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策略

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それから一週間程が経った頃、二人は馬車に乗り旅立った。



「ベルナール、私、なんだかまだ夢を見てるようだわ。
あなたと二人きりで旅行してるなんて…」

「それは僕の台詞だよ。
突然、旅行に行くなんて言われて、本当に驚いたよ。
しかも、それが君と二人っきりの旅行だなんて…
こんなこと、侯爵がよく許してくれたね。」

「何言ってるの、私達はもう婚約してるのよ。」

「それはそうだけど…まだ信じられないくらいだよ。」

事実、この旅行はベルナールにとっても思いがけないものだった。
どのようにして別荘へ案内させようかと策を練っていた所へ、この話が舞いこんだのだから。



(あの堅物が、よくこんな旅行を許したものだな…)




屋敷を経ってから三日後、二人はようやく馬車を降りた。

「では、シャルロット様、ベルナール様、十日後にお迎えに参ります。」

御者は二人に深々と頭を下げた。



「ここが、時の奈落のある別荘なのかい?」

「違うわ。
ここは亡くなった母さんの別荘よ。」

その言葉に、ベルナールは大きく落胆した。
しかし、それを悟られてはまずい。
数日の間、二人はシャルロットの母親の先祖の墓所を訪ねたり、あたりを観光して時を過ごした。



(なんてことだ…良い所へ連れて行くと言ったから、てっきり時の奈落のある別荘かと思ったらこんな所とは…
何か手を打たねばならんな…)



「シャルロット、葡萄酒をもう少しいただけるかな…」

ベルナールはシャルロットの前に空のグラスを差し出した。



「珍しいわね、いつもはあんまり飲まないのに…」

「たまには飲みたい日もあるさ。
君ももう少し飲んだらどうだい?」

「私はもう良いわ。」

しばらくして、ベルナールはシャルロットを庭へ誘い出した。



「あぁ、気持ち良い風だ。
やっぱり、僕はアルコールに弱いな。
あれっぽっちでも酔ってしまう…
足元がふらふらするよ。」

「大丈夫、ベルナール?」

「シャルロット…」

シャルロットがふらつくベルナールの身体を支えた時、ベルナールの青い瞳がシャルロットをじっとみつめ、シャルロットは期待に高まる胸の鼓動を抑えながらそっと目を閉じた。
葡萄酒の香りがシャルロットに近付いて来る…



「あ……」

ベルナールの小さな声に、シャルロットが目を開いた。



「ごめん、シャルロット…
僕、酔ってるみたいだ…
きっとあの月のせいだ…ごめんよ…」

「え……」

期待していたことが肩透かしとなり、シャルロットは、心の中で呟いた。



(ベルナールの馬鹿…)


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