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彩宮ゼルグラム、炎雷の業と闇の城編
19.君のその姿が好きなんです*
しおりを挟む「ツカサ君……」
俺の態度が余程嬉しかったのか、ブラックは猫のように俺の首に鼻を擦りつけて来る。頬に柔らかいくせっ毛がふわふわ当たる感触が心地良く、思わず目を細めると不意に唇が首筋に当たって息を呑んだ。
「んっ……」
「ふふ、今喉が動いたね……。ツカサ君の喉瘤は小さすぎて解らないけど……ここにあるのかな」
「う゛ぁっ!?」
言うなりブラックは俺の喉の部分に軽く噛み付いて来て、すぐに歯を離すと驚きで引き攣る俺の喉仏の辺りを舌でなぞり始める。
あっ……の、喉瘤って、もしかして喉仏の事……? それが小さいって……。
「っ、ばっ、ばかっ、俺だってもっと大人になればっ……ひぐっ……!」
「んん……声を出す度にココが小さく動いてるね……。ほんとにツカサ君はどこもかしこも可愛いんだからなあ、もう……」
「ぅくっ、ひ……ぅ……う゛……っ」
喉仏の部分をつんつんと舌で突かれると、喉の気管を直接押し込まれているようで苦しくてたまらない。ブラックのどこかしらを掴んで離そうと思っても、鎧で身を固めた相手では髪の毛くらいしか掴めなかった。
仕方なく肩当の部分に手をやって押し戻そうとするが、ブラックは構わずに舌をゆっくりと降ろしながら俺のシャツのボタンを外し始める。
それがどんな意味を持っているかなんて、言うまでもないだろう。
約束を破る気かと思って、俺はブラックに抗議した。
「やだっ、しないって……っ」
「セックスはしないよ。でも……ただ話をするだけじゃ勿体ないだろう?」
「だ、だからって……」
「いいから……ねえ、あれから先の事話してよ、ツカサ君」
時間がないよ、と言いながら俺のシャツを寛げて裸を曝す相手に、時間がないのにウロチョロしてたのは誰だと言いたくなったが……怒っても仕方ないので、ぐっと堪えてお望みどおりに話し始めた。
……せっかく二人きりなのに、喧嘩するのもなんだし……。
「えっと……ブラック達と別れて、帰って来た後……ヨアニスに話をした。あの人もう正気に戻ってたから、全部訊いてくれて、んっ……!?」
「良いから、続けて」
続けて、って……胸にちゅうちゅう吸い付いて来て何が続けてだ!!
人が大人しく話してやりゃあ調子に乗りやがって……っ。
「お前なあっ!」
「……ん? 話すのやめて、別の事でもする……?」
そう言いながら俺を見上げて来るブラックの菫色の瞳は、ぎらぎら光っている。
余裕があるように見せかけて、全く余裕のない目。今すぐにでも喉首に噛みつきたいとでも言わんばかりの、獣のような目だ。
俺が「話すのをやめる」と言えば……恐らく、ブラックは俺をすぐに押し倒して来るだろう。これがただの自惚れならばどんなに良かったかと思うが、残念ながらブラックは俺が思う以上に危うい。
その危うさを、今俺に触れるだけで我慢しているのだ。
普通の人間なら当たり前の我慢なのに、それをさも特別なように見せて。
「…………ずるい……」
「ずるいのはツカサ君だよ。僕は今だって我慢してるのに……なのに、ツカサ君はいつも性欲なんてありませんって顔してさ……。僕はツカサ君を見ているだけで、ツカサ君の事を一日中滅茶苦茶に犯したくなるのに……」
「そりゃアンタが異常なんだよ!」
「その異常な奴を恋人にしたのはツカサ君でしょ!!」
「ぐっ……」
そ、それを言われると弱い……。
でも俺は普通なんだからしょうがないじゃないか。アンタみたいに四六時中発情するほど性欲も精力もないんだよ。男としてはどうかとは思うけども。
だからいつも拒否しちゃう事が多いって言うか……。
でも、ブラックはそれが不満なんだよな。
「だからさ、二人っきりの時くらい甘えさせてよ。……ね?」
「う……うぅ…………」
そりゃ……そりゃあ、言いましたけど。イチャイチャするの頑張るみたいな事を俺も言いましたけど。でも、いつ呼びに来るか解らないのに、シャツを開いて人に胸を弄られながら話をしてる所を見られたら、憤死するほど恥ずかしいじゃないか。俺は嫌だぞそんな所見られるの。
扉の方を見ながら顔を歪めると、ブラックは俺の言わんとする所が判ったのか、ふうと溜息を吐いてブラックは立ち上がった。
「んもー心配性だなあ。鍵を掛けてるから大丈夫だってば」
「でも……」
「それともツカサ君……僕が触れるのが嫌なの?」
「はぁ!? そ、そんな事誰も言ってないじゃん!!」
バカ言うなよ、じゃあこの状況は何だってんだ。
好きでも無い奴にこんな事簡単にさせると思ってるのかアンタは。って言うか、アンタじゃなきゃシャツだって触らせないし、股の間に体を捻じ込まれたら即座にビンタしてるっつーの!!
