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聖都バルバラ、祝福を囲うは妖精の輪編
覚醒 ※
しおりを挟む不可思議な光の玉が浮かぶ洞窟の中、躊躇いも無くツカサのコートを剥ぎ取る。深く眠った相手は自分の体をいいように動かされているにも関わらず、少しも覚醒する気配がない。
上着をたくし上げ、ズボンと下着を乱暴に脱がしても、ツカサはぴくりとも反応しなかった。風が届かないと言えど、この洞窟は肌寒い。なのに、彼はただ手足を投げ出して何の憂いも無いような表情を浮かべて目を閉じている。
強力な曜術を使い続けて疲弊したのか、それとも何らかの原因が有るのか。
ブラックにはそれを考える時間が有ったが、理性を捨てた今の状態ではただ目の前の無防備な少年に興奮を覚える事しか出来なかった。
「ツカサ、君……」
名前を呟き、柔らかい頬に顔を寄せる。
柔らかい頬に舌を這わせて目元まで舐めれば、ようやく相手は小さな声でひくりと反応を返して来た。
服を脱がされても平気だったのに、直接触れると感じるものが有るらしい。
(僕の手に……僕の舌に……反応、してくれてる…………)
荒い息を漏らしながら音を立てて唇を吸い、宝飾品に触るかのように素肌の胸を手でゆっくりと撫でる。するとツカサはまた「ん……」という鼻にかかった甘い声を漏らして、僅かに体を捩じろうとした。
やはり、ツカサは寝ていても自分の愛撫に反応するのだ。
その事が異様に嬉しくて、ブラックは荒い息を漏らしながらツカサの顎を掴み、強引に口を開けさせる。弛緩した顎はすぐに薄らと開いたが、全て開くのを待てずブラックはツカサの口腔に舌を捻じ込んで、思う存分舌を絡ませ吸い付いた。
「ん……う゛……ふ、ぅ゛…………」
注がれる唾液がうまく呑み込めなくて苦しんでいるのか、それとも息が詰まって苦しいのか。どちらにせよ、その声には甘さが含まれている。
キスをする度に体内の熱が蠢き、言い知れぬ力が湧きあがって来た。
欲しい。もっと、ツカサが欲しい。
そう思う度に、今まで枯渇していた何かが徐々に満たされるような深い高揚感に酔わされていく。まるで上等な美酒でも飲んでいるかのようだ。
ブラックはその感覚をもっと味わいたくて、キスを繰り返しながら再びツカサの胸に手を這わせて胸の周辺をゆっくりと擦った。
「っ……んぅ、う…………」
(あは……か、感じてるんだ……寝てても、僕の手に……)
指を乳首に掠めるように動かすごとにもどかしげに喉を鳴らすツカサに、愛しさと同時に強い渇望と熱が湧きあがってくる。
柔らかく張りのある瑞々しい肌の感触は、触れる度に下半身の熱を刺激した。
死に掛けの体でこれほどまでに興奮出来るのは、やはり目の前の相手が唯一無二の恋人だからだろうか。そう思えばいっそうツカサが欲しくなって、ブラックは躊躇いも無くキスを繰り返しながらツカサの乳首を指の腹で擦った。
「ぅ……んん……っ」
まだ勃ちあがってもいない、わずかに膨らんだ乳首を親指ですりすりと撫でると、それだけでツカサの体は反応し声を上げる。
何故かその事に異様に熱が溜まって行って、ブラックは思わず乱暴に乳首を摘まみあげてしまった。
「ぃあっ……! あ……」
「は……っ、はぁ…………」
起きない。
なら、もっと進んでも良いのだろうかと、唇を離して体を下にずらした。
長く唇を合わせていたせいか、移動すると唾液が口から垂れて、ツカサの顎から首筋へと粘ついた橋が落ちて行く。
どこまで自分は興奮しているのかと思うと酷く眩暈がして、ブラックは崩れ落ちるようにツカサの剥き出しの胸にむしゃぶりついた。
「っあぁ……っ、い……う……」
女とは違う、平らな胸。だが自分が触れた誰よりも優しい胸だ。
