たくさんの想いの先に

来栖瑠樺

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幼なじみ

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 成長して分かった事。国と自分のいる街の名前。
この国はアイメレスト。私が住んでる街は首都のフェレア。
この国は大国らしい。


 「お父様、お母様、今日はどこに行くの?」
両親と手を繋いで歩きながら尋ねる。途中まで馬車で来たが、目的地に着いてないのに、ここから歩くと言われ不思議に思った。
並木道を通り、草原を歩く。
「もうすぐ着くぞ」
「楽しみね。イザベラも楽しんでもらえるといいのだけれど・・・」
これからの出来事にしている父と対照的に、母はどこか浮かない表情。
「大丈夫だ。イザベラ楽しみにしてろ」
母を励まし、私に笑顔を向けた。
そんな会話をしてると目的地に着いたようだ。

 「シャロン公爵と公爵夫人。このような場所まで足を運んでくださり、ありがとうございます」
「モンフォール伯爵と伯爵夫人。今回誘ってくれて感謝する。ああ、紹介する。娘のイザベラだ」
父に紹介され、両親と繋いだ手を離し、ドレスの裾を持ってお辞儀をする。
「はじめまして。モンフォール伯爵と伯爵夫人。イザベラ・シャロンです」
「おお!まだ5歳なのに、作法が立派です。うちの息子も見習ってほしいです。ああ、紹介が遅くなり申し訳ありません。息子を紹介します。あれ?」
伯爵は辺りを見回す。
「あ、あんな所に。申し訳ありません。すぐ連れてきます」
伯爵夫人が先に見つけ、息子の所に急いで向かい連れてくる。
「本当に落ち着きがなくて手を焼きますよ」
額に手をあて溜め息をつく。そんな伯爵を父は愉快に笑っていた。
「子供らしくて良いではないか。イザベラは落ち着いてて、あまり子供ぽくないところがあるから、羨ましく思うところがある」
私は、ギクッとなった。
そうよね。実年齢と精神年齢が違うから言動が子供らしくない。気をつけなければ。
そんなことを考えていると、伯爵夫人が息子を連れて戻ってきた。そして、母親に挨拶するように促されている。
息子は私と両親を見てから、私の方に歩み出て挨拶をした。
 「はじめまして。アレクサンドル・モンフォールです。一緒に遊ぼうよ」
笑顔で挨拶した後に右手を差し出された。
見た目は茶髪で目の色は黒。
「はじめまして。イザベラ・シャロンです」
伯爵と伯爵夫人の時と同じ所作で挨拶をすると不思議そうな顔をするアレクサンドル。
「どうして、そんな堅苦しいの?」
「どうしてって・・・」
誰にでもそうしてきたし、堅苦しいと思った事ないし、そんなことを聞かれなかった。
「こら!アレクサンドル!作法を教えただろ。お詫びして、公爵と公爵夫人にもご挨拶しなさい!」
伯爵は息子を叱り、伯爵夫人は顔色を窺うように両親を見ている。
「気にするな。アレクサンドル。娘のイザベラと仲良くしてほしい」
「・・・はい。では遊びましょう。イザベラ公爵令嬢」
アレクサンドルの態度を父は責めなかった。しかし、自分の父親に怒られたのが影響しているようで顔が暗い。
「さっきの態度でかまわないわ。気軽にいきましょう」
「ですが、イザベラ公爵令嬢。そうゆうわけにはいきません」
「そうです。失礼になります」 
アレクサンドルの両親は、息子が失礼がないようにしたいようだが、私は気にならなかった。
「お父様、いいでしょ」
父の許可をとれば収まる。私は同意を求めて父を見た。
父は少し沈黙し口を開いた。
「いいだろう。娘は、同世代と仲が良い子がなかなか見つからなくて避けているところがある。アレクサンドルには気を許してるようだし、かまわない」
 「しかし、公爵「お前も、いつまでその口調なんだ」」
「「え?」」
伯爵と伯爵夫人は虚を衛かれたようだ。
「ハリソンと俺は幼なじみで以前は気軽に話してたじゃないか。それなのに、いつの間にか他人行儀になり、俺は寂しく思っているのだぞ!」
「だけど、あの頃とは違う。ジェイク。身分はあなたの方が出世している。接し方だって変わる」
「ハリソンも出世しただろ。確かに身分は俺が上だが、俺がいいと言ってるんだ。世間の目なんて気にするな。俺は、以前のように接してくれる方がありがたい」
「私からもお願いします。主人は今日をとても楽しみにしてたんです。幼なじみを紹介すると意気揚々に言うくらい。夫人も私に気を使わなくていいですよ」
私の両親の言葉を聞いて、伯爵夫妻は何か吹っ切れたようだ。
「じゃあ、お言葉に甘えてそうしよう。ジェイク」
「私も、あなたの事を名前で呼んでいいかしら?オリビア」
母がアレクサンドルの母に尋ねると「はい」と返ってきた。
「オリビアよろしくね。私の事はルナで大丈夫よ」
「は、はい。よろしくお願いします。すみません。いきなりは緊張するので、私は徐々にでいいでしょうか?」
「かまわないわ」
会話が一段落したところで、昼食をとることにした。

