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七鳴鐘楼モンペルク、月蝕は混沌の影を呼び編
真夜中の遭遇2
しおりを挟む「えーと……街中で火を焚いても良いもんかな……?」
そこが少々気になったが、しかし冷たいままお出ししたら相手が腹を壊してしまうかもしれない。……普通、街中で焚火をしたら、怒られたり罰せられるらしいけど、ここは異世界の街だし……手の内で起こす程度の炎なら大丈夫かな?
俺は基本的に木と水の曜術しか使っていないが、しかし本当は全ての属性を使う事が出来るチート持ちなのだ。
練習していないので迂闊に使うのは危ないけど、それでも炎の曜術なら少しくらいは扱える。オタクの想像力で多少はなんとかなるものなのだ。
なので、俺が直接トルティーヤを温めれば問題は無い。
そう思い、俺達はとりあえず路地に入って人目に付かないようにすると、蹲ったままの黒衣の人と距離を取りつつその場に胡坐をかいた。
……こちらが動いても、相手は反応しないようだ。
というか、人に興味がない……とか……?
うーん、良く解らないけど、でもロクが気にしてる相手がハラを空かせているなら俺としては黙っていられない。常春の気候とはいえ夜は少し肌寒いワケだし、温かい物を早く食べさせてやらないとな。
「えーと……でも一人だとちょっと難しいな……。そうだ! ペコリア、このフライパンを持っててくれないか?」
「クゥー!」
「そんで……ロクにはこれ! フライ返しを持って待機してほしいんだ」
「キュ?」
旅人用のお料理セットから四角いフライパンを取り出して、組み立ててからペコリアに持ってもらう。ロクショウには、フライ返しだ。
本当は網焼き用の網などが有ればいいんだが、この世界では直に焼く方が多いのか、網焼き器ってないんだよなぁ。
ブラックにお願いしたら作って貰えないだろうか……とか思ったけど、今はそんな事を考えている場合じゃないか。
フライパンにカンランの実を割った油を引いて、冷えたトルティーヤを乗せる。
そして俺は、フライパンの下に両手をあてると小声で詠唱した。
「掌の炎よ……糧に熱を与えたまえ――【フレイム】……!」
心を湧き立たせ、掌から熱く青い小さな炎が円状に並ぶ姿を強く想像する。
――と、ボウッという音を立てて俺の掌にイメージ通りの炎が現れた。
「やった! ……って、コンロみたいに小さい炎の集まりにならなかったなぁ……」
俺としてはコンロの火を想像したつもりだったのだが、何がいけなかったのか、出た【フレイム】は丸を描いた炎になってしまっていた。
一繋がりの状態なのは、俺のイメージ不足なんだろうか?
いや、もしかすると……【フレイム】で出てくるのは単体の炎だから、名前の意味に引っ張られて一つしか出せなかったのかも知れない。
確かブラックが「詠唱は範囲や出力の指定で、術の名はイメージの固定」みたいな事を言っていた気がするから、名前のある術は決まりで縛られているのかもな。
でもキチンと炎は出せたし、とりあえずはコレでいっか。
「ペコリア、大変だけどそのままもう少し頑張ってな! ロクは、俺が合図をしたらトルティーヤをフライ返しで引っくり返してくれるか?」
「クゥー!」
「キュー!」
元気よく返事をしてくれるロク達に思わず笑顔になってしまいつつ、俺は炎の光に照らされるフライパンをじっと観察した。
薄い生地だから、気を付けて見ていないとすぐ焦げてしまうのだ。
引っくり返し時を見極めないと……と思いつつ、油の音と微かに焼けはじめる音に耳を澄ませていると――すぐに、じゅわっと音が聞こえた。
「ロク、頼む!」
「キュキュ~!」
自分の体ほどもあるフライ返しを小さくて可愛いお手手でしっかり掴んだロクは、任せなさいと言わんばかりにフライ返しを動かしトルティーヤの下に滑らせた。
さすがはロク、道具の扱いも天下一品だな!
