9 / 76
9話 同居
しおりを挟むチスンと付き合うようになって1週間が経った。
会ってはいないが、毎日連絡はしている。
2人は久しぶりに食事に行くことにした。
初め2人はぎこちない雰囲気だったけど、食事をしているうちに段々と会話に慣れてきた。
「ごめんね。前に来たことがあるお店で…」
「いいえ。大丈夫ですよ」
以前スジンと待ち合わせをした、事務所の関係者しか入れないお店だった。
「他に行けそうなとこ、探しておくから」
「ありがとうございます」
「久美子さん…敬語じゃなくていいよ」
「あ…そう…ですね」
「アハハ…俺もタメ口で話してるし」
「…わ、わかった!そう…する!それから…」
「ん?」
「私のこと、呼び捨てで呼んでいいよ。クミコでもクミでも」
「じゃあクミって呼ぶよ!俺のことも呼び捨てでいいから」
「うん!チスン♡」
チスンは照れて顔が赤くなった。
(可愛いな…チスン♡)
「そういえば、スジンさんには俺達のこと話したから」
「そうなんだね。大丈夫だった?」
「初めはちょっと怖かったけど、喜んでくれたよ。俺自身に驚いてた。」
「そっか…よかった。私もお店の店長に話してもいいかな?」
「店長って、美容室の?」
「うん。私のこといつも心配してくれてるし、信用できる人だから」
「…クミが信用してる人なら話していいよ」
「ありがとう!」
それから3時間、2人の会話は尽きることはなかった。
「もうこんな時間か…あっという間だね」
「本当だ」
「お互い明日も仕事だし…帰ろっか」
「そうだね…」
「俺の仕事がもっと早く終わればいいんだけど…また1週間後になりそうだな」
「うん。また来週ね」
翌日。久美子は仕事のお昼休み、早速店長にチスンと付き合っていることを打ち明けた。
「嘘~~‼︎チスンと⁈あのチスンと⁈」
「誰にも言わないで下さいよぉ~」
「もちろん言わないけどさ~。え?本物のチスン?チスンに似てる人でしょ?」
「本物のチスンです…」
「ちょっと…クミちゃん、羨ましいんだけど!ていうか、凄すぎる…」
「今度、機会があれば紹介しますね」
「うん‼︎是非是非‼︎うわー楽しみぃー」
店長は思った以上に興奮していた。
(やっぱりチスンはすごいな…そんな人と付き合ってるなんて、幸せ過ぎる…)
久美子はつくづくそう思った。
それから3日後。久美子は自宅でくつろぎながら考えていた。
(あと3日寝ないと会えないのか…早くチスンに会いたいな…)
そんなことを想いながら寝る準備をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
(23時過ぎてるのに…誰だろう…)
恐る恐るドアを開けるとチスンが立っていた。
「チ、チスン!どうしたの⁈」
「ご、ごめん…こんな時間に」
「いいんだけど…どうしたの?」
「…どうしてもクミの顔が見たくなって…我慢できなかった…」
「チスン!もう…嬉しいんだけど…」
「本当⁈」
「私も会いたかった!」
「クミ…もしかしたら寝るところだった?」
「あ、う、うん」
「ごめんね。もう帰るね」
「えっ?もう帰るの?」
「顔を見に来ただけだから」
帰ろうとするチスンを引き止めた。
「ちょっと…上がっていく?」
「え…でも、遅いし…」
「お茶でも飲んで行って。ねっ」
「う、うん。じゃあ…」
「お邪魔します」
「どうぞ。狭いとこだけど…ここに座ってて。お茶いれるね」
「うん」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「すごく狭いでしょ…」
「そうだね…そこで寝てるの?」
「うん。そうだよ」
チスンはしばらく黙って、何かを考えていた。
「どうしたの?」
「…クミ、俺の家に住まない?」
「え⁈」
「部屋余ってるし…それに、俺の都合で週に1回しか会えないのは無理…」
「それは私も同じ気持ちだけど…」
「じゃあ一緒に暮らそう。寝るのは別々でいいから…」
「本当に…いいの?」
「もちろん!」
「じゃあ…そうする‼︎」
「それじゃあ…3日後から来る?」
「そうしたいけど…ここ、急に解約出来ないよ」
「俺が何とかするから、大丈夫!」
「本当?大丈夫なら…行きたいな♡」
3日後。久美子は店長に休みをもらい、荷物をまとめていた。
午前中で仕事を終えたチスンは、久美子を迎えに行った。
チスンのマンションに着き…
「どうぞ」
「お邪魔します」
あまりの広さに驚く久美子。
「こんなに広いところに1人で住んでるんだね。さすが芸能人って感じ…」
「クミが住んでたところよりは広いかな」
「そんなの、比べものにならないって‼︎」
「ここの部屋、使っていいからね。ベッドもあるし」
「ありがとう。チスンの寝室は?」
「あっちの部屋」
「お手伝いさんはいないの?」
「いないよ」
「じゃ、掃除なんかは全部チスンがしてるの?大変でしょ」
「もう慣れたよ…」
「これからは私に任せてね!」
「やらなくていいよ」
「いいから、それくらいやらせて‼︎」
「…わかった、ありがとう。それから近いうち、店長さん呼んだら?食事会でもしようか」
「いいの⁈きっと喜ぶと思う!」
この日から、2人の同居生活が始まった。
6
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ガネット・フォルンは愛されたい
アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。
子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。
元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。
それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。
私も誰かに一途に愛されたかった。
❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。
❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる