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七鳴鐘楼モンペルク、月蝕は混沌の影を呼び編
18.浮気かな?浮気じゃないよ怪夢だよ
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「で……僕が寝てる間に変な男と逢引して宿に連れこんだって?」
「だっ……だから違うってばっ! ロクショウが気にしてたから見に行って、世話をしたくらいで、ホントに何もしてないんだったら」
横を歩くブラックの疑わしげな視線に、俺は何度目かの弁解を伝える。
が、やっぱり相手は俺の浮気を疑ってるようで、目を細めて「ほんとかなぁ?」の顔を崩さない。朝起きてから説明して、とりあえず件の「ヌエ」って人の所に連れて行く今現在までずっとこの顔だ。
どんだけ信用がないんだよ俺は。
いやブラックが疑いまくっているだけか。でも仕方ないじゃないか、俺だって一緒に行こうと何度も揺さぶったのに、それでも起きなかったんだからさ。
起きないんなら寝かせておくしかないじゃないの。
……でも、まあ、ブラックの言わんとするところも分かる。
俺だって、ブラックが夜中にひっそりと出て行って、知らない誰かとデートをしていたら……まあ……悲しかったりするかもだけど……いや、俺の立場だと何とも言えないよなぁ……。色んな理由で。
それに、仮にブラックが俺と同じ状況になっても疑いはしないだろうけどさ。
でも、やっぱりちょっとは……不安になるかも知れない。だって、俺みたいなちんちくりんで、えっちだって何度も気絶しちまう下手くそな男と一緒に居るんだから、いつ愛想を尽かされたっておかしくないし……。でもその場合、浮気とかじゃなくて冷めた状態だもんな。
考えると悲しくなってくるが、それでも、俺の場合は仕方ないっていうか……。
……って、そ、そんな話じゃなくてっ。
まあそのともかく、心配になる気持ちは分かる。ってか、そう思われて食い下がられているうちが華なんだろうな。
でも今回はマジで何もしてないし、どっちかっていうと迷子の子供の世話みたいな物だったから、勘ぐられても困るんだよぉ……。
なんだ、やっぱアレか。あの連れ込み宿に連れて行ったのが悪いのか?
でも仕方ないじゃん、得体の知れない人間を受け入れてくれそうな宿なんて、あの宿くらいしか思い浮かばなかったんだからさあ。
「まったくもう……ツカサ君は目を離したらすーぐ他のオスに食いつかれるんだから。そのクエだか笛だかよく分からんヤツをしっかりシメた後は、しっかりねっとり半日はお仕置きするんだからね!」
「その不安になる擬音やめろください……。あと、ただあの人の様子を見に行くだけだからな? 初手からシメようとするの本当にやめろな?」
白壁の建物ばかりの大通りを抜けて、街の人が住む区域へ入る。
昨日と同じ、素朴ながらも華やかさのある壁画で彩られた家が左右に現れ、まるで街中の美術館にも思える楽しい道を歩いて行くと、昨日と同じく例の「宿屋通り」に辿り着いた。
朝ともなると人通りは全くないが、その代わりに各宿の人達が窓を開けて、左右の家屋に渡した縄にシーツやタオルなどを付け動かしている。
……今はあのシーツらに何かを思うのはやめておこう。
「よし、じゃあ間男をシメに行こう」
「だーから違うってば!」
「キュキュー!」
「クゥッ! クゥクゥー!」
ほら、ロクとペコリア達がそうだそうだと抗議してるじゃないか。
この可愛いプンスカを見て無視できる奴がいようか。いや居まい。
流石のブラックもロクショウ達の抗議は無視できなかったようで、不機嫌な表情を少し困ったように歪めて、頭を掻いた。
「もー、分かった分かった。ひとまず話は聞くから」
「宿のおばちゃんに話を聞けば絶対すぐ誤解が解けるって。だから、証言が取れたらお仕置きとかナシだぞ、ナシだからな!」
「…………よし、入ろうか」
「頷け~~~~!!」
何故「うん」と言わない。
まさか濡れ衣を着せてまで変な事しようってんじゃないだろうな。
言っておくけど、きっ……き、昨日のアレでまだ俺は手首が痛いんだからな!?
