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豊穣都市ゾリオンヘリア、手を伸ばす闇に金の声編
栄養補給は食事でやれ2
しおりを挟む「ツカサくぅうん……ね、ちょっと……ちょっとだけ……っ」
「ツカサ……」
耳にぴったりとカサついて弾力のある何かがくっついている。
ソレが何かなんて気付きたくもないのに、さわさわとくすぐったく動いて、耳の穴に息を吹きかけて来るので、ブラックの唇だと解ってしまうのがつらい。
ちょっとだけって何が、何をちょっとだけなんだよ!
「はーなーせぇええ……!」
「うぅんツカサ君のいけずぅ……ね……ちょっとだけだから……」
「だから何がちょっとなんだよおおおお!」
頼むから離してくれと全力でブラックから逃れようとするのだが、クロウが俺の足を下から持ちあげて宙に浮かせているので踏ん張る事も出来ない。
それどころかクロウは俺のくっついた両足を簡単に割り開くと、その間にずんずん入って来て逃げ道すら塞いでしまう。クロウのガタイを足の間に挟まされたんじゃあ、簡単に足を動かすことなんて出来ないし……。
……っていうか、この状況ヤバいんじゃ。
こんな風に拘束されるのって、大抵えっちな事をされる時のような……。
………………。
「わーっ!! ばかばかばか離せオッサンどもこんな所で変な事するなー!」
「あ~ツカサ君たら先走ってスケベな事考えてるぅ~まったくもうスキモノだなぁ」
「ウム、そう期待されると応えたくなって来るぞ」
「応えんでいい!!」
やめろ、マジでやめんか。
俺が警戒してるのはアンタらが毎回スケベな事してくるからだよ!
断じて俺がスケベなわけではない、それだけは絶対だ。
……などと思うのだが、ブラックは上機嫌で俺の耳を唇だけ使ってやわやわ食んで来て、クロウは俺の両足を掴んだまま、体を折って肩口に顔を捻じ込んでくる。
ふうふうと二つの熱い息が顔や首に掛かって来て、自分を抱き留めている太い腕や足を掴んでいる硬い指が生々しく動くのが解って、そんな気持ちなんて微塵も無いのに恥ずかしさで体がカッカして来てしまう。
だ、だって、耳食われてるし、クロウの手がどんどん上がって来て、俺の両の太腿を抱えたまんま指でなんかむにむにしてくるし、そんなんされたら誰だってゾワゾワってしてくるじゃないか! 刺激を受けたら体がヘンになるのは人間のサガだろ!?
だからこれは俺がえっちなんじゃなくて、こんなことしてくるオッサンどもがえっちなワケでぇええ……。
「んん……ツカサ……ムッ……く、首筋が汗ばんで来たぞ……うまい……」
「ふっ……くっぁ……や、だ……な、舐めるなって……っ!」
粘着質な音がゆっくりと聞こえてくる。
熱い肌にそれより熱くて生温い何かが触れて来て、舌先で首筋のくぼみを執拗になぞりながら何度も何度も濡れた感触を俺に打ち込んでくる。
耳がかゆい、にちゃにちゃと耳にこびりつくようなわざとらしい音が鬱陶しい。
そんな、いかにも爽やかじゃない音を立ててゆっくり舐められたら、スケベな漫画や絵を見ていた俺には、もう“そういう行為”をしているようにしか思えなくて。
そのせいで、お、覚えのある感覚が……下腹部に…………。
……う、うぅうう……違うっ、これは不可抗力だ、こんなんされたら誰だってこうなるに決まってるんだあっ!!
だって、い、いつもならこんな、足を広げて熱がこもってる股間を曝したりしないし、空気が冷えてるのを感じるようにしたりしない。腰が動いてるのだって、こ、こんな事を不安定な体制でやられて恥ずかしいだけなんだ。
それに、ふ、太腿揉まれてるし、耳んとこずっと食まれててブラックの無精髭が時々ちくちく当たって、それが痛痒くてぞくぞくして……っ。
「あは……つ、ツカサ君……っ、ふ、ふふっ……こっ、こ、こんな格好で体が反応するのが恥ずかしいんだねぇ……っ! 寝室でもないのに二人掛かりでこんな事されておちんちん興奮して勃起しちゃう? い、いいよぉ……そしたら僕がツカサ君の精液枯れちゃうまで取り込んであげる……」
「ムゥ、それは困るぞ。ツカサ、オレも……オレもツカサの精液が欲しい……」
だあああ、だからっ、へ、変なこと言いながら顔を寄せて来るなってば!!