こ、恋人って言うか、その……ブラックだから許してる事なのに、「君って尻軽じゃないの」みたいな事を言われると流石に俺だって怒るよ。
誰がお前以外の奴の前でこんな恥ずかしい恰好すると思ってんだ。
こんな事して我慢してやってるのなんて、アンタにだけなのに。
お前こそなんで何回もやってて解ってくれないんだよ。
バカ。本当馬鹿。三百六十倍バカ!!
いつの間にか股の間に陣取って、俺の両足を肩当に乗せているブラックに、調子に乗るなとチョップを食らわせる。
ブラックは「あいてっ」とお気楽そうな声を出したが、俺の態度のどこに面白い要素が有ったのか、またいつものようなだらしない笑みを浮かべると、俺を見上げて少し距離を縮めて来た。
「あは……ごめんごめん。そうだよね……ツカサ君は僕の恋人だから……僕の事が大好きだから、こうして許してくれてるんだよね」
「うぐっ……も、もういいから、話するぞ!」
つーかなんだこの格好。苦しいんだけど。
お前が近付いて来るたびに足が持ち上げられて苦しいんですけど! 肩当に足を乗っけんのやめて!
慌てて降ろそうと足を動かしたが、このまま逃げようとすると絶対にM字開脚みたいになるので足の付け根にダメージが。
ヤバい。この状態で動かすと最悪筋肉が攣るぞ。
「うん、いいよ……ツカサ君は話しててね!」
「…………」
この野郎、何が何でも俺をいじめながら話をする気か。
……そっちがそう言う気なら、俺だって負けないぞ。
気を引き締めてブラックを睨むと、相手はとろけそうな笑みに顔を歪めて俺の胸に再度吸い付いてきた。
「んぐっ……!」
近付かれると肩当に乗せられた足が上がって、上半身に付きそうになる。
その体勢が苦しくて眉根を寄せるが、ブラックは俺の呻き声も気にせずにまだ勃っていない乳首に舌を這わせて、ちろちろと舌で愛撫し始める。
それだけでもう下腹部がぎゅうっと熱くなってしまうのが悔しくて、俺は意地で耐えて話をしようと口を開いた。
「っ……そ、れで……っ、ヨアニス、に……アレクの事話したらっ……あの、指輪の文字が……古代遺跡の、妖精文字、だって……っ」
「妖精文字?」
熱い息を胸に吹きかけながら問いかけてくるブラックに、俺は頷く。
だが、説明しようとして口を開いたと同時、少し弄られただけで勃ってしまっていた乳首を強く吸われ、もう片方も指で捏ねられてしまい、俺は完全に油断していた事も有って大声で喘いでしまった。
「っあぁあ……! だ、めっ、音、やだっやぁあっ……!」
「んむっ……話の続きは……? ほら……早くしないと、時間無くなっちゃうよ」
「う、うぅう……っ」
「ほらほら、応援してあげるから」
そう言いながら、ブラックはまた乳首に吸い付いて、今度は舌で乳首を軽く包み強く吸い付いて来る。まるで出てこない“なにか”を吸おうとするようなその動きに否応なく反応してしまい、俺は耐え切れなくて熱で膨らみだす股間を抑えるように内股を閉じようとしたが……残念ながら、その足はブラックの顔を挟む程度にしか動いてはくれなかった。
「んんっ……! ふっ、ふははっ、ツカサ君の太腿気持ちいいなあ……! ああ、そうだ、今度はツカサ君のココに顔を埋めて寝たいなあ……」
顔が下にずれて、俺の軽く膨らんだズボンに思い切り高い鼻を突き合わせて来る。ズボンの上からでも判るくらいの衝撃を与えられて、俺は思わず悲鳴を上げてしまった。
「ひぁっ!? やっ、な、なんでソコに」
「だって、両側からツカサ君の柔らかい太腿で顔を挟まれて、そのうえツカサ君の可愛いおちんちんに顔を突っ込みながら寝られるんだよ? 軽く天国だよね」
「そんなクソみたいな天国あってたまるかああああ!!」
なんだそれわかめ酒より最悪な余興だなオイ!!
人様の股間に顔を突っ込んで寝たいとか変態かお前は……って変態だったなコンチクショウ! ああもうなんでそんな事言いだすんだよ、なんなんだよ!