またあんな風なことやったら、絶対禁欲さすからな絶対!!
もう二度とあんなヘンな感じになるえっちはごめんだと思いつつ、今度は俺が顔を熱くして怒りながら、あの「連れ込み宿」に入った。
「すみませーん」
顔の前でパタパタと手を動かし風で熱を払いながら、昨日の受付のおばちゃんに声をかける。何やら作業をしていたらしいが、すぐこちらに顔を向けた。
「ああ、昨日のお客さん。どうしたんだいこんな朝早くから」
「あ、えっと……昨晩ここにお願いしていた“ヌエ”って人のことなんですけど……」
「…………」
……あれ、なんだかおばちゃんの反応がおかしいぞ。
ぽかんと口を開けて、不思議そうな顔をしている。けど、俺の言う通りにパラパラと宿帳のようなものをめくって、昨日の記載を確かめてくれているようだった。
が……。
「ヌエ、だよねえ。……うーん……? そんな人の名前は無いみたいだけど」
「えっ? あっ……じゃあ、俺の名前とか……。ツカサって名前あります?」
「ツカサ、かい? ……それも無いねえ。っていうか、そもそもお客さん達は昨晩も来てくれたのかい? 昨晩は二組しか客が居なかったはずなんだけどねえ」
「…………え……?」
それ……どういうこと。
俺は昨日確かに「ヌエ」って人と会って、ここに連れてきたんだぞ。
その時に、このおばちゃんに「一晩お願いします」ってお金も払ったし、フラフラした「ヌエ」さんをおばちゃんが連れて行ってくれるのを見送ったはず。
後は任せてって言われたことも覚えてるんだ。
なのに、宿帳に記載がない……?
「ああ、勘違いだったのかい? まあ気にする事は無いさ。あんまり激しくまぐわうと、たまーに夢現になってアンタみたいに夢の中の出来事を本当だったと思い違いをする人も出るからさ。……いや、お連れさんたら相当アッチが強かったんだねえ」
「いやぁ、アッハッハ」
何故かそこは素直に称賛されたと受け取って照れるブラック。
だが、俺は全く今の事実についていけない。
昨晩の事が、夢だった……?
いや、そんなはずはない。確かにトルティーヤは減ってたし、ザクロちゃんが定期的に持ってきてくれる【蜂蜜玉】も減ってたんだ。
朝からペコリア達に御馳走したけど、その時にちゃんと数えたはず。
だから、昨晩の事は夢じゃない……と、思うんだけど……。
「ロク、ペコリア……」
お前達も「ヌエ」を見たよな。
そう問いかけるように視線を落とすと、ロクも片割れのペコリアも頷く。
だよな、二人ともあの凄くデカい男の人を覚えてるよな?
なのに……泊まって無いって、どういうことだ……?
「ツカサ君? どしたの、もう行くよ?」
「えっ!? でっ、でも……」
「まあとにかく、ここじゃ迷惑になるから一旦宿に帰ろうよ。あのいけ好かないヒゲ王の見送りもしなきゃいけないみたいだしさ」
「う……うん……」
ブラックに肩を抱かれて、宿を出る。
俺の浮気疑惑が夢だった可能性に安堵しているのか、それともおばちゃんに素直に褒められて嬉しかったのか、ブラックの機嫌は直っているようだ。
しかし、それとは反対に今度は俺の機嫌が乱調になってしまった。
いや怒ったり泣いたりしているわけではない。混乱しているんだ。
だって……俺達は、絶対に「ヌエ」さんを宿に連れて来たし、その帰り道でロクとペコリアと一緒に「明日何が食べたい?」って話をしたのも覚えてるんだぞ。
ロク達も、その事をしっかり覚えている。
朝起きた時、ペコリアは【蝋燭草】の花粉ホットケーキを待ちきれなくて、クウクウと鳴きながら涎を垂らして目をキラキラさせてたんだ。
【蝋燭草】の話は、昨晩しかしていない。
だから、昨晩俺達が高級宿を出たのは間違いないはず。
じゃあ……なんで「ヌエ」さんは、連れ込み宿に泊まってないんだ……?
「キュ~……」
「クゥウ~……?」
帰る途中も、ロクとペコリアは不思議そうな顔で首を傾げている。
お留守番していた片割れのペコリアは、そんなもう片方のペコリアに「どしたの?」と、これまた不思議そうに顔を覗き込んでいた。
そんなペコリア達の可愛さに気力を回復しつつ宿へ戻ると、俺は早速ベッドに乗りあげてブラックに昨晩の話との矛盾について説明した。
浮気と言われようがなんだろうが、俺達は確かに「ヌエ」さんと出会ったんだ。
それは事実だし、嘘じゃない。
例えブラックが許してくれたとしても、このままなんて気持ちが悪い。
部屋を出たのは事実なんだから、その事だけはブラックに信じて欲しかった。
こうなった以上、自分で嘘だったと思い込むより怒られた方がマシだ。
そんな俺の様子にただならぬものを感じたのか、相手は最初とは違いどこか真剣な顔になり、もう一度俺の話を真面目に聞き直してくれた。
ブラックも、さすがにこれはおかしいと解ってくれたのだろうか。
二度目の証言を終えると、ブラックは「ふむ……」と顎に手を添えた。
「うーん……何だかおかしな話だね。ツカサ君は夢じゃないと思ってて、実際に食材も減っている。それは、ロクショウ君達も認知している、と。……なのに、連れ込み宿に泊まらせた相手の事を誰も知らない……」
「こっちの世界だとあり得ることなの?」
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「流石にそれは幽霊でもないとあり得ないかなぁ。……でも、食べ物を実際に食べる幽霊なんて聞いた事も無いね。モンスターだとしても、人型に擬態して……しかも、街の中で暴走もせず大人しくしてるなんてありえないよ。この【モンペルク】は強力な【障壁】で守られているし、モンスター除けも厳重に掛けられているんだ。並みのモンスターじゃあ耐えられないはずだよ」
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「まさか……ホントに夢だった、なんて言わないよな……?」
「普通はそんな事思わないけど……でも、ツカサ君ならあり得るかもよ」
「それ、どういうこと……?」
俺がよっぽど夢見がちなオタクとでも言いたいのだろうか。
と、思ったら、どうやらそんなふざけた話ではないらしい。
ブラックは至極真剣な顔で、俺の胸に人差し指をくっつけた。
「いいかい? ツカサ君は【黒曜の使者】で、これまで何度も“過去を見る”ような夢を見て来ただろう。それに、あの眼鏡神の意識とも夢で繋がっていた。……つまり、君がこの世界で見る夢には、特殊な力が作用してるんだ」
「……特殊な……」
そう、言われてみると……確かに、こっちの世界で見る夢の幾つかは、その時の俺達が関わっている事件の解像度を上げるようなものだったり、夢の中でしか会う事が出来ない人と会って大切な事を聞いたりする重要なものがある。
ベーマス大陸でも、あの夢のおかげで知る事が出来た過去があったのだ。
きっとこれも【黒曜の使者】の能力の一つなのだろうが、ブラックにそう言われてみると確かに俺の夢は普通とは違うと言える。
「そう、ツカサ君が夢で知ったことは、いつも僕達が“その時に直面している事件”に関するものだ。きっと、本来の【黒曜の使者】が使っていた能力なんだろうね。……今は文明神のせいで、捻じ曲がってしまっているのかも知れないけど」
「なるほど……だから、俺が見たい時に見られるってワケでもないんだな」
最初、俺は自分が見ている夢のことを気付きすらしなかった。
だけど、この世界で過ごすにつれてどんどん明確になって行って、今はブラック達が信頼してくれているから、夢の内容も真面目に話せるようになったんだ。
そしてその夢は、間違いなく「過去の記憶」だということをいつも思い知る。
……今まで意識してなかったけど、やっぱりこれも俺の能力なのだ。
だから、文明神・アスカーは……この能力も消そうとしたんだろうなあ……。
でも、結局捻じ曲げる事しか出来なかったってことか。
俺が夢の中で過去を知ることが出来るのは、アスカーが消しきれなかった【黒曜の使者】の能力を運良く発動できているからなのかも知れない。
俺が理解したことを確認したのか、ブラックはこちらの考えを肯定するかのように、コクリと頷いた。
「確かな事だとは言えないけど……全くの間違いってワケでもないと思うよ。けど、それでもツカサ君の力は強いものだ。もしかしたら、今回はその力が微妙に変容してしまっているのかも知れない」
「変容……?」
どういう事だろうか。
聞き返した俺に、ブラックは何故か一拍置いてハッと何かに気が付いたような顔をすると、首を振ってニコッと笑った。
「いや、そのホラ、ツカサ君が何度も夢を見たから強力になったのかなって。だから今回は、中途半端に現実感が残っちゃった、とか」
「うーん……そうかなぁ……」
「だってさ、食材が減ってたのは数え間違いで説明できるし、ロクショウ君達が見たのだって、主であるツカサ君の夢が伝播したからって可能性もあるだろう?」
そう言われると……確かに、その方がスジも通るけど……。
だったら「ヌエ」さんは何だったんだ?
ここまで来て、まさか夢の中の妄想でしたってワケでもないだろう。
「じゃあ、仮にそうだとして、あのヌエって人は何だったんだ?」
過去の夢でもなく、今の俺達とも関係なさそうな存在。
そんな人を夢に見た俺は、なんの事件に関わっているというのだろう。
全く分からなくてブラックに問うと、相手は腕を組んで唸ってしまった。
「ううむ……そこは僕にも分からないけど……。でも、何なんだろうねえ……」
最初は浮気だなんだと言っていたのに、ブラックも今は「ヌエ」という謎の存在に頭を悩ませている。……流石にもう浮気だとは思ってないんだよな?
だとしたら、誤解が解けて良かった……のかな……。
いやでも夢の中の人物だとしたら、余計に頭がこんがらがっちゃうよ。
ロクショウ達まで巻き込んだ謎の夢って、そんなの初めてでどう対処したらいいのかも分からないし……それに、ヌエさんが何に関係しているのかすらも謎だ。
っていうか、何の意味も無い夢だったら恥ずかしすぎる……。
ロク達まで俺のわけわからん夢に引きずり込んだなんて、どんだけファンタジーな頭をしてるんだよ俺は。現実を見ろ現実を。
「も、もし普通の夢ってだけだったら恥ずかしすぎる……っ」
恥ずかしくて、もうあの宿には行けない。いや行く気も無いけど!
改めてなんて事をしたんだろうかと再び顔が熱くなってきて、自分の行動の恥ずかしさに居た堪れなくなってくる。
う、うう、俺は自信満々で宿屋のおばちゃんになんてことを。
おばちゃん絶対「変なヤツだ」って思ったよなこれ……あぁあ……。
相手の心の中を想像してしまうとベッドの中に潜り込んで寝てしまいたくなったが……そこに、扉をノックする音が飛び込んできた。
「ったく……こんな朝から誰だ?」
再び不機嫌な顔になったブラックが、のっそりと立ちあがって玄関の方へ向かう。
デカくて広い部屋なだけに、玄関までちょっと距離が有るのだ。
もう狸寝入りでもしてしまおうか……なんて考えていると、ブラックが不機嫌顔を更に深めて寝室に戻ってきた。
「あのヒゲ王が、一緒に朝食をどうぞだってさ」
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「ああ……」
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「ゲッ!? お、お前なあ、あれが夢だったら浮気でもなんでもないだろ!?」
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「フ、フフ……後でツカサ君とのお楽しみが待っているなら、ヒゲ王との朝食も何とか我慢できそうだよ……」
顔に暗い陰を作ってニタリと笑う、まるでどこぞの悪役のような顔。
…………あれ、これ宥められるかな……。
不安になってしまうが、もう逃げる事は出来ない。
俺はロクショウ達に再びお留守番を頼むと、大量の冷や汗をかきながらブラックと一緒に部屋を出たのだった。
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