見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

文字の大きさ
上 下
455 / 459

【第455話】大陸の未来の為に

しおりを挟む


「え~、皆さん。お食事を楽しんでいるところすみません。ここで、一つシンバードから大きな発表をさせて頂きたい」

 改まって宣言するシンに来客たちは一斉に静まった。全員の視線が自身に集まったことを確認したシンは仰々しく咳払いをした後、俺も聞いていない情報を発表した。

「俺は将来的にシンバードに負けないぐらい大きな第二のシンバードを作ろうと考えている。それもドライアドみたいに元々あった場所を再復興させるような話ではなく、西の広大な平原に一から積み上げて国を作ろうと考えている」

 あまりに大きなプロジェクトに全員がざわめきだした。特に大国を率いる皇族のレックは驚きが大きかったらしく「新しい国を作る狙いは何だ?」と尋ねると、シンは各国の要人を見つめながら理由を語る。

「大戦争を終えた今、シンバードは間違いなく大陸一の勢いを持っているはずだ。帝国の人間を前にして言うのも失礼かもしれないが、帝国を超える日も遠くないのでは? と考えている。だから、普通に考えれば今まで通り領土と同盟国を広げて、『一国・一王・一領土』として肥大していくがベストなのかもしれない。だが、此度の戦争を通して俺の考えは変わった。それが何か分かるかな、レック君?」

「もしかして『一国が力を持ち過ぎない』ようにするのが狙いか? わざわざ俺に聞いてきたのは皮肉を利かせているのだろう?」

「別に皮肉を利かせた訳じゃないさ、レック君が帝国の体制を作った訳ではないのだからね。ただ、帝国という一番大きな力に触れてきた為政者だから問いかけただけだよ。俺の狙いは正にレック君の言った通りだ。シンバードが培ってきた『血を流さず、商業によって国を栄えさせて平和を作る』スタンス……それを軸に新たな大国を作りたいんだ。もし、それが実現出来たら未来はどうなっていくと思うかな、ガラルド君?」

 今度は俺に質問が飛んできた。一国が力を持ち過ぎないようにする狙いが成功して、各国が均等な力関係になれば一見戦争が起きてしまいそうな気がするが……シンバードみたいな国が増えれば基本的に平和な施政が続き、誤った道に進みそうな国が出ても互いに止め合うことができる……のだろうか?

 俺に難しい話は分からないけれど、問われた以上は自分なりの答えを伝えておこう。

「端的に言えば、平和な教えを持つ国を増やして、どこかが暴走しそうになった時は互いにフォローし合う未来になるって言いたいのか?」

「ああ、その通りだよ。現実問題、中々そう上手くはいかないとは思うし、完全な平和を作り出すには莫大な時間がかかると思う。それでも、俺達の時代から動き始めなきゃいけないと思うんだ。人も組織も孤独になったり肥大化する事でいつか必ず暴走や綻びが生じる。それはアスタロトや旧帝国が証明しているだろう? 危ないのはシンバードだって例外ではない。だから、大陸全体が変わっていかなきゃいけないんだ」

 シンの熱い語りを受けて為政者も為政者以外の人間も深く考え込んでいる様子が伺えた。特に戦争の中心でもあった帝国リングウォルドの面々は噛みしめるようにして言葉を受けている。

 そして、シンは最後にとんでもない願望を語り始めた。

「それで、新しい国の王に推薦したい人がいてね…………ガラルド君、君が新しい国の王になってくれないだろうか?」

「…………えっ? なんで? 冗談だろ? 俺はろくに政治的な知識もなければ血筋も無い普通のハンターなんだぞ?」

「血筋なんて俺にだって無いし、知識なんて後から幾らでも身につけられるさ。それより大事なのは人を惹きつける魅力と意思を貫き通す精神力だ。戦争を終えてますます英雄視されてきているガラルド君はもはや大陸一の有名人であり、多くの人間から尊敬されて慕われている。そんな人間こそが王になるべきだろう。あっ、勿論リリス君が王女になるのもオッケーだよ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ、話が急すぎる……頭を整理させてくれ……というか俺とリリスの関係をサラっと茶化すんじゃねぇよ……」

 シンは俺に内緒でいきなり発表する事で断り辛い雰囲気を狙っているのではないか? と疑ってしまいそうだ。まぁ、例えそうだとしてもシンが第二のシンバードを任せたいと思っている気持ちは本当だろう。