「ツカサ君可愛い……。すぐ涙目で赤くなっちゃうんだから……ふふ……」
「ぐぅうう……」
「でもさあ、ズボン越しじゃ意味ないんだよねえ。こういうのって、ちゃんと素肌の柔らかさを感じないと意味がないし……」
「ぅえ……」
また何か変な事言いだしたぞこのオッサン。
もう勘弁してくれよと眉根を寄せると、ブラックは愉悦極まれりと言わんばかりの笑顔で目を細めて笑いながら、肩当に乗せた俺の足を下から持ち上げて、一気にズボンを抜き去ろうとしてきやがった。
「やっ、やだっ、やだってば! ひぐっ、しっ……しなぃっ、て言ったのにっ!」
「だから、セックスはしないってば。……でも、ツカサ君がちゃんとお話ししてくれないと……流石に僕も性欲が抑えられなくなっちゃうなあ」
そんなのズルい。さっきから俺にちょっかい出して喋らせまいとしてるくせに。
変な事言って、精神攻撃までしてくるくせに。
この上ズボンまで脱がされたら、どうせ難癖付けられてヤられちゃうじゃないか。バカ、そんな場合じゃないのに。ばかあぁあ……!!
「ぅ、うぅう゛う~~……っ!!」
「あー泣いちゃった。久しぶりだからかな、今回は泣くの早いねえ」
「あぁあああ人でなしぃいいい゛い!!」
「あはは、ごめんごめん! セックスしない、えっちしないから……ね? それはこの事件が終わった時まで取って置こ? 約束約束。だから……今は、僕の好きにさせてよ。ね、ツカサ君」
「うぐ……っ、ひっく……からかったら、も……しない゛からなっ……!!」
元はと言えばアンタがからかったりしなければ、俺だって触るくらいは我慢してやったのに、それをこんな風にこじらせるから話がややこしくなるんだぞ。
いい加減にしろと睨み付けると、ブラックは眉をハの字にして「ごめんごめん」と軽い口調で謝りやがった。ああもう謝罪が軽い。軽すぎる。
何で俺こんな奴好きになっちゃったんだろうもう嫌だ。
「さ、続きを話して……僕もちゃんと聞くから」
「…………ぅう……」
そうは言っても、俺はもうズボンも下着も脱がされちゃってるし、ブラックは「ちゃんと聞く」とか言いながら、もう俺の足をぐっと開いて荒い息を漏らしつつ舌なめずりしてるし。何一つ反省してないじゃないか。
女々しいけど、俺泣いてるんですよ。顔真っ赤なんですよ。
なのにアンタはやっぱりやらしい事をしようとするんですか。するんですね。
そうだね、だってそういうヤツだもんね、ブラックは……。
「ほら、早く。妖精文字の所から」
「……うん…………」
もう言わなきゃどうしようもない。
俺は嗚咽をぐっと堪えると、震える口でまた言葉を発した。
「よ……妖精文字っていうのは、ジェドマロズにっ、関係あるらしくて……」
はあはあと荒い息が聞こえる。
無理矢理開かれた股の間で緩く持ち上がっている俺のモノに、その熱い吐息が掛かるのを感じて、俺は震えた。
「だから、便宜上……っ、ふぁっ……や……」
「便宜上そう言われてるんだ? へえ……その文字は知らなかったな」
喋る息が先端に吹きかけられ、腰が震えてしまう。
下腹部に力が入る度に興奮で自分のものが勃ち上がってしまっているような気がして、俺は耐え切れずに顔を逸らしてしまった。
だけど、それで全てが判らなくなるはずも無くて。
「それで、指輪にはどんな事が書かれていたのかな……?」
低く耳を擽るような声で問いかけて、ブラックは勃ち上がりかけていた俺のモノを、一口でぱくりと食べてしまった。
「っあぁああ! ひあっ、や、やだっ、もっだめっ、だめぇっ……!」
膝を立て逃れようと動くが、ソファに座らされていては後ろにも退けない。
それを良い事に、ブラックは根元から指で擦りあげながら先端を舌でぴたぴたとノックするように弄り回す。久しぶりに感じる生暖かい口内はとても気持ちが良くて、激しい責めに熱を持った自身はびくびくと脈打ってしまっていた。
気持ちいい。ブラックの口の中で舌に弄られて吸われるたびに、頭は簡単に快楽漬けになって腰が動いてしまう。
ブラックの熱い鼻息が下腹部に掛かるだけでも、もう俺は喘いでいて。
それだけ興奮しているんだと自覚すると、余計に熱は上がってしまった。
「も、らぇっ、話し、できなっ……ひ、ぁ、あぁあっ……!」
首を振って、ブラックに「無理だと」訴えようと顔を向けるが、相手は俺を見るどころではないようで、必死に股間にむしゃぶりついていた。
その顔は、少し眉を顰めて頬を赤く染めていて。
唾液か先走りかも良く解らない液体を顎から垂らしている様は――――何故か、俺を異常に興奮させて、理性を掻き消してしまった。
「もっ、イッちゃう、いくぅっ……! ひっ、あ、あぁあああ――……!」
……俺はそのまま絶頂を迎え、ブラックの顔を太腿で挟んだまま、相手の頭を抱えるようにして射精した。
そう、あまりにも男らしくない格好で。
自分でもおかしいと思う格好だったけど、もうその時は何も考えられなかった。
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