「そうそう、そこでゆっくり引っくり返して……」
「キュッ!」
ぺそっと、ロクが器用にトルティーヤをひっくり返す。
微かに甘い感じのいい匂いがし始めたトルティーヤは、薄らときつね色の焦げ目が付いていた。やったぜ、超良い感じじゃん!
「クゥウ~……」
きゅる~っと言う、キュートな音がペコリアのお腹から聞こえる。
これはお腹の音だな。まったく、可愛すぎるとハラヘリの音まで可愛くなるんだから。まあでも俺は一向に構わんがな!!
「ははは、ペコリアもお腹減ったのか? 部屋に帰ったら、片割れのペコリアと一緒に何か食べような」
「クゥー!」
つぶらなお目目でじっとトルティーヤを見つめて涎を垂らす綿菓子ウサギちゃんは、控えめに言っても可愛すぎて悶絶しそうになってしまう。
そんな顔をしたらもう、何枚でも焼き直したくなっちゃうじゃないかっ。
【エショーラ領】の領主であるアーラットさんに美味しいお肉を沢山貰ったし、残った【蝋燭草】の粉でもう一度トルティーヤを作って食べさせてあげよう。
それに、ホットケーキも作ろうかな。
そんな事を思いつつ、両面がこんがりと焼きあがったトルティーヤを皿に取って、俺は手早くザクロちゃんの蜂蜜をトルティーヤに塗ってくるりと巻いた。
相手がどれほど食べられるのか分からないので、まずは様子見だ。
もし胃腸が弱っていたらガツンとした料理は食べさせない方が良いだろうしな。
なにせ動けないほどの空腹なんだから、色々と気を付けてやらないと。
そう考えながら、トルティーヤを相手に渡そうと顔を上げると。
「………………」
「うわあっ!? ちょっ、ちょっ……い、いきなりコッチ向かないでくれよっ!!」
びっ……び、びびビックリした……さっきまで蹲ってたのに、なんで急にこっちの方見てるんだよ!?
驚かせるのが趣味なのかこの人は、いや待て、落ち着け俺。腹が減ってるんだし、いい匂いにつられただけだ。驚きすぎると俺が変に思われてしまうぞ。
とにかく深呼吸……ああもう、一人でバタバタして恥ずかしい。
こちらをじっと見つめる黒衣の人を見つつ、呼吸を整える。
……初めてこちらに興味を示したことで気が付いたが、相手は凄く大柄で……もしかしたらブラックやクロウよりデカいんじゃないかって感じだ。
しかも、マスクを付けている。
といってもこっちの世界だと、白い布で口を覆っている程度の物なんだけど、黒衣のフードを目深にかぶり、白いマスクを付けているとなると……なんだかアヤシイ。
ロクが心配してるんだし、悪い人じゃないだろうけど、しかしどうしても頭の中には口裂けナントカとか、怖いオバケが思い浮かんでくる。
い……いやっ、俺は別に怖くないけどね!?
でも世間一般の人からすれば、フィクションでも怖いだろうって意味ねコレ!
だ、だから、少し逃げ出したくなったけど。
でも男が一度やると決めた事を投げ出すわけにはいかない。
なので、俺はゴクリと唾を飲み込んで覚悟を決めると、トルティーヤを相手に差し出した。……でも襲い掛かられたら怖いので、恐る恐る、だけども。
「…………」
黒衣の人が、すんすんと鼻を動かすような小さい音を立てる。
やっぱり、このトルティーヤに興味を持っているようだ。俺は、再び皿を勧めた。
「た、食べて良いですよ……」
「……? ……あ……あ、ぇえ……い……?」
…………おや?
なんていうか、その……声が言葉になってないぞ?
