たくさんの想いの先に

来栖瑠樺

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噂話

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 「久しぶりのお茶会ですね」
「また皆さんと会えるのが嬉しいです」 
「皆さん社交界とかで忙しいですからね」
久しぶりに開催するお茶会で令嬢達が、再会を喜んでいる。
「クレア嬢大丈夫ですか?屋敷から出ていないと聞いて心配になって、今回呼んだのですが無理しないで」
クレアは痩せていた。様子を知りたくて呼んだのだが、あまり良さそうではない。
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
軽く笑うクレア。その姿は儚げに見えた。
「あの、アレクサンドル様が皇太子殿下の騎士となったと聞きました。その後は、どうされてるのですか?」
「彼のことだから頑張ってると思いますよ」
クレアは目を見開いて驚いている。
「お互い文通してません。彼の仕事の邪魔したくないですし、また屋敷に帰ってくると思いますから、その時に会おうと思ってるわ」
私の答えに一瞬眉を顰めて黙って聞いていた。


 「やあ、皆さん。こんにちは」
そこに、この場に似つかわしくない声が聞こえた。
「ライリー・ヴァリアントン公爵子息」
エミリーが、その人物の名前を言った。
「どうして・・・」
どうして、ここにいるの?
心の中で思った。
「君を訪ねに来たら、お茶会してると聞いたから。せっかくだから、ご令嬢達に挨拶をしようと思ってね。皆さん。イザベラと仲良くしてくれるようで嬉しいよ。これからもよろしく」
「「「はい」」」
「それじゃあ、今日はご令嬢の集まりだから、僕は帰るよ。イザベラ、また来るよ」
ライリーが去っていくと、令嬢達がまた話し出した。
「かっこよかったですわね。アレクサンドル様もかっこいいですが、ライリー様もかっこいいです」
 
 「そういえば噂は本当ですか?イザベラ様」
エミリーが首を傾げて尋ねた。
「噂とは?」
「イザベラ様とライリー様は親密の仲で、結婚を前提にお付き合いされてると」
「・・・は?」
どうして、そんな噂が出回る。
親密ではないし、結婚なんて真っ平だ。
「皆さん、そう言ってますよ。ライリー様が、イザベラ様の屋敷に訪ねているのを見ているからです」
「社交界の噂ですわ。最近イザベラ様の姿を見かけませんでしたが、そういうことだったんですね」
ライリーの登場で、噂が本当だと思ってしまう令嬢達。
 それは誤解!
そう言おうと思って口を開きかけた時
「イザベラ様とライリー様はお似合いですわ」
その言葉に他の令嬢達も賛同する。
私は我慢できずに、テーブルをバンと叩き大声で怒鳴りつけた。
「ふざけないで!!!二度と、ライリーの話をしないで!!!」
その場が静まり返った。我に返ると皆驚きの表情をしている。
やってしまったと思った。
とにかく今日は無理だわ。
「いきなり怒鳴ってごめんなさい。気を悪くしたわよね。今度何かでお詫びするわ。それと、集まってもらって悪いけど、気分が悪いから今日はお開きにするわ」
令嬢達は頷き、次々と帰っていく。
全員この場からいなくなっただろう。
 そう思った時に、呼吸が荒くなり過呼吸を起こす。
あの男と会った後は、いつもこうだ。
「イザベラ様!」
私の名前を呼ぶエミリーの声が聞こえた。


 ***
 社交界の噂。
イザベラ様とライリー様が親密で結婚前提との付き合ってる。その噂を初めて聞いた時は耳を疑った。
家の事情や他の事情で恋愛感情がなくても、結婚の話が出てきても珍しくない。
しかし、イザベラとは若いし、名門貴族だし、結婚の話をすぐに進めないといけないわけではない。

