たくさんの想いの先に

来栖瑠樺

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打ち明け

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 この間のお茶会からエミリーとの文通が始まった。
最近のを社交界や流行りの物などが書いてある。
私は流行りの物は知っているが、最先端と言う程身につけていない。
着る機会があればいいくらいの程度だ。
それを知ったエミリーが私に似合う物があれば、贈り物をしてくる。
それを身につけエミリーの屋敷を訪れたら、喜んでくれる。

 ある日、エミリーの屋敷に遊びに行くと、様子が変だった。
モジモジしている。どうしたのだろう。
「エミリー」
「は、はい!」
声をかければ、上ずった声が返ってきた。「様子が変だけど、どうしたの?」
すると、エミリーは口を開け言いかけようとするが、また閉じるのを繰り返してる。
「言いたくないなら言わなくていいわ」
用意された紅茶に視線を移し、一口飲む。
 「・・・オペラ一緒に観に行きませんか?」
エミリーを見ると不安げな顔をしている。
「それで態度が変だったの?」 
「はい…イザベラ様と一緒に観に行きたいのですが…嫌がらないかなとか考えてしまって」
「どうして嫌がるの?」 
「え?」
エミリーは驚いた顔をしている。
「私は友人として、あなたの事が好きよ。嫌なら、文通を続けたり、用事がないのに、あなたと何度も会う事はないわ。これでも素を見せてるつもりよ。分かりづらかったかしらね」
「イザベラ様」 
「ちょ、ちょっと、どうして泣いてるの?!」
今度は泣き出してしまい、慌ててハンカチを渡す。
ハンカチを受け取り、エミリーは言う。
「これは嬉し涙です。あの日のお茶会からイザベラ様と距離が近づいたと思ってます。ただ、どこまで許してもらえるか。そう思ったら、一緒にお出かけを言うのが怖くなってしまって。それで、あのような態度になってしまったのです」
それを聞いた私は溜め息をついた。その態度を見たエミリーが緊張してしてしまった。
「考えすぎよ。エミリー。最初からズカズカ踏み込まれたら、私も身構えてしまう。でも、あなたは違うでしょう。不安がることないのよ。あなたと一緒にオペラ観に行くの楽しみだわ」
笑って言うと、エミリーは表情が明るくなる。
「それでは、オペラ観に行く日にお迎えに行きます。私も楽しみです」
その後は、他愛のない話をしていた。
エミリーと過ごす日は今の私には、良い息抜きだ。
暖かい紅茶を飲みながら思った。


 「最近エミリー嬢と会う日が多いな」
「そうね。前は今ほど会う事がなかったのに」
エミリーの屋敷から帰ると、両親に言われた。
2人とも不思議そうな顔をしている。
それは、そうだろう。
今まで嫌悪感なく会う事ができたのは、アレクサンドルだけだったから。
「友人なの」
「「友人?」」
「エミリーは前と変わったわ。以前の彼女は、あまり関わりたくない人だった。でも、今の彼女は優しくて、自分より下の人を見下すようなこともない」
「それは随分と変わったわね」 
エミリーの事は、前の印象から知っいてる両親から見れば意外な変わりようだろう。
「エミリーから誘われて、今度一緒にオペラを観に行くの」
「そうか。楽しみだな。イザベラがアレクサンドル以外に友人ができて・・・」
そこまで言いかけて父は黙ってしまった。
アレクサンドルが皇太子殿下に仕えてから、あまり口に出さなかった。
避けた方がいいだろうと思ったのだろう。
「ええ。アレクサンドル以外にも友人ができたわ。エミリーとオペラを観に行くのを楽しみにしてるの。そろそろ部屋に戻るわね」 
両親に笑顔を向け、自分の部屋に向かった。


 「イザベラ様」
「エミリー、迎えありがとう」
「俺達からも礼を言う。エミリー嬢」
「イザベラと仲良くしてくれて、ありがとう」 
エントランスでエミリーと合流した後、上から声が聞こえ階段を下りてきた人物。
「シャロン公爵と公爵夫人!ご無沙汰してます。あの、イザベラ様と今からオペラを観に行ってもいいでしょうか?」
エミリーは私の両親が来るとは思わず、固くなっている。
「そんなにかしこまらなくても大丈夫だ。イザベラと是非出かけてきてくれ」
「そうよ。気をつけていってきてね」
私の両親に緊張しているようだが、表情は少し和らいだようだ。
両親にはすでに、私から言ってあるから大丈夫だ。