失語症……いや、声帯に怪我か何かをしているのだろうか。
でも、こちらの言葉を真似したような声を出したので、相手は少なくともこちらに興味を持っているに違いない。その興味が敵意に変わるかどうかは難しい所だけど、とにかくまずは食べて貰わないと。せっかく温めたのに冷めちまう。
「ほら、食べて。えーと……もぐもぐ」
片手で手に取るジェスチャーをして、口に入れるフリをし咀嚼して見せる。
すると相手も理解したようで、少し冷めて取りやすくなったトルティーヤの蜂蜜巻きを手に……いや、ヤケに幅広で袖があまった両手で掴むと、自分の鼻の所に持って行った。そうして、また匂いを嗅ぐ。食べ物と解ってくれるだろうか。
「あぁ。うー、あああ」
マスクで覆われた口が、モゴモゴと動く。
声は……普通の男性の声……たぶん、ラスターと同じ二十代くらいかな。声は大柄な体型に負けてないな。肩幅が大きいとかじゃなくひょろ長いって感じなんだけど、足首まで覆う黒い服のせいで余計に体格がよく見えるらしい。
……マントも中の服も黒か。
そんで、男なのになぜか教会のシスターみたいな裾の長い服を着ている……?
…………この人、一体どういう人なんだろう。
「ング……んん……」
「わっ!? ちょ、ちょっと、マスクに押しつけても食べられませんよ!?」
「キュキュー!」
思わず身を乗り出した俺より先に、ロクがピュンと飛んで行って、口を覆っていたマスクをずり下げる。
すると、ようやくマスクの存在に気が付いたかのように、男はトルティーヤを片手で持つ……っていうか挟むと、袖がダルダルに余った手でマスクを下にずらした。
「んん」
「キュー」
「んあ。……ああ」
ロクの声に答えるように、男が声を漏らす。
そうして再び食べるために口を大きく開けて――――
「っ……!?」
食べ物に、齧りつく。
無心でもぐもぐと食べ続ける男を見ながら、俺は硬直してしまっていた。
……だって。
だって、目の前の男が口を開けた瞬間に見えたのは……
人間のように揃っているが、獣と同じく鋭い形に尖った歯だったんだ。
そう。
おおよそ普通の人のものではないギザギザした形状が、そこにあったのだ。
「ん。ん、ん」
「……クゥー?」
今までに見ないニンゲンだからなのか、ペコリアは不思議そうに体を傾げて黒衣の男を見上げている。ロクも世話を焼いているが、小首を傾げていた。
どうやら、二人とも「普通の人ではない?」と疑問に思っているらしい。
……五感が優れている守護獣達がそう思うんだから、やっぱり妙なんだよな。
いや、でも、この世界には色んな種族がいるワケだし……中には、鳥と龍の性質を併せ持った鳥人の種族もいるのだ。
もしかすると、この黒衣の大柄な青年もそうなのかもしれない。
けど……そうなると……この人は「人族の大陸の言葉を使ったことがない」って事になるよな……この大陸に住む人達は、鳥人ですら同じ言語で話しているし……それに、獣人達も方言は在れど普通に言葉は通じたんだけどな。
……っていうか……そもそも、この世界って言葉が通じない事なんてあるのかな?