 周りの出席者達も全員が笑顔を浮かべていて祝ってくれそうな雰囲気だ、ここはシンの申し出を受けるのが正しい形なのだろう。

 だけど、俺は了承の言葉を出せずにいた、それは王という仕事が嫌なのではなく、他にやりたいことがあるからだ。ディアトイルで拾われてから二十年以上の時を生きてきて、一番やりたいと思った事…………俺はそれを正直にシンに伝えた。

「悪いがその話、断らせてくれ。俺には他にやりたい事があるんだ」

「ガラルド君の表情を見て、そう言われる気がしたよ。やりたい事の詳細を聞いてもいいかい?」

「俺がやりたい事……それは……」

 俺は今までに関わった人達に視線を向けた後、横に並んで戦ってきたリリス達に視線を向けて言った。

「俺はこれからもずっと冒険がしたいんだ。リリス、サーシャ、グラッジ、そして各国の皆と関わる中で多くの街や景色を見てきて、そのどれもが俺にとっての宝物だ。そんな宝物をこれからも増やしていきたいんだ、大切な仲間達と共に」

「そうか……まぁ、ガラルド君らしいといえばらしいのかな。シンバード国王としては残念な返事だけど、ガラルド君の一友人としては納得の返事だよ。それに、ガラルド君の大切な仲間達もやる気満々のようだしね」

 そう言うとシンは視線を横にやって指をさした。すると、そこには俺の目を見て頷く、リリス、サーシャ、グラッジの姿があった。彼らにはこれから俺の旅について欲しいとお願いするつもりだったが、手間が省けたようだ。

 三人は俺の前まで歩いてくると、サーシャから順番に話し始める。

「ガラルド君の旅にサーシャもついていくよ。ちょうど行きたいと思っている場所もあるし、ね? グラッジ君?」

「そうですね、その話は長くなりそうですから祝勝会が終わった後に伝えましょうか。ガラルドさん、僕も貴方の旅について行かせてください。貴方と出会ってからの旅は驚きと感動の連続で本当に楽しかったですし、僕にとってガラルドさんは大きな目標でありライバルです。これからも切磋琢磨しましょう」

 そして、最後にリリスが俺の手を握り、想いを語る。

「ガラルドさんは私にとって愛すべき人であると同時に肩を並べて戦う仲間です。今まで私達はガラルドさんに助けられてばかりでした。だから、これからは恋人として、そして仲間として、二つの意味でガラルドさんを支えさせてください」

「みんな……ありがとう」

 俺は涙を必死に堪えながら皆に礼を伝えた。王としての務めは果たせなくなったけれど、それでも祝勝会に来てくれた皆が俺達に拍手を贈ってくれた。人数よりもずっと多く感じる拍手の雨は狭いギルド内で反響し合い、中々止まる事は無かった。




 暖かいエールを受け続けた俺達の祝勝会は最後にリリスの一言で一旦区切りを迎える事となった。

「というわけで私達は情勢が落ち着いたら旅に出ます。それまではシンバードで一生懸命働きつつ、ガラルドさんとの結婚式の準備も進めるつもりです……キャー! 遂に言っちゃいました! ですので、皆さん是非参加してくださいね!」

 まだ、一言も結婚式の相談なんてしていないのにリリスがとんでもないことを言い始めた。でもまぁ、それも悪くない。空気を読まずにシンの誘いを断ったのだからリリスの誘いぐらいは乗っておくことにしよう。一生大事にすると決めた相手なのだから。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

霊感頼みの貴族家末男、追放先で出会った大悪霊と領地運営で成り上がる

とんでもニャー太
ファンタジー
エイワス王国の四大貴族、ヴァンガード家の末子アリストンには特殊な能力があった。霊が見える力だ。しかし、この能力のせいで家族や周囲から疎まれ、孤独な日々を送っていた。 そんな中、アリストンの成人の儀が近づく。この儀式で彼の真価が問われ、家での立場が決まるのだ。必死に準備するアリストンだったが、結果は散々なものだった。「能力不足」の烙印を押され、辺境の領地ヴェイルミストへの追放が言い渡される。 絶望の淵に立たされたアリストンだが、祖母の励ましを胸に、新天地での再出発を決意する。しかし、ヴェイルミストで彼を待っていたのは、荒廃した領地と敵意に満ちた住民たちだった。 そんな中、アリストンは思いがけない協力者を得る。かつての王国の宰相の霊、ヴァルデマールだ。彼の助言を得ながら、アリストンは霊感能力を活かした独自の統治方法を模索し始める。果たして彼は、自身の能力を証明し、領地を再興できるのか――。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

処理中です...