ツカサは気付いていないのかも知れないが、触れる度にツカサの体は柔く、男が好むような手触りに仕込まれている。最初は薄かった胸板も、執拗に愛撫し続ける内に、子供のような肉厚で中性的な姿に逆戻りする兆しを見せていた。
すべては、ブラックがツカサの体を思う存分に貪ったが故だ。
自分のために、自分の望むように、この愛しい存在は作り変えられていく。
それがどうしようもなく情欲を煽って、ブラックは慎ましやかに勃起した乳首を軽く噛みながら舐めまわした。
「ひっ、ぅ……ん、ぅ、あぁ…………や、ぁ……」
乳首を吸いながら臍の穴を軽く弄ると、それだけでツカサは身をくねらせて足を閉じる。寝ていても反射的に羞恥を抑えようとしているらしいが、いつも見るその姿はただ相手を煽る姿にしかならない。
男が、女のように羞恥を感じて微弱な力で身を守ろうとする。
その弱々しく征服された姿がどれだけ他人を興奮させるかなど、ツカサは考えもしないだろう。彼はただ、与えられる快楽に抵抗しているだけなのだ。
だが、それがたまらなく好ましかった。
何度抱いても失われる事のない、幼い処女のような慎み深さが愛おしい。
ツカサの世界ではどうか知らないが、ここでは男も女も回を増せば増すほど自分の欲望に忠実になり、街で誘っただけで簡単について来る。
それが悪いワケでは無く、むしろツカサのように性を恥じらう者ばかりになれば面倒な世界だと思うが、しかしそんな恥じらう相手を捻じ伏せて自分の欲望を思うさまぶつける事は、予想以上の悦楽だった。
しかも、相手が自分だけに全面的に体を許してくれていると言う事実が、自尊心をありえないほどに満足させる。
自分の施す愛撫に悶える愛らしい存在が“自分の全てを許す存在”だと思えば、充足感は膨らんで行った。
だが、今はそれだけではない。
心のどこかでずっと餓えていた「何か」に、初めて水が与えられたような感覚が有った。……それが何かは解らない。だが、ツカサの肌を唇で食むたび、控えめで可愛らしい喘ぎ声を聞くたびに、己の内の「何か」が満たされていくのだ。
ツカサとセックスしていて初めて覚える感覚に違和感を覚えたが、眼前の肢体に抗えるほど自分の欲望が大人しいはずも無く。
「つ……ツカサ君……っ、はぁっ……はぁ……ツカサ君……ッ」
手で容易く握れてしまう程度のツカサの陰茎を掴み、まだ完全に勃起していないそれを掌全体で包みながら扱く。
緩急をつけて根元から先端まで余す所無く弄れば、快楽に弱いツカサの小ぶりな陰茎は簡単に蜜をしたたらせた。
……本当にこの子は、無意識に人を誘うのが上手すぎる。
ひくひくとわずかに震える少年らしい形の性器に喉を鳴らし、ブラックはツカサの陰茎を難なく根元まで呑み込んだ。
「ひぁ、う……! ぅ、あ……あぁ……!」
腰がびくびくと反応している。
内腿まで唐突な強い刺激に戸惑って痙攣し、柔らかそうな肉が震えていた。
実に良い光景だ。
ブラックはそのまま扱く事も無く、ツカサの幼い陰茎を根元から舐め回しながら、唾液をわざとツカサの下腹部に垂らした。
「う、ぅ……っ、ふ……ぁ、あぁ……うあぁ、う……っ、やぁああぁ……っ」
寝言のような喘ぎ声に、辛そうな色が混じってくる。
ぐずる赤子のような無意識の困惑が耳に聞こえて来るたび、ブラックの下半身はずきずきと痛みを訴える程の快感に侵された。
――ああ、あまりにも可愛らしい。
まるで、快楽を知ったばかりで戸惑っている純朴な子供のようだ。
そんな相手の寝込みを襲って貪っているのだと思うと、自分を責める感情よりも背徳的な行為に対する興奮が増していく。
どこを舐めても舌に心地良く、嬌声は耳を蕩かすほどの艶やかさである未成熟の存在を愛撫し、その体が欲しいと思う度に、ツカサの喘ぎ声と比例するかのようにブラックの全ては満たされていった。
