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第一章
第2話(1)旅立ち
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「いやはや驚きました……」
老人が呟く。タイヘイが苦笑する。
「爺さん、昨日からそればっかりだな」
「いや、例えば人と獣の、人と妖、人と機のハーフというのはありますが、それぞれの流れを受け継ぐ方がいるとは……」
「やっぱり珍しいか?」
「相当珍しいかと」
「ふ~ん……」
「記憶の方は……?」
老人が聞きづらそうに尋ねる。タイヘイが頭をかく。
「いや~それが曖昧なんだよな……」
「ふむ……恐らくはこの四国のご出身かと思われますが……」
「それすらはっきりしないんだよな……」
「まあ、そういったものは何かの拍子に思い出すことがあるかもしれませんからな……」
「そうなのか?」
「専門家ではないので、はっきりとそうだとは言えませんが……」
「希望はあるってことだな」
「そうです」
「そうか……それにしても、この集落に受け入れてもらえて良かったな」
タイヘイが周囲を見回す。
「はい。ただ、心配事がありまして……」
「うん?」
「我々の集落同様、ここも狙われるのではないかと……」
「ああ、その辺は手を打ってある」
「手ですか?」
「後で説明するよ」
「はあ……」
「それよりもだ、昨日は結局バタバタして聞けなかったんだが……」
「なんでしょうか?」
「国を造る為の道筋ってやつだよ」
「ああ……」
「だいぶか細いみたいだけどな」
タイヘイが苦笑を浮かべる。
「いえ、それがそうでもしれないかもしれません……」
「ん?」
「可能性はわずかかもしれませんが高まったかと……」
「ほう、なぜそう思う?」
「あなたという存在です」
「俺?」
タイヘイは自らを指差す。
「ええ、ヒトとケモノとアヤカシとキカイの流れを受け継ぐあなたという稀有な存在は、新たな時代の象徴たりえるかもしれません」
「大げさだろう」
「とはいえ、ご自身でもなにか運命めいたものを感じておられるのでしょう?」
「まあな」
老人の問いにタイヘイは頷く。老人は話を続ける。
「ですから、あなたが旗頭となるのです」
「旗頭?」
「言ってしまえば、勢力を持つということですな」
「それは……簡単に行くかね?」
「もちろん、困難を伴うでしょう。ただ……」
「ただ?」
「あなたの強さならあるいは……」
「結局ものを言うのはこれか」
タイヘイは力こぶを作ってみせる。
「ええ、ですがもちろん、話し合いなど平和的な手段で済めば、それに越したことはないのですけれども……」
「う、うん、まあ、それはそうだな……」
タイヘイは深々と頷く。
「……」
老人がじっとタイヘイを見つめる。
「そ、そうなるように努力するよ」
「それは良かった。いや、あなたの身を案じておるのです」
「多分無理そうだけどな……」
タイヘイが小声で呟く。老人が首を傾げる。
「なにか?」
「い、いや、なんでもない! それより勢力を持つって、具体的にはどうすれば良いんだ?」
「この辺りの集落群とその周辺は、四つの国の勢力がそこまで及んでいない、緩衝地帯ということは申し上げましたな?」
「ああ、聞いた」
「四つの国に対して不満を持っている者もそれなりの数がいるのです」
「へえ……っていうことは……つまり」
「ええ、その連中を一つに束ねることが出来れば……」
「四つの国にも対抗出来るだけの勢力が出来上がるってことか」
「はい」
「なるほどな」
「ですが、いずれも一筋縄ではいかない連中です……」
「国を相手しようってんだ、多少荒っぽい方が頼りになる」
「ふむ、そういう考え方もありますな」
「で? そいつらとはどこに行けば会える?」
「この集落を中心に考えれば……南西の森、北東の林、南東の山です」
「ほう……」
「簡単ではありますが、地図を用意しました。赤い点がこの集落、青く塗ってある辺りが、その連中がいると思われる場所です」
老人が紙をタイヘイに渡す。タイヘイが礼を言う。
「ありがてえ、早速向かってみるぜ!」
「ご無事をお祈りしております……あの、それで……」
「うん?」
「打ってある手というのは?」
「ああ、それな……」
「…………」
出発の準備を整えたタイヘイが語りかける。
「俺は少しここを留守にするが、この集落になにかあれば、お前ら……分かっているな?」
「は、はい!」
豚頭たちがビシっと整列する。
「しっかり警備を頼むぜ……お前らもありがとうな」
「ふん……」
「任せたぜ、イノサル」
「イノマルだ!」
「情けない話ですが、亜人連合に戻っても居場所はないでしょうから……」
「よろしくな、シカモ」
「シカオです……」
「制裁を受ける可能性もあるからね……とりあえずはここに身を寄せるとするわ」
「お願いするぜ、ミボウジン」