何でそうお前らは人前でそんな事を……っ。
ああもう我慢ならん。俺は拒否する、断固拒否するぞ。
大股開きで拘束されてるからってなんだ、お、俺だってな、いざとなったら……
「ああ……っ、ツカサ君可愛いぃ……ね、僕にもっとツカサ君を味わわせて……」
「なっ……ん゛っ、んんん……っ!」
いざ、と、なったらって思ったのに、顎を取られたと思った瞬間、ブラックの方へと顔を動かされて口を塞がれる。
押し付けられてきた少しカサついて厚みのある独特な感触は、忘れられようはずもない。これは、ブラックの唇だ。キスされてるんだ。
そう確信したら、もう、さっき以上に体がカッカして緊張してしまって。
相手を引き剥がそうと躍起になっていたはずなのに、ブラックの唇が俺の閉じた口を軽く窄めて食んだり、ちろちろと閉じ合わせた所を舌先で撫でて来ると、体が勝手に反応して上手く力がコントロールできなくなる。
力を入れたいのに、分厚くてぬめった舌で唇をこじ開けられると体が緊張してビクッと跳ねる。その変な緊張を解こうにも、鼻息荒く口腔に入って来た大きな舌が上顎を執拗になぞって縮こまる俺の舌を撫でると、また体が勝手に動いてしまって。
「ふぅっ……くっ、ん……ん゛ぅ、ふ……! んんっ、ぅ……うぅう……」
首筋からやらしい音がしてるうえに、ブラックが目の前だけじゃなくて口の中にまでいっぱいで、ぜんぶブラックで見えなくなって……っ。
う、うぅ……そんなつもりないのに、勝手に胸がドキドキして来る。
こんなことをしてる場合じゃないのに、こんな風にしてたらまたとんでもない事態になってしまう……あ、アドニスだっているのに……っ。
「んふっ……ふ……ふふっ……ツカサ君おいひぃ……」
「あぁ……ツカサ……ハァ、ハァ……肌が汗ばんで美味いぞ……」
「ん゛ーっ……んんぅうーっ……!」
変なこと言うな。そんな低い、お腹の奥がぞわぞわする声で言われたら、また体がおかしくなる。太腿に力が入って、我慢しようと思うのにひくひくしてきて、そんな気分になりたくないのに、こ、このままじゃもう。
「……もうそろそろ良いんじゃないですか。ここでおっぱじめられても困りますよ」
ふと、胡乱な声が聞こえた。
お、お、おっぱじめって。おっぱじめ……あ……目の前が明るくなった。
ブラックが口を離してくれたんだ。途端、空気が肺に一気に入って来て、痛いくらいに熱くて堪らなくなっていた顔が冷えた空気でぞわぞわしはじめる。
だけどもう俺は何度も呼吸するのに必死で、さっきの声に何も返せなかった。
そんな俺を置いて、首から顔を離したクロウが先に応える。
「ムゥ……まだ食い足りないのだが」
「栄養補給なんですからそのくらいで我慢して下さいよ。それとも、せっかくツカサ君が作ってくれた間食を無駄にしたいんですか? まあ、それならそれで私が三皿とも頂きますから構いませんよ」
「食べるに決まってるだろクソ眼鏡!! ックソ……ツカサ君も欲しいけど、ツカサ君の美味しいお菓子も覚ます訳にはいかない……ッ」
なんか凄く悔しそうだが、俺の貞操は俺の菓子と同価値なのだろうか。
それはそれで何かちょっと悲しいような……とは思ったが、ブラックとクロウが素直に退いてくれたので黙っておこう。俺はこの場で襲われたりはしたくない。
ブラックはブツブツ言いながらも俺を隣の椅子に座らせて、アドニスを睨みながら俺が持って来たホットケーキとティーカップを取る。
俺の前にもホットケーキを置いてくれたが、そういう紳士ムーブをやってくれるなら、さっきのスケベ行為をやる前になんとか抑えて欲しかった。
「ツカサ君、大丈夫ですか」
「えっ……あ、うん。なんちゅうか……あの……お、御見苦しい所を……」
「気にしてませんよ。この変態中年どもが発情する姿は何度も見てますから。……とは言え、今回は疲れもありましたからまあ……不問にしましょう」
疲れ。
そう言えば、部屋に入った時ブラック達は目の下に隈を作ってたんだっけ。
気になってブラックとクロウの顔を見やると、二人の顔は先ほどとは打って変わってツヤッツヤになっていた。そりゃもう、風呂に入った後みたいに元気溌剌に。
…………これ、俺の体液と曜気の力?
【グリモア】は俺から好きに曜気を引き出せて、クロウも特殊な獣人ゆえに人族の体液を啜って食事以上の栄養を得られるらしいので、二人が元気になるのも理解は出来るんだけど……こ、こうもあからさまにピカピカされると恥ずかしい。
だってその、つまり、さっき舐められたりキスされたせいで、二人はこんな風に元気になってるワケで、それを考えると……その……そのぉお……っ。
「はいはい、照れてないで休憩しましょう。ツカサ君、王族側もようやく話がまとまったようなので、食べながら話をしましょうか」
「えっ……あの件……?」
デジレがマリオ・ロッシだった件とか、事件の事とか色々結論が出たんだろうか。
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そう言いながら、まだ疲れた様子で、アドニスはクリームとフルーツを乗せたホットケーキの欠片を口に運ぶ。わりと甘いので大丈夫かなと思ったが、アドニスは結構甘いのも平気みたいだな。よかった。
でも……アドニスが目に見えるくらいの疲れを隠さないんだから、たぶん……いまから話す「判明していること」も頭が痛くなる話題なんだろうな。
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ああ、しかしどういう話なんだろう。
ブラックもクロウもグロッキーになってたんだから、良い話じゃないよな……。
どうか面倒な事になってませんようにと願いつつ、俺もホットケーキをパクついた。
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