温かい、美味しい、嬉しい、満ちる、力が溢れて来る。
だが、それと同時に酷く飢えて、自分の自制の効かない下半身は暴発する寸前にまで勃起してしまっていて。
もう耐え切れないと訴え、じわじわと熱を籠らせていた。
「はっ、ハァッ、ハァッ……っ……」
先走りに濡れそぼるツカサの陰茎から口を離し、ブラックは自分でも驚くほどの性急さでズボンをずり降ろす。
そのままツカサの両足を高く上げてツカサの体を折り曲げると、露出した後孔に口の中に溜めていた唾液と先走りの液体を流した。
「ひっ、ぐ……う、うぅ……っ」
尻の谷間を開くように足を広げて体を曲げさせているせいか、苦しさと思わぬ所への寒さでツカサは戸惑っているようだった。
しかしその気持ちを慮る余裕などブラックには無く、突然の刺激に蠢く後孔に指を突き入れてぐりぐりと回した。
「っ~~~~! う、あ゛っ、あぐっ、う、うぅう……~~~ッ!」
理性の無い状態だと、ここまで苦しそうに喘ぐものか。
もしかしたらいつもは我慢しているのかも知れないが、しかし、今のように素直に苦痛に顔を歪めて覚醒しそうになっているツカサは酷く嗜虐心を満足させる。
ブラックが内部へと与える刺激に、薄らと目を開けて閉じると言う動作を繰り返すその姿と言ったら、実に哀れで愛らしく同情を誘う。
それと同時に人形を無理矢理壊す快楽にも似た感情を覚えさせ、ブラックは己のどうしようもない劣悪な感情に唾を飲み込んだ。
「……っ、は……はぁ、は……あ、あはっ……あはは……。こ、このくらいじゃ……起きない……? だったら、ふ、あははっ、僕のペニス、い、挿れようか……っ!」
自分でも何を言っているのか、解らない。
ただ、己の中の凶暴な衝動とツカサを支配したいと言う欲望に突き動かされて、ブラックは無理矢理露出させて開いた後孔に膨張しきった陰茎を突き立て、ぐっと先端を押し込んだ。
「――っ、あ゛っ、がっ……ぅあ、あ゛あぁ……――――!!」
「ッ……! ぐっ……」
押し開く後孔が、強く締め付けて来る。
その感覚はとても心地良くて、ブラックはツカサの悲鳴を耳にしても腰を落とす事を止められず、そのままゆっくりと己の怒張を捻じ込んで行った。
すると、さすがにその衝撃と異物感にはツカサも気付いたのか、悲鳴を上げる最中に覚醒したような声を漏らした。
「ふっぁ゛、うぁあ゛……っ、ひ、ぁ……や、ぃっあ、あぁあ゛、ぁあ……!」
ああ、起きてしまった。
けれどもうここまでやってしまうと、ツカサの熱く蕩けるような心地良い体内から己を引き抜く事など出来はしない。
ツカサのナカに収まったまま軽く腸壁を擦りあげるように動かすと、ツカサは眉を困ったように歪めて、赤面しながらイヤイヤと首を振った。
快楽に支配された体から強制的に送られてくる刺激に、心が追いつかないのだろう。その姿が言いようも無く愛らしくて、ブラックは腰を動かしつつ、ツカサの顔をもっと良く見たくて体を屈めた。
蠱惑的な表情と、涙に濡れた琥珀色の瞳は、何度見ても美しい。
何もかもが満たされたこの状態でその表情を見れたら、どんなに良いだろう。
そう思って、ブラックはツカサの頬に手を当て、自分の方を向かせ――――
びくりと、動きを止めた。
「――――――ぁ……」
真っ赤に頬を染めて、泣きぬれた、あどけない顔。
この世界で一番愛しいと言っても過言ではない相手のその瞳は、涙できらきらと光る宝石のように美しい琥珀色の瞳……――――である、はずだった。
なのに、今、ブラックが見ているツカサの瞳は…………。
涙にぬれて艶やかに光る、漆黒の闇に染まっていた。
「ツカサ、君……」
こんな、瞳だっただろうか?
