上 下
5 / 7
   5

あの子は澄ました女の子

しおりを挟む
「あの子ってさ、ちっともなじまないわね」
 転校生が来るようになって、もう1週間がたつ。
みんなそこそこ、気を使って、声を掛けたりしていたのだけど…
どうも反応が、今ひとつなのだ。
気づいていないのか、よっぽどの鈍感なのか、
それとも実は横柄な性格なのか…
予想していた反応とは、まったく違うので…
「何よ、あの子!
 ずいぶん、お高く留まってさ!」
ついに、サヤカがユリコたちに、文句を言い出した。
それを聞いて、困った表情を浮かべるけれど…
「一人で寂しそう、と思ったから、お弁当を一緒に食べるか、と
誘っのに、
『私は、1人が好きなんです』と断るのよ!」
何なの?
不満そうに、口をとがらせる。

「へぇ~そうなの?」
 ナギコにしてみれば…ちっとも気にならないレベルだったので、
「きっと、恥ずかしがり屋さんなのよ」
そう言ってはみるものの、まったく確信はない。
もちろん、あてずっぽうだ。
「えっ?」
 サヤカが、呆れたように笑うと
「恥ずかしがり屋の子が…堂々とみんなの前を素通りすると思う?」

 普通はコソコソと、するもんじゃないの?
そう思う灯里なのだが…
「そういう人なのかもしれない」
淡々とした口調で、そう言う。
「そうなのかなぁ」
まだ納得のいかない様子だ。
「いいんじゃないの?」
隣のクラスのコトネが…フラリと教室のドアから、顔をのぞかせる。
「だって、転校生なんでしょ?
 それじゃあ、まだ…周りになじんでいないんじゃないの?」
「そうなのかなぁ」
 ナギコにしてみれば、どんな人なのかもわからない。
まだ、どんな性格なのかも、わからないのだ。
でもまぁ…取って食うわけではないので、
「わかった!何とかがんばってみる」
サヤカがキッパリとした口調で、そう宣言した。
しおりを挟む

処理中です...