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第九章

9-12 研修会 in ダンジョン④

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「カズ様、少し恥ずかしいです…。」

少しだけなんだ…。俺は全面的に恥ずかしいぞ…。
しかし、ベリルは飄々としている。

「主殿、何ら恥ずかしいことではございません。私たちが愛しているという証を見せつけることができたのですから!」

 何故か、ベリルはふんすかしている。
これが種族の差というものなのか…。

「あの…、それほど良いものなのでしょうか…。」

ミリーさん、興味津々です…。

「それは、もう官能的です。
 ある者は甘美と言いますし、ある者は天にも昇る気持ちとも…。」
「そんなに?!」
「あ、それはちゃんと愛するヒトが出来たらね…。」

 興味があるのは当たり前。でも、ちゃんと愛すべきヒトとね。

「さて、午前中でダンジョン研修は終わるけど、お三方はどこに行きたい?」
「私たち、バジリスクが当面の目標でしたが、ニノマエさん方のお力がどこまで通用するのかを見てみたいです。」
「という事だけど、どうする?ディートリヒ、ベリル?」
「そうですね、万全な人数ではありませんが、おそらく第25階層まではいけると思います。」
「25階層のボスは何だっけ?」
「ワイバーンです。」
「お、空を飛ぶのはコカに続き2体目だね。」
「いえ、キラービーとかが居ましたが…。」
「あれは虫だからカウントに入らない、と判断します。
 そうか、ワイバーンか。どうやって倒すかだな。」
「そうですね…、剣撃では落とせませんので、魔物を地上に落とす方法を考えないといけませんね。」
「落とす?あ、落とせばいいのか?」
「地上に居れば、バジリスクと同等です。」
「んじゃ、そこまで探索しつつ、少し試したいものがあるから、試していこう。」
「はい(はい)。」

 3人はまた唖然としている。
止めるという判断もあったのだろう…、でも負ける気がしないんだよな。
それに飛んでいるモノを落とす、つまり落ちればいいんだ。
落ちること、それは重力なんだよな。
重力1Gで飛んでいれば、重力2Gでは?
確かジェットコースターの重力は3~5Gかかるって言われてた。その感覚もある。
イメージできれば魔法は放てる。
後は距離だな。

 20階層のボス部屋のバジを瞬殺し、21階層へと向かう。
なんか、今までの魔物のオンパレードだ。難なくいける。
22階層も同じく難なくクリア。
23階層…、山岳地帯だが、探索をかけながら進むと、何か違う鉱物を感じる。

「皆、ちょっと待って。」

 岸壁に鉱物の集合をかけ、塊を抽出する。

「あ、金だ…。これどうすりゃいいんだ?」
「カズ様、これは高値で売れますね。」
「そうなんだ…。」

 なんだか、この塊を見ても大金持ちになったという気分が沸かない。
あ、インゴットに精錬して、向こうの世界に持って行って売るか。
そんな事を考えていると、その下に違う鉱物を見つける。
同じく集合をかけ、塊を岩肌から抽出すると、出ました!オリハルコン!

「これは、オリハルコンでしょうか?」
「鑑定したら、そう出てるんだけど…。」
「はぁ、カズ様はいとも簡単に大金を手に入れるんですね。」
「え、これって、武器とか防具にした方がいいじゃん。」
「カズ様、オリハルコンですよ。売った方が良いです。」
「でも、武器にした方が良いよな…。あ、アダマンタイタイだっけ?あれを見つければオリハルコンを売ろう。」
「アダマンタイタイ?あ、アダマンタイトですね。
 この階層に出ますかね?」
「見つければいいんだよね。」
 俺は、金、ミスリル、オリハルコン以外の鉱物が無いか探索してみる。
なかなか無い…、でも感じる。
俺は麻薬探知犬のように、その方向引き寄せられていく。

 なんだか黒い岩肌にぶつかった。
この奥の方に数個見つけることができた。
集合!そして、岩肌から分離!と魔法をかけていくと、ゴロンとバスケットボール大の赤黒い塊が出てきた。

「あの…、皆さん、これがアダマンカイカイですか?」
「私たち、鑑定持ちではないので分かりませんし、アダマンタイト自体を見た事もないので…。」
「そうだよね…。まぁ、取り合えず持って帰りますか…。」

そして24階層、ここのモンスターボックスは何だろう。
おそらく強い魔物のオンパレードなんだろうな…。
そんな事を思いながら、注意して入る…。うん。ホワイト・バジリスクだ。

「強そうだけど、俺が一掃しようか?」
「それですと、私たちの力量が分かりません。ここはいつものとおり外側の雑魚をカズ様とエレメンツィアとミリーで、バフはニコルの硬化とカズ様のもろもろ。私とベリルの剣撃でどこまでいけるのか確かめましょう。」
「良いけど、決して無理はしちゃいかんよ。」
「分かっています。無理だと分かれば、すぐに援護をお願いします。」
「了解!んじゃ、行こうか!」

 みなにバフをかけて、いざ出陣!
皆、良い動きになっている。
魔物をサクサクと倒していく、そして数分後にはホワイト・バジリスクのみとなる。
しかし、堅い!
剣撃も剣もなかなか致命傷にはならない。

「堅いな。」
「そうですね。もう少し動きを止めることができれば…。」
「んじゃ、試しに魔法撃ってみる!」

俺は、ホワイト・バジリスクの周辺だけ重力が加算されるイメージ、そうジェットコースターのGをイメージし、魔法を放った。

「いけ!グラビティ!」
 
 ホワイト・バジリスクが地面に沈む。ジタバタしているが動けない。

「カズ様、一体どんな魔法を…。」
「うん。あの魔物の上に重い空気を乗せてやった。」
「は?空気は思いのですか?」
「まぁ、今そんな話をしている場合ではなく、早く止めを…って、ベリルが脳天刺しているわ…。」

 戦闘終了でした…。
グラビティ、結構いいです。
これで、ワイバーンも行けるでしょう。

「主殿の魔法は、規格外ですね。」
「はい…、俺もそう思う。」
「しかし、カズ様、空気に重さがあるとは…。」
「いや、そりゃあるよ。それに空気の濃い、薄いもあるよ。」
「そうなんですか?」
「こりゃ、一から教える必要があるな…。
 まぁ、難しい話は家に帰ってからしようか。」
「はい!そのイメージが沸けば私たちもできるはずですよね。」
「そうだね。」

「あの…、ニノマエさん、これまでに使った魔法を私たちも覚えることができるのでしょうか。」
「ん、昨日も言ったけど、出来ると言えば出来るし、出来ないと言えば出来ないよ。」
「すみません…。その意味が分からないのです…。」
「そうか…、んじゃ歩きながら話そうか。」

 24階層を越えボス部屋までに行く間に、その話をする。
要は信じているモノを一回そぎ落とすこと、固定観念があれば何もできないことを話した。
そのためには、俺に全信頼を寄せる必要もあることも…。
そうでなければ魔法はイメージできない。

「さて、今回のメインイベントです。これまでどおりで行くが、ディートリヒもベリルも先ずは雑魚からいってくれ。その間にワイバーンを落とすから。
 それとお三方は、後ろで控えていてくれ。今回は手出し禁止だ。
 もし、相手が強かったら、君たちも巻き添えになってしまうからね。」
「分かりました((分かりました))。」

 グラビティがダメでもインドラがある。インドラであれば空中でも当てることが可能だ。

「んじゃ、皆、行こうか!」

 バフがかかり、ボス部屋に入った。

 うわ!広い。それに空がある。
初めて見るボス部屋だ。
地上には、バジとコカが並んでいる。
空にはワイバーンが5体優雅に飛んでいやがる。

「それじゃ、地上から。ディートリヒとベリルはコカから、俺はバジで。」

 コカとバジは初見ではないので、瞬殺されていく。
バジを倒した後、5体に向けて魔法を放つ。

「いけ!グラビティ!」

 それまで優雅に飛んでいたワイバーンが一気に落下し、地上に激突した。
後は、ディートリヒとベリルの蹂躙だった。
脳天に剣を突き刺し、それで終了。

 ここも瞬殺状態だった。

 そして宝箱。
今回は俺が解除する。
中身は…、ワイバーンの卵?なんだこれ?

「なぁ、これって生きてるのか?」
「さぁ、バッグの中に入りますか?」
「あ、入った…、って事は死んでるって事か…。なんか良く分からんアイテムだな。」
「さて、これでダンジョン研修は終了です。
 みなさん、お疲れ様でした。」
「ありがとうございました((((はい!)))」

 転移石を使い入口へ、そして地上に出た。

「お、あんちゃんお帰り!今回は第何階層まで行って来たんだ?」
「えぇ、ワイバーンの居る第25階層まで行きました。」
「へ?第25階層だって?」
「ええ、確認しますか?」
「お、おぅ。んじゃ、ギルドカードを…、ってほんとだ。
 あんたたち、すげーな。」
「そんな事ありませんよ。では街に戻りますね。」
「おう!道中気を付けてな!」

 守衛さん、良い人だ。
俺たちは、街まで歩く。
この時間も好きだ。なにか達成感がある。
そんな気分の中、6人で街に向かって歩いて行った。
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