どくどくと煩いくらいに脈打つ心臓と、朦朧とする頭が思考を遮る。
戸惑う自分に、ツカサは辛いだろうに必死にぎこちなく微笑むと、ブラックの方へと手を伸ばして抱き締めて来た。
「ぶら……っく…………うれ、し……」
「っ…………」
「すきに……して…………」
息も絶え絶えに告げられた、言葉。
その言葉は、何故か強烈な違和感を覚えさせたが――――
「ッ……ぐ…………っ!」
その声に反応して、熱が膨張する。飢餓が激しくなる。
もっと目の前の愛しい少年を喰らいたくて、思う存分に犯し尽くしたくて、衝動が込み上げて爆発しそうになる。
その熱に抗う事が出来ず、ツカサを抱き締め激しく抽挿を繰り返した。
「あっ、うぁああっ、やっぁっは、っあぁあ、ひっ、ぐっ、ひっぁっぁあぁ……!」
甘い声を上げて、自分を締め付けて、存分に自分を悦ばせる恋人。
その全てに満たされ、飢餓は薄れていくが、ブラックは最後の最後でわずかに残った理性に引きとめられて、達する寸前の陰茎をツカサから引き抜いた。
「い゛っ、ぁ、あ゛ぁあ……!」
「っ、は……だ、出すよ……ツカサく……っ――――……!」
息が詰まり、脳天まで痺れさせるような感覚が突き抜ける。
それと同時に白濁した精液が飛び、ツカサの肌を穢した。
「はぁっ、は……はぁ……っ……」
息をして、震える足で自分を支えきれずに座り込む。
ツカサは熱に浮かされた顔で荒い息を繰り返していたが……やがて、また目蓋を閉じると眠りについてしまった。
「つかさ……くん……」
息を必死で整えて、ツカサの顔を見やる。
冷静になって来ると先程のツカサの目が気になってしまい、頬を軽く叩いたが、ツカサはちゃんと覚醒する事も無く、微かにと目を開けるとまた閉じてしまった。
だが、その時の目はちゃんとあの自分が大好きな琥珀色にとろけていて。
「…………見間違い……かな…………」
正直な話、あまりに興奮していたせいで認識力は落ちていた。
何故だか判らないが……いや、恐らく雪崩の中で曜気を使い続けていたせいか、酷く飢餓感があったし、なによりツカサの艶めかしい肢体が目の前に据え膳として横たわっていれば、ブラックの理性なんて脆い物だ。
恐らく、自分は無意識の内にツカサのくれる曜気を欲していて、それが飢餓感の原因になっていたのだろうが……なんにせよ、悪い事をしてしまった。
寒さのせいか性欲が一気に抜けてしまい、ブラックは急に申し訳なくなりながら、ツカサの体を脱ぎ捨てたローブの端で拭って服を着せた。
「ツカサ君…………ごめんね……」
意識がはっきりしたのも、飢餓感が消え去ったのも、ツカサが行為の最中に自分の状態を知って無意識に曜気を与えてくれたからだろう。
……まったく、本当に慈悲深い子だ。
いつの間にか乾いていた服を着て、ツカサを抱き上げる。
彼はよっぽど疲れてしまったのか全く目を開けなかったが、けれども温かい体と微かな呼吸は彼が生きている事を教えてくれて、ブラックは息を吐いた。
「起きたら、怒って良いからね……ツカサ君…………」
なんて事をするんだと激怒して、殴る気のない拳でぽこぽこと叩いてほしい。
ブラックには甘く優しくなってしまう態度を隠しきれない怒り方で、きっと。
そう思って抱き締め、ブラックはただツカサの覚醒を待ち続けた。
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