 場が和やかになってるところに、相応しくない声が聞こえた。
「これは、また皆さん勢揃いで」
全員が声の方に視線を向けると、ライリーが立っていた。
背中がゾクッとし冷やし汗が流れる。
「イザベラに会いに来たのですが、何かあったのですか?」
エントランスに集合している事が不思議なんだろう。
「イザベラ様は、今から私とお出かけするんです」
ライリーの視線が、エミリーに向き睨んでいる。
エミリーは、そんな目にも屈せず、視線を逸らさない。
「・・・確かエミリー伯爵令嬢だよね。悪いけど別日にしてくれるかな。最近イザベラが君と会ってるだろう。今まで譲ったし、もう十分だろう。今後は被ったら僕に譲って」
「譲りません。今日も前から約束してたんです。それに、イザベラ様とあなたの噂は、デタラメなのに、これ以上変になっては困ります」
「デタラメだと?事実なのに何を言ってるのかな。それに君は僕より身分が下だよね。さっきから無礼だ。君の家を潰すなんて簡単だから、発言と態度を弁え」
ライリーの言葉の端々から苛立ちを感じる。
この場の温度が段々と下がる中、口を開いた。
「エミリーやエミリーの家に何かするのも許しません!!」
「イザベラ?どうしたんだい?頭の悪い娘と絡んでいたから疲れてるのかな」
「エミリーは私の友人です。彼女の家に何かあれば悲しいです」
「・・・」
「この際言わせてもらいます。私は、あなたが大嫌いです。もう会いに来ないで下さい!私の大事な人達に危害を加える事も許しません。たとえ、あなたがどんな立場の人だろうとも」
私の手はガクガクと震えている。そんな時、片手を握られた。握ってくれてるのはエミリーだ。
「ライリー、イザベラとエミリーの言葉を聞いただろう」
父がライリーに話しかける。
「聞きましたよ。じつに馬鹿げてる。今日は、それぞれ頭を冷やしましょう」
帰ろうとしたライリーを父が引き留める。
「ライリー。今後はシャロン家は出禁。イザベラとエミリーに会うな。それと先程イザベラが言った事を実行するならシャロン家は許さない」
「私も同意見です」
両親は、この家の当主夫妻らしく堂々としている。
ライリーは、眉間に皺を寄せ緑色の目が鋭く光る。
「・・・・・シャロン公爵、公爵夫人。発言を撤回するなら今です」
「撤回する気はない」
「そうですか。残念です。これだけは言わせてもらいます。後悔しても遅いと言う事を」
そう言ってライリーは帰った。

 ライリーの姿が見えなくなると、床に膝をつき
「ハア・・ハア・・・ハア」
過呼吸が起きる。
「「イザベラ!」」
「イザベラ様!」
皆が私に近づき、エミリーは背中をさすってくれる。
「・・・だい・・・じょうぶ」
「大丈夫じゃないでしょう!エミリー嬢、悪いけどオペラは別日でいいかしら」
「はい。分かりました。イザベラ様、ご両親には体調の事を言うべきです!」
その言葉に首を震る。
「イザベラ様の気持ちも分かりますが、言わないなら私から伝えます」
「もう・・さっきの・・・男とは・・会う事が・・ほとんどないから・・・言わなくていいのよ」
「でも」 
「イザベラが言わないならならエミリー嬢に聞く。まず部屋に行き休みなさい」 
「さあ、イザベラ行きましょう」
母の手を借り、自分の部屋に戻った。

 体調が落ち着くと、早速聞かれた。
「体調・・・何を隠している」
「・・・」 
私は、ベッドから上半身だけ起こす。
父からの質問に黙ったまま、左手の上に右手をのせて握りしめる。
部屋には、両親とエミリーが近くに座っている。
「イザベラ」
母が催促するように話しかけるが、私は口を開かない。
「イザベラ様。心配をかけさせないように、今まで誰にも言わなかった気持ちは分かります。私が見たのは偶然ですが、ご両親には言うべきです」
エミリーの言葉に両親の顔を見る。
心配そうに見てて、母は少し涙目になっている。
・・・そんな顔をさせたいわけじゃない。


 私は深呼吸して話し出した。
「話せば長くなるし複雑な話なの。エミリーも知らない事が含まれてるわ。自分でも、何故そうなってるのか分からないところがあるし、信じるかどうかは皆に任せるわ」
そう言って、自分とライリーが転生であること。転生前の渡辺真奈と岡本翔平とのやりとり。転生前の渡辺真奈を殺したのが岡本翔平であること。ライリーが転生前と同じく自分に恋情を抱いていること。ライリーと会った後は体調が悪くなることを話した。

 皆は黙って聞いてくれたが、驚いていて言葉が出せずにいる。
私も逆の立場ならそうなる。
どう受け止められるだろうか。
「辛かっただろう。父親なのに、気づいてやれずにすまない」
「それは母も同じよ。あなたの心に傷を増やしてしまったわね」
「イザベラ様。この世界で、今度こそ幸せになりましょう」
両親は申し訳なさそうにしており、エミリーは涙目で手を握ってくれる。
「皆、私の話を信じてくれるの?変な話だとは思わないの?」
私の問いかけに全員が頷いた。
「娘の話を疑うわけないだろう」
「そうよ。あなたの事を今までずっと見てきたのですから」
「聞いた時は驚きましたが、今までの事を思えば頷けます」
それぞれの言葉を聞いて、目から涙が溢れ出した。
 本当は、自分の中で隠しているのが辛かったのかもしれない。
でも、言い出すには時間がかかった。
皆の優しさに触れ、我慢してた分が涙に変わったのだろう。
「ここにいる皆は味方だ」
その言葉が、さらに心に沁みた。
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