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【第454話】祝勝会 その3
しおりを挟むシリウス達のいるテーブルから離れた俺達は時間的に最後の挨拶巡りとなるであろう、帝国の人間がいるテーブルへ向かった。
そこにはレック、トーマス、それと何故かパープルズの4人が座っているようだ。俺は死闘を共にくぐり抜けたレックと沢山話したいと思い、最初に話しかけることにした。
「よう、レック。沢山飲み食いしているか?」
「ああ、料理も酒も帝国とは違う良さがあって最高だよ。特に俺は庶民的な場所で庶民的な食事と共に祝いたいとリクエストしたからな。聞き入れてくれたシン国王には感謝だよ」
「庶民を連呼しないでくれないか皇族様よぉ~。まぁいいや、それより、何でレックは地味な祝勝会を望んだんだ? 俺は豪華な帝国で豪華な料理と豪華なおもてなしを楽しみたかったぞ」
「お前も豪華を連呼してるじゃないか……。俺が地味な祝勝会を望んだのはシンバード組の一体感を味わいたかったというのもあるが、それ以上に……いや、これはまた次の機会に話すとするか」
「なんだよ勿体ぶりやがって、教えてくれよ」
「まぁ、待ってくれ。ガラルドとはもっと落ち着いた場所と時期に帝国の未来について話したいことがあるんだ。その時に地味な祝勝会を望んだ理由も話すと約束するよ。それより、他の人達とも話してやってくれ。ガラルドと話をしたい奴は大勢いるんだからな」
レックは無理やり話を終えると、トーマスの肩を軽く叩いて別の場所へ行ってしまった。レックとはもっと色々話したかったのだが、次の機会でもいいだろう。
トーマスは俺に深くお辞儀をすると、酒の入ったグラスを持って、笑顔で語り掛けてきた。
「ガラルド殿、此度の戦い本当にお疲れさまでした。貴方がいなければレック様は……いや、帝国そのものが暗雲に閉ざされていたことでしょう。幾ら感謝してもしきれませぬ」
「それを言ったらベラン将軍にやられそうになっていた俺達の元へ駆けつけてくれたトーマス殿こそ俺にとっての救世主だよ。あの時は本当に助かったよ。その後、帝国は上手くいっているのかな?」
「全てが上手くいっている訳ではありませんが、レック様が主軸となり何とか立て直していると思います。レック様は心を鬼にして『バイオル殿下とミニオス殿下とベラン殿を国賊として捕えて』くださりました。ですので、お三方の派閥の人間を除けば全ての民衆が穏やかに暮らせていると思います」
「派閥か……まぁ、帝国リングウォルドはシンバードよりもずっと大国だし、一筋縄ではいかないよな。それでもトーマス殿とレックがいればきっと何とかなると俺は信じているけどな」
「暖かいお言葉感謝致します。これからの帝国についてはレック様とも色々話し合っていまして、近々新しい取り組みをしようかと考えています。話せる時がきましたら伝えさせてもらいますね」
新しい取り組みとは一体何なのだろうか? それがレックの言っていた『帝国の未来』ってやつと関係しているのかもしれない。
早く教えてほしいところだが、レックが後で教えると言っていたし、トーマスに追及するのはやめておこう。俺はその後も会話を続けていると、トーマスが視線を横にいるパープルズに移し、今後についての話を始めた。
「そういえば、ガラルド殿にお伝えしておかなければならないことがありました。それはパープルズの4人を帝国軍の客員師範としてお迎えしたいと思っているのです」
「きゃくいん……しはん? えっ? 客員師範? ど、どういうことだ? 説明してくれフレイム!」
突然の事で驚いてしまい、間抜けな声色で二度呟いた俺はフレイムに尋ねた。すると、フレイムは頭を掻きながら照れくさそうに語り始める。
「実は帝国だけじゃなくてイグノーラでも同じように声を掛けられていてね。僕達はガラルド君達には遠く及ばないし色堅も未完成な出来だけど、それでも多くの戦いと修行を共にしてきた仲間であり、マジックパサーみたいなレア技能も身に付けられた身だ。だから、得てきたものを色々なところへ広めるべきだとシンさんが言ってくれてね」
「そうだったのか。確かに俺達は何度もパープルズに助けられてきたからな。シンがそう言うのも納得だ」
「それに、シンさんは僧院で修行や慈善活動をすることだけが償いではないし、君達4人は見違えるほどに変わったから、これからは得た力で世に貢献するべきだと言ってくれたんだ。だから、僕達はあっちこっちに移動するハードでやりがいのある仕事……いや償いに務めるつもりだよ」
「そうか、パープルズも着々と進んでいるんだな。お前達なら絶対に上手くやれるよ、頑張ってくれ!」
俺達はパープルズの4人とそれぞれ握手を交わし、互いの健闘を祈り合った。
※
これで祝勝会に来てくれた関わりの深い人達と一通り話す事ができただろう。本当は女神のフローラやウンディーネ、それにフェアスケールのラファエル等、他にも話したい人はいたけれど、皆それぞれ来られなかった事情があるから仕方がない。
特に政治的に中立なフェアスケールの人間は大陸会議ならともかく、祝勝会に出席するのは立場上難しい筈だ。
ぐるりとテーブルを回ってきた俺達は最後にシンとフィルのいる一段高い場所にあるテーブルへ行き、俺はシンの横に座った。すると、シンは注目を集める為に大きく手を叩き、大事な報告を始めた。
「え~、皆さん。お食事を楽しんでいるところすみません。ここで、一つシンバードから大きな発表をさせて頂きたい」
=======あとがき=======
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