 それに、イザベラ様は今もアレクサンドル様の事が好きだと思う。皆の前では、そう言う話をしない。
ただ何度か、アレクサンドル様が王家に仕える前に2人を見かけたことがある。
2人がお互いを見る目は、愛おしそうに見ていた。
アレクサンドル様は、いづれ王家に仕える為、付き合っていなかったみたいだが、お互いの想いは強いと思う。
 アレクサンドル様が皇太子殿下に仕えてからは、周りに心配かけさせないように無理に演じているように見える。


 今日お会いしたライリー様は、イザベラ様の事を、まるで獲物を捕まえるようなギラつきを目に宿している。
イザベラ様は、恐怖と嫌悪感を目に宿していた。
ライリー様が去った後、噂を確かめる為に質問すれば、何を言っているといった顔。
やっぱり私の考えが正しかったと確信を得た。
 その時、他の令嬢がイザベラ様とライリー様がお似合いと言った時に、イザベラ様は相手を睨みつけて怒りをぶつけた。
いつもは、落ち着いていて、張り付けの笑みなのに。
そして、お茶会はお開きになり、皆が帰る列の最後尾を歩く。

 イザベラ様の様子を見ようと振り返った。
すると、不定期に肩を上下させ、そのまま地面に足をついた。
私は目を見開き「イザベラ様!」そう言って元来た道を走り出す。
私の声を聞いたイザベラ様はこっちを見たが、何も言わない。ただ苦しそうにしているのは分かる。近づくと、胸元を掴んでいる。
「大丈夫ですか!?今、人を呼んできます!」
イザベラ様を椅子に座らせ、人を呼ぼうとした時、私の手を掴んで止めた。
「・・・だ・・・だいじょう・・ぶよ」
「ですが「お願い・・いわ・・ないで」」
私の言葉を遮り、他の人に知られるのを嫌がった。
「・・・分かりました」
渋々承諾したが、本当に大丈夫だろうか。
顔色が悪い。
私は、イザベラ様の背中をさすり水を渡す。
徐々に落ち着いたようで、私に視線を移す。
 「ありがとう。エミリー嬢。もう大丈夫よ」
心配かけさせないように笑っているが、疑問をぶつけた。
「どうして、笑うのですか?」
「え?」
「本当は笑える状態じゃないですよね。心配かけさせない為に笑ってることくらい分かります」
「・・・そう・・・・・私はまだまだね」
何が、まだまだと言うのか。今は無理しなくてもいいのに。
「私が余計な事を言ったせいもありますよね。社交界の噂。それで先程の症状が出てしまって。申し訳ありません」
「エミリー嬢が謝ることじゃないから気にしないで」
「症状が出るのは誰も知らないんですよね」
「そうね」
「このままだと心を壊しますよ!私は噂を信じてませんから!」
「・・・・・どうにもならないこともあるわ。それより、エミリー嬢。変わったわね。親身になって、自分より下でも以前のような態度ではなくなった」
わざと話題を逸らされた。これ以上は触れられたくない事が伝わる。
「・・・以前の私は傲慢で、自分の身分の高さにふんぞり返って、下の身分を見下してました。さすがに度が過ぎて親に怒られました。後はイザベラ様が、皆に公平に接していて、自分と比べた時恥ずかしくなったからです」
「そう。私は今のエミリー嬢が好きよ」
「私は以前、イザベラ様の親友は自分だと言いふらしてました。不快な思いをさせたかもしれません。ただ、悩みや困った事があるなら力になりたいと思っています」
「親友とまではいかないけど、友人となら、この先仲良くなれるかもしれないわね。それと、あなたの気持ちは嬉しいわ。ありがとう」
イザベラ様は優しく微笑んだ。
今まで見せていた張り付けの笑みとは全然違う。
いつもより美しいと思った。
私にできることは限られているかもしれない。
でも、少しでもイザベラ様のお役に立てるなら立ちたい。
「これからは友人としても、よろしくね」
「はい!よろしくお願いします!」
イザベラ様が右手を差し出し、私は両手で掴み握手をした。
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