見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

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【第199話】皇帝アーサーの狙い

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「レナさんの次は私がお話しますね。身分を偽って皇帝の側近に話をつけた後、中央街にあるリングウォルド城に入った私は応接室に案内されました」

 ヒノミさんは皇帝の第七夫人候補として潜入した時の話をはじめた。要約すると皇帝の弱点である『女性好き』を突く色仕掛けみたいな作戦だからヒノミさんがイヤらしいことをされていないか凄く心配だ。

 ヒノミさんは机の上にざっくりと書かれたリングウォルド城周辺の地図を広げると、それを指差しながら説明してくれた。

「応接室には私の他にも十人程の女性と面接官のような人達、そして皇帝アーサーが座っていました。どうやら大勢の候補の中から第七夫人を選びたかったようで、そこからは各自皇帝へ自分を売り込み、質疑応答を繰り返しました」

「そんなにいたのか! あまりモテた事の無い俺からするとちょっと腹が立ってくるな。で、ヒノミさんは女性たちとの争いに勝ったわけだな」

「……実は私が優秀だったからわけではなくて、他の女性たちが勝手に潰し合ってくれたんですよね……」

「潰し合うってどういうことだ?」

「面接の前後で女性たちは全員控室のような場所で待機していたのですが、そこで口汚く罵ったり、圧力をかけたりして口論していたんです。第七とはいえ皇帝の夫人になれば一生優雅に暮らせますからね。で、私は口を開かずに罵詈雑言を受け続けていたんですけど、実は控室の様子を皇帝と側近たちに見られていたらしいのです、これは後から分かった話ですけどね。ですから悪口を言わなかった私だけが戦わずして勝ち残ったわけなんです」

「潰し合う女性たちに覗き見をする皇帝か……地獄みたいな空間だな……で、勝ち残った後はどういう流れになったんだ?」

 俺が問いかけるとヒノミさんは皇帝と側近に連れられて案内されたルートを教えてくれた。レックの前で城の内部と周辺の事を教えてもらうのは妙な感じだったが、レックは嫌な顔もしなければ止めもせず、ヒノミさんの解説を聞いていた。

 そして、ヒノミさんは俺が個人的にもっとも気になっていた部分の話を始めた。

「色々案内された後は目をギラギラさせた皇帝に私室へ案内されまして……その……いやらしい事をされそうになったのですけど、女性には色々と準備と覚悟が必要なので結婚してからにしてほしいとお願いしたら了承してくれました。恥ずかしい話、私は今まで生きてきて恋人が出来た事なんてないので、ボロを出さないか心配でしたが何とかなりました……」

 何でだろう、恋人が出来た事がないと恥ずかしそうに語るヒノミさんが凄く可愛くてドキドキする。だけど、ニヤついてしまった俺に気付いたリリスが鷹のように鋭い眼光をこちらに向けているから自重しなければ……俺はヒノミさんに労いの言葉をかける。

「ヒノミさんがイヤらしいことをされてなくてホントにホントによかったぜ……。皇帝はそのあたりの引き際はちゃんと持っているんだな。よかったな、レック」

「やめろガラルド……身内のそういう話はかなり効くんだ……それよりもヒノミさん、話を続けてくれ」

「分かりました。私の事をかなり気に入ってくれた皇帝は数日間私とデート……と言えばいいんでしょうか? とにかく色々とお出かけなどを楽しんでいたようで益々心を開いてくれました。おまけにシンバード領の嘘の情報も提供して、私が帝国の思想を崇拝していると演技したので尚更早く信頼を勝ち取れました。そのおかげで第一夫人と一部側近にしか教えていない情報をいくつか教えてくれました。まず一つ目は旧ドライアドの民が現在どこで何をしているかです、地図のここを見てください」

 そう言うとヒノミさんは城の少し北にある植物園を指差した。地図で見る限りそれなりに面積の大きい植物園の中を三か所ほど指差したヒノミさんは驚愕の事実を教えてくれた。

「今、指差した三か所には地下への隠し階段がありまして、その中の一つに私も案内されました。かなり長い階段を降り続けると、そこにはとんでもない広さの洞窟……いや、空間が広がっていました。そして、中心にはコメットサークル領エナジーストーンにあったのと同じようなマナストーン・コアがあったのです。そこでは旧ドライアドの民を含む沢山の人間がほぼ奴隷に近い状態で厳しい労働を課せられていました」

 まさか帝国の地下にマナストーン・コアがあったとは……それに、旧ドライアドの民が『厳しい労働を課せられている』という噂話も真実だったとは……驚きの連続だ。

 だが、俺以上にレックはもっと驚いている事だろう。実の父親から大事な情報を伏せられていた事もそうだし、父親が兵器だけではなく労働でも非人道的な指揮を執っていたのだから、その辛さは俺には想像しきれない。

 レックには申し訳ないが、ここからは更に情報を掘り下げなければならないところだ。俺は地下で得た情報が他にあるかヒノミさんに尋ねた。

「地下空間について詳しく分かった事を全て教えてくれヒノミさん」

「地下空間の表面的な部分しか見られていませんが皇帝曰く、この場所で魔力砲やサクリファイスソードなどの兵器を作り、毒薬なども製造しているらしいです。マナストーン・コアの光があれば大量に働かせることが出来ますし、毒薬に必要な植物の栽培も効率よく進むからとのことです。正直あの空間にいると吐き気を催しました……」

 聞いているだけの俺ですら気分が悪くなるのだから実際に目にしてきたヒノミさんの辛さは半端じゃないだろう。

 皇帝はわざわざ他国の人間を拉致に近い方法で引っ張ってきてまで毒薬や兵器の類を作っている理由は、他国と戦争をする為なのだろうか? だが、帝国は既に大陸で一番大きな国なのだからそこまで慌てて戦力増強を図らなくてもいい気がするのだが。

 もしかしたら、魔獣活性化をどうにかする為に頑張っているのかもしれないとも思えるが、人類と魔獣の戦いと考えた場合、村や町を潰して体を壊すレベルまで兵器・毒薬製造に酷使するのは結局総合的に見て損するような気もする。

 そもそも『拉致した人間たちを管理するコスト』と『魔力砲などを使用して一時的に強くなっても後々反動があるリスク』という二つの事情を踏まえた上でコスト計算をしたら、それもまた悪手だと思える。

 自分の中でまだ考えが上手く纏まらないまま、ヒノミさんが「次はエンドについて分かったことをお話します」と話を展開した。


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