしているのか、だいたいの見当はつく。
破れたガラス窓、建付けの悪いドア、天井の染み…
リュックはきっとこの家のそういう所を修繕し、夜にはテリーにうまいものを食べさせてやろうと考えているのだろう。
リュックのおかげで私も以前に比べるとそういった作業が少しずつ出来るようになっていた。
「あぁ…そうだな。
カールがちゃんと言い付けられた仕事をこなしてるかも確かめなきゃいけないからな。」
リュックは私の軽口に失笑した。
「確認するまでもないさ。
あいつは間違いなくきちんとこなしてるだろうからな。」
「……君の言う通りだな。」
*
「あ、リュックさん、マルタンさん!」
病室の扉を開けると、カールはいつになく明るい声で私達を出迎えた。
クロワも、同じように微笑んでいる。
二人の微笑みは、きっと、良い事があった印なのだと予感させた。
「お母さんの容態はどうだ?」
「今朝ね…母さんが目を覚ましたんです。
ここに入院出来る事になったって知って、母さんすごく喜んでた…
頑張って必ず元気になるって約束してくれたんです。」
カールは目を輝かせてそう言った。
「そうか…そりゃあ、良かったな。
じゃあ、これからもちゃんとお母さんの世話をするんだぞ。
……クロワさん、こいつはちゃんと仕事をしてるかい?
サボったりしないようにちゃんと目を光らせておいてくれよ。
なんせ、治療費の代わりに働いてもらってるんだからな。」
そう言って、リュックはクロワに目配せを送る。
「大丈夫よ。
カールはとてもよくやってくれてるわ。」
優しく微笑むクロワに、カールも嬉しそうに微笑んだ。
「じゃ、行ってくるね!」
「あぁ、気をつけてな!」
テリーは無邪気な笑みを浮かべ、私達に手を振り駆け出して行った。
リュックの用意した朝食は、私達が持っていた缶詰やパンや果物だったのだが、そんなものにもテリーは顔を綻ばせた。
私が推測していた以上に、彼らの生活は逼迫したものだったのだろう。
台所にも食料らしきものはほとんどなかった。
野菜のくずやパンの耳、そして野草…
こんなものしか食べていないのでは、母親の病気が良くなるどころか、子供達もいつ倒れてもおかしくない状況だ。
「さて…と。
マルタン、診療所をまわって、それから買い物にでも行くか。」
リュックが何をしようとしているのか、だいたいの見当はつく。
破れたガラス窓、建付けの悪いドア、天井の染み…
リュックはきっとこの家のそういう所を修繕し、夜にはテリーにうまいものを食べさせてやろうと考えているのだろう。
リュックのおかげで私も以前に比べるとそういった作業が少しずつ出来るようになっていた。
「あぁ…そうだな。
カールがちゃんと言い付けられた仕事をこなしてるかも確かめなきゃいけないからな。」
リュックは私の軽口に失笑した。
「確認するまでもないさ。
あいつは間違いなくきちんとこなしてるだろうからな。」
「……君の言う通りだな。」
*
「あ、リュックさん、マルタンさん!」
病室の扉を開けると、カールはいつになく明るい声で私達を出迎えた。
クロワも、同じように微笑んでいる。
二人の微笑みは、きっと、良い事があった印なのだと予感させた。
「お母さんの容態はどうだ?」
「今朝ね…母さんが目を覚ましたんです。
ここに入院出来る事になったって知って、母さんすごく喜んでた…
頑張って必ず元気になるって約束してくれたんです。」
カールは目を輝かせてそう言った。
「そうか…そりゃあ、良かったな。
じゃあ、これからもちゃんとお母さんの世話をするんだぞ。
……クロワさん、こいつはちゃんと仕事をしてるかい?
サボったりしないようにちゃんと目を光らせておいてくれよ。
なんせ、治療費の代わりに働いてもらってるんだからな。」
そう言って、リュックはクロワに目配せを送る。
「大丈夫よ。
カールはとてもよくやってくれてるわ。」
優しく微笑むクロワに、カールも嬉しそうに微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 嘘と後悔、そして愛
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢ソニアは15歳。親に勝手に決められて、一度も会ったことのない10歳離れた侯爵リカルドに嫁ぐために辺境の地に一人でやってきた。新婚初夜、ソニアは夫に「夜のお務めが怖いのです」と言って涙をこぼす。その言葉を信じたリカルドは妻の気持ちを尊重し、寝室を別にすることを提案する。しかしソニアのその言葉には「嘘」が隠れていた……
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
月華後宮伝
織部ソマリ
キャラ文芸
★10/30よりコミカライズが始まりました!どうぞよろしくお願いします!
◆神託により後宮に入ることになった『跳ねっ返りの薬草姫』と呼ばれている凛花。冷徹で女嫌いとの噂がある皇帝・紫曄の妃となるのは気が進まないが、ある目的のために月華宮へ行くと心に決めていた。凛花の秘めた目的とは、皇帝の寵を得ることではなく『虎に変化してしまう』という特殊すぎる体質の秘密を解き明かすこと! だが後宮入り早々、凛花は紫曄に秘密を知られてしまう。しかし同じく秘密を抱えている紫曄は、凛花に「抱き枕になれ」と予想外なことを言い出して――?
◆第14回恋愛小説大賞【中華後宮ラブ賞】受賞。ありがとうございます!
◆旧題:月華宮の虎猫の妃は眠れぬ皇帝の膝の上 ~不本意ながらモフモフ抱き枕を拝命いたします~
異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
【完結】瑠璃色の薬草師
シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。
絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。
持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。
しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。
これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる