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三章 クラスメイトは幼馴染 ~勇気が出る、鮭ときのこのバター焼きおにぎり~

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「どう、六原さん? ケイタ君、喜んでくれるかな?」
「もちろん! この動画を見ながらだったら、私でも作れそうだし」

 特に難しい工程はないと思うし、味も美味しい。
 これならハンナちゃんの家族も喜んでくれると思うし、何より驚いてくれると思う。

「うん、今回も美味しいわね。さすが隼斗」

 隼斗君の食べかけの焼きおにぎりをひと口食べたお母さんは、モグモグしながら隼斗君の頭を撫でた。
 褒められた隼斗君は嬉しそうにニッコリと笑った。

「でしょ! ばあちゃんのおにぎりに近づけたかなぁ?」
「そうね。着々と近づいているわよ」
「やったー! 六原さん、これからもどんどんいろんなおにぎり作っていくから、よろしくね!」

 私は小さい声で「うん……」と答えた。頭の中に『転校』の文字が浮かんだから、つい弱めの返事になってしまった。

「ちょっと隼斗、サヤちゃんを無理矢理巻き込まないの! サヤちゃんも、嫌だったら断っていいんだからね?」
「い、いいえ! 嫌だなんて! 私も楽しいので!」

 あ、心配かけちゃったみたい。
 そんなつもりはないのに、薄い反応で返しちゃったから、気を使わせてしまった……。
 隼斗君は真剣な顔つきに変わっている。

「六原さん、嫌だったら言ってね……」
「全然! 嫌じゃないよ!」
「そっか。俺は……六原さんとだったら、日本一のおにぎりが作れると思うんだ……だから、できれば……一緒に目指していきたい……」

 いつになく真剣な目で話す隼斗君。
 まさかこんな展開になってしまうなんて……。
 私も……できるならずっと、こうやって隼斗君と日本一のおにぎりを目指していきたいよ……。

 実は、転校するかもしれないんだ……そう言ってしまおうかと思った。
 今のうちに言っておいた方が、隼斗君に変な期待を持たせないで済むし……何より私がいなくなった時のショックも少なくすることができる。
 それを言ったら、私も楽だろう……。

 でも、言えない。
 言ったら、せっかく始まったこの活動が、なくなってしまうから。
 できるだけ長く、隼斗君と一緒にいたい。
 できるだけたくさん、隼斗君とおにぎりを作っていきたい。

「私も、隼斗君とたくさんのおにぎりを作りたい!」

 精いっぱいの笑顔を作って、隼斗君に向かって言った。
 隼斗君はホッと息を吐いて「良かった」と呟く。

 というか……まだ転校が決まったわけじゃない。
 余計なことは考えないで……今は隼斗君のおにぎりを通して、たくさんの人を救えればいい……。
 隼斗君のお母さんの方をチラッと見てみると、真っ直ぐな瞳と目が合った。
 お母さんは私に向けてニコッと笑ってくれて、一度頷いてくれた。

 お母さん、任せて……。
 隼斗君のおにぎり作り、私がちゃんとサポートしますので……。
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