大陸外の人ですら同じ言語で話してるのに……うーん、山奥に住む秘密の部族とかだったら、独自の言語を使っていたりするんだろうか。
でも、妖精族ですら普通に同じ言葉だったしなあ……ううむ……。
どういうことだろう。
気になって仕方がなくなり、深く考えていると。
「んんっ。ああ、え……あー……あええ……んぐんぐ」
「えっ……」
ざり、と、地面を擦るような音がして、さっきより近い場所で声が聞こえた。
思わず振り返ったそこには、距離数十センチのところまで近づいた男が……。
って、い、いつの間に。
つーか今の何。んぐんぐって……。
「あっ、もしかして俺の言葉を真似てる……のか?」
「キュー!」
「クゥッ、クゥー」
「んぅー」
今度はロクちゃん達の言葉をまねてら。
そっか……真似ながら俺達に何かを訴えようとしてるんだな。
言葉での意思疎通は難しいけど、真似ようとする意志があるんならなんとかなる。
さしずめさっきのは……食べる、もぐもぐ……ってところか。
もしかしたら二皿目欲しいのかも。
だったら作ってやるかと思い、俺は再びロクショウとペコリアに手伝ってもらい、相手にトルティーヤの蜂蜜巻きを作ってやった。
差し出すと、すぐに取ってんぐんぐと言いながら食べる男。だが二皿では足りないのか、再度「もぐもぐ」を真似してくる。どうやら随分腹が減ってるみたいだ。
じゃあもう一皿――――なんて気軽に差し出す内に、どんどん「おかわり」は増えていき、最終的に十回もトルティーヤをあぶる羽目になってしまった。
「つ……疲れた……」
「キュ~」
「クゥウ~」
男がようやく「もぐもぐ」を真似しなくなったのを確認し、俺は背を伸ばす。
これには俺だけでなくお手伝いのペコリアとロクも参ったようで、ぺしょ……と、地面に突っ伏してしまっていた。うんうん、手伝ってくれてありがとうなあ……。
二匹を胡坐の上に乗せて撫でつつ労わっていると、黒衣の男はそんな俺達の様子に不思議そうに口を半開きにした。
おおう、やっぱりギザ歯が見える……二次元の女の子だと可愛いけど、現実で見ると結構怖いなマジで……獣と違ってギザ歯がギッシリ詰まってるし……。
でも、この人にはどうやら敵意が無いみたいだもんな。
それに俺達の声を真似る程度には、こちらを理解しようとしてくれてるみたいだし。
おなかも落ち着いただろうから、少しくらい話を聞けるかな。
そう思い、俺は相手を見やった。
「えーと……貴方はどこから来たんです? というか、どうしてそんなにお腹を空かせて、こんな場所にいたんですか?」
ロクがこの人の気配を気にしていたということは、只者ではないはず。
もし困っていることがあるのなら、協力してあげたい。
そう思って問いかけるが、相手は意味を理解できていないのか首を左右に動かし、んーんーと唸る。だが……。
「アなあハ、あ、ル゛ぉお、あ゛ぁ、んぃ、い、いーあん、エす」
さっきより、言葉を真似るのが上手くなっている。
「声」ではなく「言葉」になり始めたのは、落ち着いたからなのかな。それとも、俺達が発しているモノが「ただの音じゃない」って事に気が付いたんだろうか。
…………もしそうだとしたら、これは……ちょっと話すのが難しいな……。
やっと「意味のある音」だと認識したレベルなら、俺達が使う言語と相手の言語はかなりかけ離れたものだって事になるし……。
だとしたら、単語で話した方がいいのかなぁ……。
ええと……じゃあ、こういう時は名前からの方がいいかな?
この場にあるモノを指して言葉を言い続ければ、それが「固有名詞」だと理解して貰えるだろうし、名前を先に覚えて貰えば「てにおは」を続けることで「ソレだけを表す特別な言葉」だと理解してくれるだろう。
そう思い、俺は自分の胸に手を当てて先に名乗った。
「俺はツカサ……ツカサ! そしてこっちはロクショウ、ペコリア」
「お、エ? あー……ぅ、ああ」
「ツ、カ、サ。ロクショウ、ペコリア」
そうして、相手を指さす。
だが理解して貰うには程遠いみたいで、それならばと俺はトルティーヤを見せて、その名前を示し、トルティーヤをモグモグするという言葉を付け加えた。
そうして、また自分達の名前を教える。
すると――――相手は「もぐもぐ」が「食べる」行為であると理解していたようで、そこから一気に「名前」というものを理解してくれたのか、拙い声で「トルティーヤ」と似たような声を出してくれた。
そうそう! これはトルティーヤ!
