【第1章完】セブンでイレブン‼~現代に転移した魔王、サッカーで世界制覇を目指す~

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
36 / 50
第1章

第9話(3)魔王チーム分析

しおりを挟む
「はっくしょん!」

 リュミエール越谷のクラブハウスの一室でローがくしゃみをする。

「おいおい、風邪か?」

 リンが呆れ気味に尋ねる。

「いや、そういうわけじゃないけど……」

 ローがティッシュで鼻をかみながら答える。

「明日は決勝だぞ、体調管理はしっかりしてもらわなくては困る……」

「でも、こればっかりはしょうがないよ」

「なにがしょうがないんだ?」

「女性たちが僕の噂話をするのは防ぎようがないからね」

「……」

 鼻の頭を得意気にこするローをリンが心底呆れた視線で見つめる。

「ロー! たるんでいるな! もっと筋トレをしろ!」

 ヒルダがポーズを決めながらローに声をかける。

「……必要ない」

 リンが代わりに答える。

「必要ないだと⁉ 馬鹿な! 筋トレは全てを解決してくれるんだぞ!」

「馬鹿はお前だ……過度のトレーニングは良くない。ローの敏捷性が失われる可能性もある。人にはそれぞれ合ったトレーニング方法やトレーニング量というものがあるのだ」

「む……」

「それくらい考えれば分かるだろう……脳筋には難しかったか?」

「だ、誰が脳みそ筋肉だ⁉」

「お前だ」

「むきー!」

 ヒルダが激昂する。

「あわわ……二人とも、ケンカはやめましょう……」

「放っておきなさいよ、ピティ……いつものことじゃないの」

 狼狽するピティにビアンカが笑う。

「そ、それでも……ねえ、レイナ?」

「……興味ない」

 レイナは退屈そうに本を読んでいる。

「そ、そんな……」

「ねえねえ、ピティ。二人を止めれば良いの?」

「え、ええ、そうよ、ラド」

「分かった! じゃあドラゴンになって……」

「わあっ! ちょ、ちょっと待って! 建物が壊れちゃうから!」

 ピティが慌ててラドを止める。ビアンカがそれを横目に見ながら、ローに声をかける。

「ねえ、ロー。全員揃ったから、そろそろ始めましょう?」

「ああ、そうだな……全員、モニターに注目してくれ」

 ローが立ち上がり、モニターの前に立つ。ローの一声で全員が静かになる。

「……」

「それでは明日対戦する『アウゲンブリック船橋』について、一応の確認を始める」

「一応ね……」

 ローのもの言いにビアンカが苦笑する。

「まずはゴールキーパーのレム……ゴーレムだな。大柄で反応もそれなりに俊敏だが、たかが知れている。スピードあるシュートももちろん有効だが、コースを狙っても良いだろう。どうだ、ビアンカ?」

「ああ、それくらいのシュートの撃ち分け、お茶の子さいさいだわ」

「それは頼もしいな」

「アタシを誰だと思っているの? 騎士様よ?」

 ビアンカが胸を張る。ローは頷いて説明を続ける。

「次はセンターバックのクーオ……オークだな。なんといっても当たりの強さが厄介だな」

「これくらいのオークさん、ラドがドラゴンになってガンガン吹き飛ばしちゃうよ~」

 ラドの威勢のいい言葉にローが頷く。

「もちろんそれもありだが、スピードで翻弄してしまえばなんてことのない相手だ」

「スピードか~」

 ラドが腕を組む。

「出来るか、ラド?」

「うん、やってみる!」

「頼む……次はサイドバックのゴブ……ゴブリンだな。多少すばしっこいくらいだ。さほど注意は必要ない。もちろん油断は禁物ではあるが」

「試合序盤にキツく当たって、無力化すれば良いだろう」

 リンの言葉にローは思わず苦笑する。

「おいおい、退場は勘弁してくれよ……」

「無論、ルールの範疇でだ」

「それは結構……次はサイドハーフのルト……コボルトだな。スピードもあり、プレーも小器用だ。ドリブル、パス、シュート……どれもそれなりの水準だ」

「あくまでもそれなりでしょ……」

 レイナが退屈そうに呟く。

「くり返しになるが、油断は禁物だぞ」

「分かっている……」

「それなら良いのだが」

「ねえ、もう帰ってもいい?」

「い、いや、まだだ、もう少しで終わるから……」

「はあ……」

 レイナがため息をつく。ローが苦笑を浮かべる。

「次だ……センターハーフのスラ……スライムだな。球際の粘り強さが特長だな」

「体型を変形・変化させて、かなりの広範囲でボールを拾っていますね……」

 ピティがモニターを見ながら呟く。ローが頷く。

「ああ、変形・変化の調子はその日によって異なるようだが……念のため明日は絶好調だと想定しておいた方が良さそうだ」

「ある意味一番厄介かもしれませんね……」

「それはそうかもしれないな……」

 ローは腕を組む。

「良い形でボールを拾わせないようにしないといけませんね」

「そうだな……次はフォワードのトッケ……ケットシーだな。とにかくすばっしこい。眠そうにしているが、抜け目なくディフェンスラインの裏を狙っている」

「ふん……」

 ヒルダが鼻を鳴らす。

「いや、ヒルダ、ふん……じゃなくてな」

「何だい?」

「お前がマッチアップする機会が多いからな。スピードには注意しておけよ」

「ああ、確かにこのスピードは厄介だな……だが!」

「だが?」

「わたしの筋肉はそれをも上回るさ!」

 ヒルダはそう言って拳を強く握る、持っていたペットボトルが破裂する。

「ま、まあ、程々にな……」

「任せておけ!」

「最後はこの男……魔王レイブンだ……この男は僕に任せておいてくれ」

「大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ」

 ビアンカの問いにローが冷静に答える。リンが口を開く。

「この男を褒めるのも癪なのだが……プレーは全てにおいてハイレベル、さすがは魔王といったところだが?」

「まったく問題ない、僕が完璧に封じ込める」

「……信じていいんだな?」

「ああ! 魔王は今大会ほぼ活躍がない! 明日も同様! 奴を屈辱にまみれさせる!」

 ローが拳を高々と突き上げる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...