お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
201 / 389
040 : 嘲りの犠牲

12

しおりを挟む
リュックの舌打ちの音が聞こえ、私は彼がクロードに文句を言うのではないかと気を遣い、質問を投げかけた。



 「リュックは、どう思うんだ?」

 「え……?
 俺も…そうだな。
やっぱりクロワさんと同じかな。
ビルさんは、イングリットさんに言われたことで大きなショックを受けただろうとは思うよ。
だから、帰り辛かったんだと思う。
そして、辿り着いたどこかの町で良い出会いがあって…今は、幸せに暮らしてるんじゃないかな…
きっと、イングリットさんの気持ちももうわかってると思うんだ。
 許してくれてるさ。
……先生は、ビルさんのことを好きになる女なんていないと思ってるみたいだけど…
たとえば、相手が目の見えない女の人だったらどうだろう?
ビルさんの外見になんて惑わされずに、人柄だけで好きになることはあるんじゃないか?
 見えないからこそよく見えるものってのもあるんじゃないか。」

 「なるほど…見えないからこそよく見える…ですか…
リュックさん、うまいことを言いますね。」

どこか皮肉にも聞こえたクロードの言葉に、リュックは眉をひそめ不機嫌な表情を浮かべたが、あえて反論をすることはなく、私は安堵した。



 「マルタンさんは、どう思われるんですか?」

 「私ですか…私は……
やはり、クロワさんやリュックと同じですよ。」

 私のその言葉に、リュックは満足げに微笑み、大きく頷く。
だが、私の本心は実はそうではなかった。
 私には、ビルが義父をそのまま放っておくとは思えなかったのだ。
 彼の人となりを聞いた限りでは、その場は取り乱して逃げたとしても、その後、落ちついてから必ず戻って来るだろうと思えた。
 誰かがなんとかしてくれるとは思っても、きっと義父のことが気になる筈だ。
しかしながら、彼が町に戻った形跡がないということは…それは、おそらくどうしても帰れない事情があったとしか思えない。
それは、つまり…



「マルタン、この先だがどうする?」

リュックの声で、私は物思いから覚めた。



 「え?……あぁ…そうだな。
この町で少しいるものを揃えて…それから、この先の町について話を聞いてから決めたらどうだ?」

 「確か、この先は、二又になってましたよね。」

 私達は、イングリットの家から少し離れた商店の建ち並ぶ通りに向かって歩き出した。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

異世界でスローライフを満喫

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位に入ってました!本当にありがとうございます! タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です! ※カクヨム様にも投稿しております ※イラストはAIアートイラストを使用

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「話が違う!!」  思わず叫んだオレはがくりと膝をついた。頭を抱えて呻く姿に、周囲はドン引きだ。 「確かに! 確かに『魔法』は使える。でもオレが望んだのと全っ然! 違うじゃないか!!」  全力で世界を否定する異世界人に、誰も口を挟めなかった。  異世界転移―――魔法が使え、皇帝や貴族、魔物、獣人もいる中世ヨーロッパ風の世界。簡易説明とカミサマ曰くのチート能力『魔法』『転生先基準の美形』を授かったオレの新たな人生が始まる!  と思ったが、違う! 説明と違う!!! オレが知ってるファンタジーな世界じゃない!?  放り込まれた戦場を絶叫しながら駆け抜けること数十回。  あれ? この話は詐欺じゃないのか? 絶対にオレ、騙されたよな?  これは、間違った意味で想像を超える『ファンタジーな魔法世界』を生き抜く青年の成長物語―――ではなく、苦労しながら足掻く青年の哀れな戦場記録である。 【注意事項】BLっぽい表現が一部ありますが、BLではありません      (ネタバレになるので詳細は伏せます) 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2019年7月 ※エブリスタ「特集 最強無敵の主人公~どんな逆境もイージーモード!~」掲載 2020年6月 ※ノベルアップ+ 第2回小説大賞「異世界ファンタジー」二次選考通過作品(24作品) 2021年5月 ※ノベルバ 第1回ノベルバノベル登竜門コンテスト、最終選考掲載作品 2021年9月 9/26完結、エブリスタ、ファンタジー4位

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...