たくさんの想いの先に

来栖瑠樺

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幼なじみの両親

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 「こ、こんにちは。モンフォール伯爵。伯爵夫人」
ドレスの裾を軽く持ち上げ会釈をする。
私の行動にアレクサンドルの両親は呆然としていた。
アレクサンドルの両親とも交流があったようだ。その両親から会いたいと言われた為、屋敷を訪れたエントランスで出迎えてくれた夫妻に挨拶したら、この反応だ。
「かしこまらなくて大丈夫だ」
アレクサンドルが近づき肩に手を置く。
「アレクサンドルの言う通りだ。気を遣わなくていい」
「そうよ。ここで突っ立ってるよりも場所を変えましょう」
そう言って客間に移動した。

 「どう?懐かしいかしら?イザベラが遊びに来た時、ここにもよく来てたのよ」
「・・・えっと、懐かしいと言うより初めて来た感覚ではないです」
「・・・そうか。俺達の事はどうだ?」
どこか期待を込められた目が夫妻から向けられる。
「伯爵夫妻の事は・・・覚えてなくて緊張しますし、接し方が分かりません。ごめんなさい」
一瞬、顔に影があるのを見逃さなかった。
「いや、いいんだ。いきなり聞いて悪かった。気軽に接してくれると嬉しい」
「そうね。久しぶりにイザベラに会えて嬉しいわ。後で、アレクサンドルに屋敷を案内してもらうといいわ」
「はい」
それからは、初めて会った事やお互いの両親も一緒に出かけた事の話を聞いた。
最初は緊張してたが、段々と緊張も解けていく。
 イザベラの事は、アレクサンドルからよく聞いてるとも言われた。
「私の事を、どうゆうふうに話してるの?」
アレクサンドルに問いかけると、
「どうゆうふうにって、出来事を話しただけだ」
「あら?他にも言ってるのに」
動揺してるアレクサンドルに追い打ちをかける、アレクサンドルの母。
アレクサンドルの両親は、息子の反応を楽しんでいるようだ。
「聞きたいです」
両親に尋ねると、横から邪魔が入った。
「イザベラ、屋敷を案内する」
アレクサンドルに手を握られ客間を出ようとする。
後ろからは笑い声がする聞こえた。


***
 久しぶりに会うイザベラに言葉がすぐに出なかった。
それはハリソンも同じ。
私達の事は、イザベラの両親やアレクサンドルから聞いているだろうし、記憶がなくても、少しは穏やかに会えると思っていた。
その期待は簡単に崩された。
不安そうにして、かしこまって、失礼があってはいけないとでも言うように挨拶をされた。
家族ぐるみの付き合いだし、以前のイザベラと違う。
たった一言なのに壁を感じる。
でも仕方がない。以前から仲が良いと言われても、接し方が分からないだろうし、不安になるのは当然だ。
アレクサンドルが少し羨ましい。お互いの気持ちは私達の気持ちとは異なるけど、記憶がないと初めて分かった時から、アレクサンドルには、強い想いがあり壁がない。

 アレクサンドルとイザベラが1番不安のはず。息子からは弱音を聞いた事がない。
いつ戻るか分からない記憶に対しての奇跡を信じている。
記憶が一部戻ったと聞いているけど、自分の事ではない。彼の心が壊れないかと心配になる。
『俺とイザベラは一緒に幸せになる。俺まで何か合うわけにはいかないだろ』
と言ったのを聞いた事ある。
それは、彼自身に言い聞かせてるようにも聞こえた。

 アレクサンドルからの言葉や近くにいると安心するようで、表情が和らいでいる。
信頼されてる事が伝わる。
 客間に移動して、部屋の懐かしさを聞いた流れでハリソンの「俺達の事はどうだ?」の返事は考えていた通りだ。
挙句に謝らせてしまった。

 そういえば、ルナからの手紙に書いてあった。最初に比べたら減ったけど『ごめんなさい』を言うと。記憶がなくて話が付いていけなかったり、思い出の品を見せても分からないと謝る。自分を責めてしまう。イザベラは悪くないと言い続けて、謝る事が減ってきたと。
イザベラは、毎日心の中に不安な気持ちがあるのだろう。大切な人の事を誰も思い出せていない。
それでも、何とか過ごせてるのは周囲の人達の優しさとアレクサンドルのおかげだろう。
 イザベラがアレクサンドルと部屋を出ていくと、ハリソンが声をかけてきた。
「オリビア。イザベラは大丈夫だろうか」
その瞳は揺れ、いつもの強気なハリソンはいない。
「大丈夫よ。信じましょう、イザベラとアレクサンドルを。奇跡は起こるわ」
ハリソンの手を握り伝えると、目が合い、いつもと同じ彼に戻っている。
「そうだな。あの2人なら大丈夫だ」
イザベラ。1日でも早く記憶が戻る事を。
イザベラとアレクサンドルが、穏やかに幸せに笑って過ごす日が1日でも早くくる事を願ってるわ。
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