転校生はおにぎり王子 〜恋の悩みもいっちょあがり!~

成木沢 遥

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四章 先生の恋にもおにぎりを ~胃袋を掴む、カルボナーラ風ベーコンエッグ~

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「六原さんもキッチン入って!」

 隼斗君だけしかいないキッチンにお邪魔させてもらう。
 普通はお父さんの職場でもあるキッチンに、部外者の私が立っていいはずがないと思うけど……それほど隼斗君はお父さんに信頼されているんだな。
 お寿司を食べている最中の田尻先生も、その光景はちょっと心配そうだ。

「二人だけでキッチンに入って大丈夫なの?」
「大丈夫! 俺毎日キッチン立ってるから!」

 田尻先生は「まぁ、毎日なら大丈夫か」と言ってホッとした。
 田尻先生はもうほとんどのお寿司を食べ終わっている。
 あとはイクラ軍艦が一貫だけ。
 お店の奥から戻ってきたお父さんは隼斗君に耳元で「今日は何使うんだ?」と聞いた。

「えーとね……ベーコンと卵と、それから二種類のチーズと……」
「ああ、あれを作るんだな。いいよ、二階から食材取ってくるから、隼斗たちは準備していなさい」

 お父さんが率先して隼斗君が使う食材を取ってきてくれる。
 食材を言っただけで、何を作るかわかるんだ……さすがお父さん。
 隼斗君はカウンター内にあった炊飯器の中のお米をチェックした。

「よし、まだ白米残ってて良かった」

 ラスト一貫も食べ終わった田尻先生は「こんな高級なお寿司、二度と食べられないかもなぁ」とにこやかに呟く。
 私もこのお寿司を食べた時、同じ気持ちになった気がする。
 みそ汁はまだ残してあるみたい。
 隼斗君のおにぎりと食べるのね。

「おい、隼斗。こんなんでいいか?」
「ありがとう父さん! 完璧だよ!」
「オッケー、じゃあ父さんは裏にいるからな。何かあったら呼びなさい」
「はーい!」

 隼斗君、これからおにぎり作りに入るみたいだ。
 田尻先生も「よく見ておかないと」と言って、立ちながらキッチンの様子を見始める。

「まずはベーコンとスライスチーズを刻みます」

 まな板の上で、ベーコンとスライスチーズを切り始める隼斗君。
 隼斗君、包丁の使い方にも慣れているんだ……最初は心配そうにしていた田尻先生も、すぐに安心できていた。

「六原さんは、そこにあるものを全部混ぜておいて!」
「あ、これね! わかった!」

 よし、私にも仕事がきた。
 えーと、指差された場所にあったのは……卵と牛乳と、砂糖か……。
 牛乳と砂糖はどれくらい入れればいいんだろう?

「牛乳は大さじ一杯半くらい、砂糖はひとつまみでいいよ!」

 あ、計量スプーンも用意してくれているんだ。さすがお父さん!
 銀色のボウルの中に牛乳と砂糖、そして卵を一つ割って混ぜていった。
 途中で隼斗君が細かく刻まれたスライスチーズを追加する。

「よし! 六原さん、ありがとう! 今日はこれを使って、カルボナーラ風ベーコンエッグおにぎりを作っていくよ!」

 うわ、聞いただけで美味しそう。
 田尻先生は目を丸くさせながら「おしゃれなおにぎりねぇ」という声を漏らした。

 隼斗君はフライパンを取り出して、サラダ油を投入した。
 次は炒めていくのね。
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