「フジンよ!」
「それじゃあ行くか!」
タイヘイが勢いよく走り出す。
「いやはや驚きました……」
老人が呟く。タイヘイが苦笑する。
「爺さん、昨日からそればっかりだな」
「いや、例えば人と獣の、人と妖、人と機のハーフというのはありますが、それぞれの流れを受け継ぐ方がいるとは……」
「やっぱり珍しいか?」
「相当珍しいかと」
「ふ~ん……」
「記憶の方は……?」
老人が聞きづらそうに尋ねる。タイヘイが頭をかく。
「いや~それが曖昧なんだよな……」
「ふむ……恐らくはこの四国のご出身かと思われますが……」
「それすらはっきりしないんだよな……」
「まあ、そういったものは何かの拍子に思い出すことがあるかもしれませんからな……」
「そうなのか?」
「専門家ではないので、はっきりとそうだとは言えませんが……」
「希望はあるってことだな」
「そうです」
「そうか……それにしても、この集落に受け入れてもらえて良かったな」
タイヘイが周囲を見回す。
「はい。ただ、心配事がありまして……」
「うん?」
「我々の集落同様、ここも狙われるのではないかと……」
「ああ、その辺は手を打ってある」
「手ですか?」
「後で説明するよ」
「はあ……」
「それよりもだ、昨日は結局バタバタして聞けなかったんだが……」
「なんでしょうか?」
「国を造る為の道筋ってやつだよ」
「ああ……」
「だいぶか細いみたいだけどな」
タイヘイが苦笑を浮かべる。
「いえ、それがそうでもしれないかもしれません……」
「ん?」
「可能性はわずかかもしれませんが高まったかと……」
「ほう、なぜそう思う?」
「あなたという存在です」
「俺?」
タイヘイは自らを指差す。
「ええ、ヒトとケモノとアヤカシとキカイの流れを受け継ぐあなたという稀有な存在は、新たな時代の象徴たりえるかもしれません」
「大げさだろう」
「とはいえ、ご自身でもなにか運命めいたものを感じておられるのでしょう?」
「まあな」
老人の問いにタイヘイは頷く。老人は話を続ける。
「ですから、あなたが旗頭となるのです」
「旗頭?」
「言ってしまえば、勢力を持つということですな」
「それは……簡単に行くかね?」
「もちろん、困難を伴うでしょう。ただ……」
「ただ?」
「あなたの強さならあるいは……」
「結局ものを言うのはこれか」
タイヘイは力こぶを作ってみせる。
「ええ、ですがもちろん、話し合いなど平和的な手段で済めば、それに越したことはないのですけれども……」
「う、うん、まあ、それはそうだな……」
タイヘイは深々と頷く。
「……」
老人がじっとタイヘイを見つめる。
「そ、そうなるように努力するよ」
「それは良かった。いや、あなたの身を案じておるのです」
「多分無理そうだけどな……」
タイヘイが小声で呟く。老人が首を傾げる。
「なにか?」
「い、いや、なんでもない! それより勢力を持つって、具体的にはどうすれば良いんだ?」
「この辺りの集落群とその周辺は、四つの国の勢力がそこまで及んでいない、緩衝地帯ということは申し上げましたな?」
「ああ、聞いた」
「四つの国に対して不満を持っている者もそれなりの数がいるのです」
「へえ……っていうことは……つまり」
「ええ、その連中を一つに束ねることが出来れば……」
「四つの国にも対抗出来るだけの勢力が出来上がるってことか」
「はい」
「なるほどな」
「ですが、いずれも一筋縄ではいかない連中です……」
「国を相手しようってんだ、多少荒っぽい方が頼りになる」
「ふむ、そういう考え方もありますな」
「で? そいつらとはどこに行けば会える?」
「この集落を中心に考えれば……南西の森、北東の林、南東の山です」
「ほう……」
「簡単ではありますが、地図を用意しました。赤い点がこの集落、青く塗ってある辺りが、その連中がいると思われる場所です」
老人が紙をタイヘイに渡す。タイヘイが礼を言う。
「ありがてえ、早速向かってみるぜ!」
「ご無事をお祈りしております……あの、それで……」
「うん?」
「打ってある手というのは?」
「ああ、それな……」
「…………」
出発の準備を整えたタイヘイが語りかける。
「俺は少しここを留守にするが、この集落になにかあれば、お前ら……分かっているな?」
「は、はい!」
豚頭たちがビシっと整列する。
「しっかり警備を頼むぜ……お前らもありがとうな」
「ふん……」
「任せたぜ、イノサル」
「イノマルだ!」
「情けない話ですが、亜人連合に戻っても居場所はないでしょうから……」
「よろしくな、シカモ」
「シカオです……」
「制裁を受ける可能性もあるからね……とりあえずはここに身を寄せるとするわ」
「お願いするぜ、ミボウジン」
「フジンよ!」
「それじゃあ行くか!」
タイヘイが勢いよく走り出す。
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