 目的地は、綺麗な花畑が広がっていた。
食事が終わり、アレクサンドルが遊びに誘ってきた。
「イザベラ。遊ぼうよ」
アレクサンドルが敷物から立ち上がり、私に手を伸ばす。
「ええ」
アレクサンドルの手を取り立ち上がると、彼は走り出した。突然のことでびっくりしながらも付いて行く。立ち止まったと思ったら「ここが綺麗だと思うよ」とアレクサンドルが周りを見回した。そこは、お花畑の真ん中。
確かに多くの花に囲まれていて綺麗。
「本当ね。とても綺麗。でも、いきなり走り出すから、びっくりしたわ」
「ごめんね。早くこの景色をイザベラに見せたかったんだ」
少し困ったように笑っていた。
「そんな顔しなくていいわ。怒ってるわけじゃないのよ。むしろ嬉しい」
「それは良かった」
無邪気に笑うアレクサンドルを見て、微笑ましく思う。
私も、そんなふうに笑ってみたい。
「座りましょ」
「うん」
「アレクサンドルは、仲の良い友達はいるの?」
「うーん。どうなんだろう。いないかな」
「あら、そうなの?親しみやすい性格だと思うのに」
「イザベラは、そう思うの?」
彼の問いに頷いた。
「・・・そっか~。俺さ、友達って大切だと思うんだよね。だから、気が合わなそうな人とは適当に相手して、お父様に適当な理由をつけて会わないようにしてる。だから友達がいない」
「・・・」
先程までとは違う。無邪気な少年の印象だと思ってたけど態度が違う。
「ああ、態度変わって嫌になった?だったら、前の態度に戻そうか」
私が何も言わない為、怪訝な表情をしてる。
「今のままでかまわないわ」
「そう?じゃあ今度はイザベラの番。何で友達いないの?」
「その先を見据えてしまうと言うか・・・」
「それだけだと分からない」
「私も何度か同世代の子とは会ってるのよ。その時に親も同伴で付いて来る。その親を見ると、目は笑ってないのよ。今のうちに仲良くしとけば、今後何かに使えると考えているような感じがするの。子供もいずれ、そうして接してくる。今後を考えれば我慢しないといけないと思うけど、やっぱりまだ割り切りができないのよね。その後は、お父様に何か理由をつけて避けるようにしてるのよ」
「・・・・・」
「何よ」
無言のままのアレクサンドル。しばらくして言われた言葉に目を見開いた。
「イザベラ。本当に6歳?」
「やっと喋ったと思ったら急にどうしたの。6歳よ」
精神年齢は違うと心の中で付け足した。
「いや、考えが6歳ぽくなくて、大人の感じがしたから」
ジッと私を見たまま言うアレクサンドルに、なるべく平常心で答えたつもりだ。
「それより、アレクサンドルこそ態度変えて大丈夫なの?今が素でしょ。初対面の私に出していいの?私が、あなたの素を誰かに言ったら、今後何かに関わってくるんじゃない?」
「心配してくれてるのか?」
「・・・心配と言うか・・・さっきも言った通り、初対面の私に素を出していいのかって聞いてるの」
アレクサンドルは、ニヤリと笑う。
「イザベラならいいかなと思って」
「何が?」
「特に理由はないけど、何となくそう思った」
そんな理由で大丈夫なのかと思ってしまう。
「イザベラ言わないだろ」
「言わないわよ」
「じゃあ、これからも会ってくれるか?」
「ええ」
アレクサンドルは、チラリと私を見て、一輪の花を摘み何かを作り出した。
それを黙って見てると完成したようだ。
それは、花の指輪。
そして、私の左手を取り薬指にはめる。
「将来は俺のお嫁さん」
指輪をはめた後に私を見た。
突然の行動に赤面する。
「な、何を言ってるの」
指輪をとろうとする手を阻止された。
「ダメか?」
「ダメかって、こうゆうのはもっと成長してからするものだし、私達まだお互いの事を知らないでしょ」
「じゃあ、これから知ればいいじゃないか。イザベラの結婚相手の先約だ」
「な、何を大人ぶった事言ってるのよ」
「あまり、子供ぽくないイザベラに言われたくない」
それを言われると、上手く返す言葉が出てこない。
その時、私達の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「行こうか、イザベラ」
「まったく、アレクサンドルたら」
そう言って、彼の手を取り歩き出す。
 家に帰ると花の指輪を外し押し花にした。それを、しおりに変え使えるようにしてもらった。
そのしおりを本に挟み、眠りについた。
その日は、いつもより熟睡できた気がした。


***
 やっと友達ができた。今までと全然違う。
6歳のわりに妙に大人ぽいところがある。
でも、そんなことは問題じゃない。
素でも変わらずに接してくれる人。だから、ちょっと試すようなこと言ったけど大丈夫だった。
本当はもう少し喋ってから素を出そうとしたけど、イザベラの青とグレーのオッドアイ。その目が綺麗で吸い込まれそうで少し先走っただけだ。
最後は大人の真似事した時に、イザベラの顔が真っ赤になってて可愛かったな。
イザベラは本気にしてないし、花の指輪も捨てるだろう。
どうして大人の真似事したのか分からない。
気がついたらそうしてた。


 俺は、今後イザベラに対する気持ちと自分の将来で悩む事を、この時は考えもしなかった。
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