200 / 506
040 : 嘲りの犠牲
11
しおりを挟む
***
「そうか…
あのウェディングドレスにはそんな想いがあったのか…
イングリットさん、すまなかったな。
辛い記憶を思い出させて…」
リュックの言葉に、イングリットは潤んだ瞳を向け首を振った。
そして、メモにペンを走らせる。
『いいえ、久し振りに彼のことを聞いてもらえて、嬉しいです。
見ず知らずのおばさんのつまらない話を聞いて下さってどうもありがとう。』
メモを差し出しながら、イングリットは目尻にたまった涙をそっと拭った。
「おや、もうこんな時間だ。
申し訳ないことをしましたね。
今夜は私のうちに泊まって下さい。
クロワさんはここに…」
「いや、そんなに気を遣わないで下さい。
この長椅子で朝まで仮眠させてもらえたら助かります。」
「でも、こんな所では…」
「俺達は、野宿することだってあるんだから、ここで十分ですよ。
それでなくてもこんなに世話になっちまって…
イングリットさん、本当にすまなかったな。」
そうしたいきさつから、私達は、結局、その日はイングリットの家に泊めてもらうことになった。
*
「本当にありがとう!」
「またいつでもいらして下さいね!」
次の日の朝食までご馳走になり、私達はイングリットの家を発った。
並んで手を振るイングリットとマーチンは仲の良い夫婦のように見えた。
「なぁ、ビルさんはなんで戻って来なかったんだと思う?」
「それはやはりイングリットさんに絶望したからじゃないでしょうか?
信じた人に裏切られた心の傷は大きなものです。
イングリットさんにはもう二度と会いたくないと思われたんじゃないかと思いますね。」
リュックの問いに最初に答えたのはクロードだった。
「そうかな…クロワさんはどう思う?」
「私は……そうね。
ビルさんは、イングリットさんのことを忘れようと決意して、そしてどこかの町で他の誰かと家庭を持たれたのではないかと思うわ。
だから、戻って来られないんじゃないかしら?」
「でも、クロワさん、ビルさんの顔はその……
ずっと女性に相手をされたこともなかったって話ですし、そんな人が違う町に行ったからといって誰かと家庭を持つなんてことが出来るでしょうか?」
「先生、皆が皆、人のことを見た目で判断するとは限らないぜ。
現にイングリットさんはあんなにもビルさんのことを愛してるじゃないか。」
その言葉にクロードは皮肉な笑みを浮かべた。
「リュックさん、あれは錯覚ですよ。
自分の罪悪感からそれを愛だと勘違いされてるのです。」
「そうか…
あのウェディングドレスにはそんな想いがあったのか…
イングリットさん、すまなかったな。
辛い記憶を思い出させて…」
リュックの言葉に、イングリットは潤んだ瞳を向け首を振った。
そして、メモにペンを走らせる。
『いいえ、久し振りに彼のことを聞いてもらえて、嬉しいです。
見ず知らずのおばさんのつまらない話を聞いて下さってどうもありがとう。』
メモを差し出しながら、イングリットは目尻にたまった涙をそっと拭った。
「おや、もうこんな時間だ。
申し訳ないことをしましたね。
今夜は私のうちに泊まって下さい。
クロワさんはここに…」
「いや、そんなに気を遣わないで下さい。
この長椅子で朝まで仮眠させてもらえたら助かります。」
「でも、こんな所では…」
「俺達は、野宿することだってあるんだから、ここで十分ですよ。
それでなくてもこんなに世話になっちまって…
イングリットさん、本当にすまなかったな。」
そうしたいきさつから、私達は、結局、その日はイングリットの家に泊めてもらうことになった。
*
「本当にありがとう!」
「またいつでもいらして下さいね!」
次の日の朝食までご馳走になり、私達はイングリットの家を発った。
並んで手を振るイングリットとマーチンは仲の良い夫婦のように見えた。
「なぁ、ビルさんはなんで戻って来なかったんだと思う?」
「それはやはりイングリットさんに絶望したからじゃないでしょうか?
信じた人に裏切られた心の傷は大きなものです。
イングリットさんにはもう二度と会いたくないと思われたんじゃないかと思いますね。」
リュックの問いに最初に答えたのはクロードだった。
「そうかな…クロワさんはどう思う?」
「私は……そうね。
ビルさんは、イングリットさんのことを忘れようと決意して、そしてどこかの町で他の誰かと家庭を持たれたのではないかと思うわ。
だから、戻って来られないんじゃないかしら?」
「でも、クロワさん、ビルさんの顔はその……
ずっと女性に相手をされたこともなかったって話ですし、そんな人が違う町に行ったからといって誰かと家庭を持つなんてことが出来るでしょうか?」
「先生、皆が皆、人のことを見た目で判断するとは限らないぜ。
現にイングリットさんはあんなにもビルさんのことを愛してるじゃないか。」
その言葉にクロードは皮肉な笑みを浮かべた。
「リュックさん、あれは錯覚ですよ。
自分の罪悪感からそれを愛だと勘違いされてるのです。」
0
あなたにおすすめの小説
2月31日 ~少しずれている世界~
希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった
4年に一度やってくる2月29日の誕生日。
日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。
でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。
私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。
翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く
液体猫(299)
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/
香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。
ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……
その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。
香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。
彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。
テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。
後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。
シリアス成分が少し多めとなっています。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる