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第四章

4-7 ダンジョン探索③

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「すまん。ディートリヒ。全滅させてしまった…。」
「い、いえ。カズ様、ほんとに規格外です。」

 困ったものだ。これではディートリヒの経験にもならない。
ドロップアイテムを拾う係になってしまっている…。

 気を取り直して、第10階層のボスに挑む。
今度はディートリヒの無双に期待しよう。
ボス部屋まで到着。

「ボスだが、今度はディートリヒがメインでやってもらうけど、大丈夫か?」
「ボスによりますが、何とかやれるようにします。」
「んじゃ、俺は取り巻きを倒すからボスを頼む。もしヤバかったら言ってくれ。」
「分かりました。」

 俺たちはボス部屋に入った。
 ボスは9階に引き続きアラクネさんだった。でも今回のアラクネさんは9階よりも大きい。
取り巻きはクモ…。エアカッター10個準備して、取り巻きに当てていく。
脚やら胴体がバシバシ切られていくわ…。緑色の体液をまき散らしてる…。
 10個のエアカッターで取り巻きは消滅。後はディートリヒとアラクネさんだ。
剣撃を飛ばしながら近づくも、相手も糸を出す。その糸を避けるようにまた剣劇を撃つ。
一進一退といったところか…。
しかし、アラクネさんの方が一歩早かった。
 アラクネさんの糸がディートリヒの脚にまとわりつく。
粘着性があるのか、スピードが遅くなったディートリヒに大量の糸が浴びせかけられる。
溜まらず、俺はエアカッターで飛んで来る糸を切り刻みながら、本体にエアカッターを当てていく。
そして、アラクネさんの胴体が切れ絶命した。

「ディートリヒ、大丈夫か。」
「はい。でも、私だけでは倒せなかったです。まだまだ精進しなくてはいけませんね。」

 確かにそうではあるが、おそらくこのアラクネさん強いと思う。
粘着性の糸を縦横無尽に出した攻撃はなかなか避けられるものではない。
俺はディートリヒに付着した糸を取りながら、今日はここまでとしようと告げる。

「カズ様、宝箱をお願いします。」

あ、忘れてた。
宝箱を鑑定すると
 宝箱:罠(毒)と出る。

「ディートリヒ、毒の罠がかかっている。」
「毒ですか?確か先ほどのドロップで毒消しがあったと思いますので、罠にかかった際にはそれで対応いたしましょう。」
「分かった。んじゃ、毒消し頂戴。」
「え?カズ様が開けるんですか?」
「そうだけど…。」
「その役目は私です。万が一、カズ様に倒れられてはいけませんので。」

いや、誰も倒れちゃいかんけど…。
ディートリヒはふんすか言いながら全身をネチャネチャさせながら宝箱に近づく。
ディーさんや、クリーンはかけないのかね?

「では開けますね。えい!」

 おい!解除とかはしないのかよ。
そのまま開けやがった…。
勿論、罠は発動しました。宝箱から紫色のガスが出てディートリヒさん、確実に毒にかかりました。
が、毒消しを飲み、何事もなかったかのように、宝箱の中身を取り出します。

「カズ様、当たりです!アラクネの魔眼です。」

 うん…。俺、何が当たりで何が外れなのかは知らないよ。
それに魔眼って、何? 厨二病?
何に使うモノなのか…。よく分かりません。
 取り巻きが落としたドロップを集めていくとありました!“アラクネの糸”です。
確か取り巻きにはアラクネさんはいなかったような気がするが、まぁボスが落としたんだろうと一人納得してアイテムボックスに入れる。

「んじゃディートリヒ。ダンジョンを出ようか。」
「はい。カズ様。」

 って、ねちょねちょのままなんですが…。

「ディーさんや…、そのねちょねちょはクリーンで落ちないのかね?」
「はい。これはクリーンでは落ちないのです。
  帰りに小川に行き、お風呂に入りましょう。」

 あ、そういう事か。
お湯で洗えば綺麗になるって事だね。

「んじゃ、帰還しよう。」

 俺たちはダンジョン入り口の通路に帰還し、守衛さんにダンジョンを出た旨を連絡し街へ戻る。
途中、守衛さんが怪訝な顔をして、『何でダンジョン内で洗って来なかったんだ?』と質問していたが、ディートリヒは川で流すから問題ないと答えていた。

 小川に着き、風呂桶を出しお風呂の準備をする。
お風呂にお湯を入れる前にディードリヒを中に入れて上からお湯をかけた。
防具などを洗った後、赤面しながらディードリヒが俺を湯船に誘う。
 
洗ったお湯を一回落とすから待って、と言うも、湯船からでたディーさん、俺を強制的に裸にして一緒にお風呂に入る。
 
 ん?このヌルヌルは?

「アラクネの粘着糸はお湯に溶かすとヌルヌルになって肌触りが気持ち良くなるんです。」

 ディーさん、確信犯ですか…。
勿論、好きですよ。こういったプレイ。

 ヌルヌルしたお湯がお互いの身体にまとわりつきエロいです。
それに、今日のディーさん積極的です。お湯と手の滑り具合がとても気持ちいいです。
俺も調子に乗っていろんなところを撫でています。

 お湯とトロトロ、身も心もトロトロになって、二人で頑張ってしまいました…。

 数刻後、もう一度お湯で全身を洗い流し、衣類や防具もクリーンで水分を飛ばす。
何となく風魔法と火魔法をかけ合わせて温風を出すことに成功した俺は、ディートリヒの髪に温風をかけ髪を乾かすと、天使の輪ができるほどになっていた。

「ディートリヒ、髪の毛がすごく綺麗になったな。」
「ありがとうございます。これもカズ様のおかげです。」

 俺たちは風呂桶を収納し、近くにいそうなスライムを数匹倒し、皮を3枚はぎ取り帰ることとした。

 帰る最中、ディートリヒは俺の左腕につかまり、上気づき甘えた顔で俺にお願いされる。

「カズ様、またアラクネの糸を捕りにいきましょうね。」
「もちろん!」

 即答しました。
 その後、ディートリヒは『まだあんな事やこんな事も…ブツブツ』と独り言ちしていたが、聞かなかったことにした。
はい!積極的な女性は好きです。

街に戻り、宿屋に着くとラウロさんから、バスチャンさんがこの手紙を俺に渡すように言われたと言って、俺に手紙を渡す。

ディートリヒに書面を読んでもらうと、
「カズ様、明日の夕刻に伯爵邸まで来てくださいって…、これ招待状ですね。」

ついに来ました召集令状、所謂赤紙です…。
場違いな場所には極力行きたくはないんだが、伯爵のメンツもあるから仕方がない。
あきらめるとして部屋に戻っていった。

「ディートリヒ、明日伯爵家で何やら催しがあるから一緒に行こう。」
「しかし、招待されているのはカズ様だけではないのですか?」
「いや、こういう場合は同伴者を連れて行くのが礼儀なんだよ。」
「そういうものなんですか?」
「そういうものなんだ。
 それに、ティエラ様とお話ししただろ?」
「それは勿論!」
「んじゃ、明日の服に似合うものを探してみよう。明日の服を着てみて。」

 ディートリヒは昨日買った服を着る。
 背中が開いているからブラは付けることができない。次回は“ヌー〇ラやっほー”を買って来る必要があるな…。
 淡い青色のスレンダーライン、オフショルダータイプ、ディードリヒの金髪に似合ってる。とても綺麗だ。
これだけでも十分だけどまだ足りない。そう!アクセサリーだよ。

 アクセサリーに興味の無かった俺も、一週間でいろいろなファッション雑誌を読み、ディートリヒに似合うものを少しは買ってきた。
なんかプレゼントしたくて…。おっさんピュアなんですよ。

 ティアラは王様でも貴族でもないから無理と思って購入はしていない。
買って来たのはシュシュや髪留め、ネックレス、イアリング、そしてシルバーリング。
そりゃ、買うときは恥ずかしいけど、念珠と一緒に購入しているから、店員さんはハンドメイドで何か作るくらいしか思っていない。なので、恥ずかしさも半減で購入したんだ。

 あまり目立ってもいけないので、ドレスに合う空色に染めた髪留めと、シルバーのネックレス。ペンダントトップとイアリングはブルームーンストーンにした。
 あとは、左腕に念珠を付ける。
これも薄い青色をベースとしたものにした。

「こんなもんかな?」
「えと…、カズ様、これは一体なんでしょうか?」
「ん、これはアクセサリーっていうモノで…」
「いえ、アクセサリーは存じておりますが、この淡い青色や透明な宝石です。」
「あ、これ?こちらにもあるとは思うんだが、誰も見向きをしないような石を磨くとこういったキラキラ光るものになるんだよ。」
「このような貴重なものを…」
「貴重かどうかは俺は分からないから、ぜひ着けてみて。そして、明日、伯爵に来てる奴らの度肝をぬいてやろうよ。」

 ディートリヒさん、おどおどしています。

「どうした?」
「私は一体どれだけ高価なものをつけているんでしょうか…。」
「うん。分からない。明日、トレースさんに聞いてみる?」

 俺は愛想笑いをした。

 その夜、ディートリヒと約束した事は守られた…。
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