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四章 先生の恋にもおにぎりを ~胃袋を掴む、カルボナーラ風ベーコンエッグ~

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「まず、ベーコンを炒めていきます」

 ベーコンを入れると同時に、油が跳ねた。
 そんなの慣れている隼斗君は気にしていない。
 こんがりと焼き目がつくまで、隼斗君は鼻歌混じりで炒めている。
 仕事がない私は、指示があるまで隣で見守ることにした。

「よし、ベーコンに火が通ってきたら、六原さんが作ったソースを入れるよ! バターも忘れずにね」

 あ、これ……ソースなんだ。
 バターを入れてから、ボウルの中身をフライパンの上に流し込んだ。
 薄黄色の液体がグツグツするまで、火を通していくみたいだ。

「ちょうど良く火が通ったら、一旦火を止めて……」

 あ、火を止めた。
 次は何をするんだろう……。
 田尻先生も声を出さずに、一生懸命にその作業を見ていた。

「ここで米を投入します! そして調味料も……」

 お父さんが持ってきてくれたたくさんの調味料も、リズムよく入れていく。
 えーと……塩コショウに、あれは……ガーリックパウダー? 小瓶のラベルにそう書かれている。
 どちらも目分量で入れた。
 まだまだ出てくる調味料。
 次に入れたのは……コンソメスープの素だ。
 粒のようなコンソメスープの素を、これもまた目分量でシャッシャッと追加。
 カルボナーラの素となるであろう卵の液状に、だんだんと火が入り、お米と調味料が混ざっていく。

「うわぁ、すごい美味しそう……」

 隼斗君の隣で、心の声が漏れてしまった。
 それを聞いた隼斗君はこっちを見てニコッと微笑む。
 炒める用の木ベラでチャーハンを作るように混ぜ炒めていった。
 これはカルボナーラパスタならぬ、カルボナーラチャーハン? みたいな感じか。
 ベーコンがカリカリして、美味しそう……。

「最後に醤油で味を調整して……よし、完璧だ!」

 火を止めて、ビニール手袋をつけた隼斗君。
 お、いよいよ握るのか。

「超絶熱いから、六原さんは触らないで!」
「わ、わかった! 私は何をすれば……」
「じゃあ握ったおにぎりの上から、ブラックペッパーを少し振りかけてほしい」
「ブラックペッパーね! わかった!」

 キッチンの見やすい位置に置いてあったブラックペッパーを手にする。
 隼斗君はフライパンの上のカルボナーラチャーハンを手の上にのせて、「アチッアチッ」と声に出しながら握っていった。
 田尻先生が「やけどしないでね」と忠告する。
 隼斗君は「余裕だよ!」と笑顔で答えた。
 一つ、また一つと握られていく。
 今日は三つ分みたいだ。隼斗君と田尻先生と……私の分かな?

 ブラックペッパーを上からパラパラとかけていって……正方形の綺麗な白い皿に、三つのおにぎりが並ぶ。

「カルボナーラ風ベーコンエッグのおにぎり、いっちょあがり!」
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