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第三部 魔法使い、双子の悪魔の変化
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ヨルの声が背後からした瞬間、パァッと光り輝く魔法陣が出現する。ヨル.....いつの間に高度な純魔法を使える様になったのだろうか。フードを剥ぎ「今日はリュシーが作るのか」と驚いた様に僕の手元を覗いてくる。
「.....暫く二人に任せきりだったからね。二人はまだ帰って来ていなかったしたまには僕も作ろうかなって」
「そうか。それは楽しみだな」
ふっと柔らかい表情で目尻を細めるヨルの横顔を見て胸がキュッと締め付けられる。あんなに冷たかったヨルが僕の言葉でこんな風になるなんて。幼い頃の姿を思い出し、思わず軽く涙ぐんでしまう。
「そういえば.....セルとは一緒じゃないの?姿が見えないけれど」
「セルはダイアナ嬢と話して──ぁ」
しまった、と言わんばかりにパッと口を塞ぐヨル。「ダイアナ嬢.....?」と聞き覚えのない名前に首を傾げると、背を向けたまま配膳を続けてヨルは言う。
「前にリュシーと中央図書館に行った日に話した人間の女だよ。俺は二回目以降会っていないけれど、セルは二人でよく会っているみたい」
「そう.....」
本来人間からは姿を隠す存在である悪魔族の彼が、自らの意思で人間と行動を共にしている。あんなに人間を毛嫌いしていたセルが人間を信頼出来る様になったなんて、セルが選んだ相手ならきっといい人間なのだろう。
──ズキッ.....
「.....?」
胸の辺りが一瞬だけ痛み、作業の手を止める。何だろう、変な痛みを感じる。こんな事、今迄無かったのに。
脳裏には見知らぬ人間の彼女に笑い掛けているセルの姿がある。たった今聞いたばかりなのに、ずっと前に見た記憶みたいに脳裏に焼きついて離れない。
「ただいま、リュシー.....ってヨル。もう帰っていたのか」
「!」
シュルルッと風を切る音と共に突如セルが現れる。急いで帰って来たのか髪の毛が少し乱れている。「先に帰っていたら悪いか」と不服そうに返すヨルを無視して僕の所まで真っ直ぐ歩いてくる。フードを剥いで「今日はリュシーがご飯作るのか」と嬉しそうにヨルと同じ様に隣に並んで覗いてくる。
「わぁ、美味しそう。リュシーの作るご飯、何だか久し振りだな」
「ふ、二人に作って貰ってばかりだったから。今日は二人の大好きなハンバーグだよ」
さっき聞いた話の内容がまだ残っているせいで上手く切り替えが出来ないまま、何とかセルと会話をする。──ふと、セルの着ているローブからふわりと人間の匂いがした。重なる様に甘い花の様な香りが鼻に届いた時、気が付いたら僕は触れようとしてくるセルの手を無意識に払いのけていた。
「.....暫く二人に任せきりだったからね。二人はまだ帰って来ていなかったしたまには僕も作ろうかなって」
「そうか。それは楽しみだな」
ふっと柔らかい表情で目尻を細めるヨルの横顔を見て胸がキュッと締め付けられる。あんなに冷たかったヨルが僕の言葉でこんな風になるなんて。幼い頃の姿を思い出し、思わず軽く涙ぐんでしまう。
「そういえば.....セルとは一緒じゃないの?姿が見えないけれど」
「セルはダイアナ嬢と話して──ぁ」
しまった、と言わんばかりにパッと口を塞ぐヨル。「ダイアナ嬢.....?」と聞き覚えのない名前に首を傾げると、背を向けたまま配膳を続けてヨルは言う。
「前にリュシーと中央図書館に行った日に話した人間の女だよ。俺は二回目以降会っていないけれど、セルは二人でよく会っているみたい」
「そう.....」
本来人間からは姿を隠す存在である悪魔族の彼が、自らの意思で人間と行動を共にしている。あんなに人間を毛嫌いしていたセルが人間を信頼出来る様になったなんて、セルが選んだ相手ならきっといい人間なのだろう。
──ズキッ.....
「.....?」
胸の辺りが一瞬だけ痛み、作業の手を止める。何だろう、変な痛みを感じる。こんな事、今迄無かったのに。
脳裏には見知らぬ人間の彼女に笑い掛けているセルの姿がある。たった今聞いたばかりなのに、ずっと前に見た記憶みたいに脳裏に焼きついて離れない。
「ただいま、リュシー.....ってヨル。もう帰っていたのか」
「!」
シュルルッと風を切る音と共に突如セルが現れる。急いで帰って来たのか髪の毛が少し乱れている。「先に帰っていたら悪いか」と不服そうに返すヨルを無視して僕の所まで真っ直ぐ歩いてくる。フードを剥いで「今日はリュシーがご飯作るのか」と嬉しそうにヨルと同じ様に隣に並んで覗いてくる。
「わぁ、美味しそう。リュシーの作るご飯、何だか久し振りだな」
「ふ、二人に作って貰ってばかりだったから。今日は二人の大好きなハンバーグだよ」
さっき聞いた話の内容がまだ残っているせいで上手く切り替えが出来ないまま、何とかセルと会話をする。──ふと、セルの着ているローブからふわりと人間の匂いがした。重なる様に甘い花の様な香りが鼻に届いた時、気が付いたら僕は触れようとしてくるセルの手を無意識に払いのけていた。
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