「凄いぞっ! さあ、続けて俺達の名前も呼んでみて!」
自分達を指さして再度名前を告げると、黒衣の男は先程覚えた俺達の「名前の音」を、一生懸命に答えてくれた。
「うああ、おぅお、えおーぃあ」
「そうだよ~! やった、意思疎通成功!」
「キュー!」
「クックゥー!」
いや、まあ、確実かどうか分からんけど、まあ「音」を覚えてくれたなら良い。
でももし本当に覚えてくれたのなら、相手の名前も聞けるだろうか?
俺は再び自分を「ツカサ」だと名乗ると、相手に手を向けた。
「あなたの名前は?」
そう問いかけると、黒衣の男は数秒沈黙したが――――やがて動きだし、自分の胸に袖余りの手を押しつけると声を出した。
「ぃうー、うえうう」
「うえ?」
「ん」
……最初の声は「俺」とか「私」とかなのかな……?
だとしたら、俺が繰り返した「うえ」が名前?
「ん」と肯定してたし多分「うえ」だよな。
でもどういう発音なんだろう。もうちょっと正確に知りたいよな。
「うえ、ツカサ」
「うー……ぇ……んー……んんー、ん~ぇ、んル゛ぅうえ……」
お……これはもしや、正確な発音を教えてくれようとしている?
だとしたら、ルとンに似た音ってことか。
「ル」と「ン」の中間みたいな音……舌を巻いて何度か発音してみて、俺はアッと声を上げた。そっか、これは多分「ぬ」だ!
「ってことは、貴方はヌエって名前って事?!」
「ル゛?」
「ヌ、エ。ツカサ、ロクショウ、ペコリア、ヌエ」
順に手をやって、最後に「ヌエ」の方に手をやる。
そうして名前を呼ぶと――――
「ヌエ」さんは、ギザギザの歯をニイッと剥き出しにして、袖に覆われた手をパンパンと何度も打った。どうやら正解……もしくは喜んでくれたらしい……?
「ぅル゛え! ル゛ぅウ゛エ!」
お、やっぱり正解だったのか。
にしても……意思疎通でこの大変さか……。
どうしてここに居るのかも分からないし、これからどうしたもんかな。
流石に素性の知れない人をローレンスさんも泊まっている宿に連れて行くわけにはいかないだろうし……。でも、このまま放っても置けないよな。
人族の公用語が分からなくて苦労しているなら、どうにか助けになりたい。
ロクが心配してたのもあるけど、こんなにお腹を空かせて孤独に膝を抱えていた人を放っておくなんて、そんなのお天道様が許しちゃくれないよ。
今は夜だけど、きっとお月様も許してはくれないだろう。
なので、とにかくこの人を何とかしなければ。
「…………そうだっ、あの連れ込み宿なら夜も開いてるんじゃないか!?」
「ンェ?」
「とりあえず、安心して眠れる場所に行きましょうか」
手を差し出すと、相手は再び不思議そうに口を窄める。
もしかして、手を繋ぐ文化が無いのかな。
でも、言葉が通じないこの人を連れていくには手を繋ぐしかないもんな。
男同士で手繋ぎは気持ちが悪いと思われるかもしれないが、今回は保護するって目的が有るので大目に見て貰おう。
そう思い、せめて気持ち悪くないようにと長く余った袖の口を掴み、くいっと引くと、相手は俺に倣って立ち上がった。
「んルル゛ル゛」
「よし、じゃあ移動しましょう」
「キュー!」
「クゥクゥ~」
……正直、まったく言葉が分からないので怖い部分もあるし、ロクが心配していたからと言ってお世話して良いのかとも思うんだが……このまま放っておいたら、明日には野垂れ死にしてそうだし……。
ま、まあ、ブラックもこれくらいの親切なら目くじら立てないだろう!
今回はロクちゃんのお願いだし、きっと怒らない……はず……。
「ぅ、アア?」
「おっとごめんごめん、早くあったかいトコに行こうな」
とにかく、見つけちまったモンは仕方がない。
収まるところに収まるまではお世話しようではないか。
そう決心して、俺は「ヌエ」さんを連れて宿へと向かったのだった。
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