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三章 クラスメイトは幼馴染 ~勇気が出る、鮭ときのこのバター焼きおにぎり~

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「おにぎりの動画見たよ! 送ってくれてありがとう!」

 終わってからすぐにケイタ君に動画付きでメールした。
 レシピや補足は文章で付け足して、そのメールを見れば誰でも作れるような内容にしてある。
 すぐに『早速作ってみる!』という返信があって、仕事は果たしたところ。

 次の日、ケイタ君は教室に入ってからすぐに私のもとにきて、直接感謝の言葉を伝えてくれた。

「ううん! 上手くいけばいいね!」

 ハンナちゃんは教室の隅っこで、友達とお話に夢中だ。
 あれ? でも、友達と話しているハンナちゃん、どこか元気がなさそう……。
 やっぱり、家族のことが気になってるんだね。
 両親が仲直りするまで、さすがに心配だよね……。

 今度は隼斗君を見てみる。
 昨日の作業で疲れているのか、机に突っ伏して寝ている。
 ケイタ君は私に「頑張るよ」と小声で言った。

「試合はいつなの?」
「次の日曜日。ハンナの家族も誘ってある」
「そうなんだ! 仕事が早いね」
「まあね……だから、ちゃんと美味しいおにぎりを作らないとな」

 あとはケイタ君が、あのメニュー通りに作ることができれば大成功だろう。
 次の日曜日、私も隼斗君と一緒に応援に行かないと……。

 ハンナちゃんの家族のために、こんなに頑張れるなんて……人を好きになるって、こういうことなんだ……。
 その人のためなら、一生懸命になれる。
 その人が困っているなら、助けてあげたい。

 あれ? それって、私が隼斗君を想う気持ちと一緒だ……。
 隼斗君の夢のために、私にできることはしてあげたい。
 だって隼斗君が楽しそうにおにぎりを作っているところを見ると、私まで嬉しくなるから……。

「あのさ、サヤちゃん」

 ケイタ君は自分の席に戻る前に、また話し出した。
 何だろ……? 話すかどうか躊躇っているのか、俯きながら自信なさげに聞いてきた。
 すぐに「どうしたの?」と聞き返す?

「いや、サヤちゃんは……隼斗君のことが好きなのかなって」
「……え?」
「違った、かな?」

 顔がカーっと熱くなる。
 いきなりそんな質問してくるなんて、予想外だった。
 慌てて否定すると図星だと思われちゃう……冷静に首を横に振る。

「い、いや……別に」

 ケイタ君は残念そうに「そうなんだ」と言った。

「どうしてケイタ君が残念そうなの?」

 気になったので、どうしてその反応なのか聞いてみる。
 ケイタ君は笑いながら答えてくれた。

「もしサヤちゃんが隼斗君のこと好きなら、今度は僕が応援してあげたいなって! でも余計なお世話だったね!」

 ケイタ君はそのまま笑いながら席に戻っていった。
 優しさを返してくれようとしたんだ。
 私は苦笑いのままイスに座った。

 私ケイタ君に、嘘ついちゃったな……。
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