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第一章

1-7 上手に焼けました~

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 俺たちの周囲にバリアを張ったことは彼らには黙っていよう。
 魔法を使えば、ベアトリーチェさんやエミネさんが目を輝かせ、ひたすら追及してくるだろうから…。

神様がくれた創造魔法は、俺の中ではイメージができれば完成する。魔法の具現化ができるか否かにかかっている。
要するに、うまくイメージできるものは魔法として使えるが、イメージできないものは使えない。
“スペシ〇ム光線”のように、最終的なイメージができなければ魔法としてできない。そんな感じ。
それとも、最初に“八つ〇き光輪”のようなイメージを作ってしまったせいなのか、光とは塊なんだという固定観念を持ってしまったためなのか、自分でも上手く説明できない。
魔法が体系化、学術的に分析されていれば学ぶことも可能だろう。しかし、俺が使う魔法は創造…、つまり自分のイメージだけで魔法が使えるんだと納得している。
とにかく「考えるな、感じろ!」だ。

 そんな事を考えつつ、焚火の上の肉をくるくる回している。
肉からあふれ出る脂が焚火の炭に落ちる。脂一粒落ちるとその匂いが拡散する。
タンパク質を焼く匂いは一種の暴力であり、確実に相手を殺傷できる武器だ。
その証拠に4人のメンバーは、回している肉をジッと見つめている。ただ見つめているだけなら良いが4人とも涎が出ている。

 バーンさんからナイフを借り、焼けた部分の肉をそぎ落とす。
そぎ落とした肉に塩と胡椒を少々ふりかけ、各々の皿に盛る。
 「どうぞ。熱いうちに食べてください。」
と、言うや否や一気に食べ始める。

「うめー。」
「これはおいしい。」
「香辛料を使っているのですか…。」
「ほっぺが落ちる~。」

 4者4様の表現ではあるが、美味しいのだろう。
俺も一切れ口に入れる。

「お、普通に上手い。」

 オークの肉は豚肉のようではあるが、身がしっかりとしている。
脂身は落としたので、50を過ぎたおっさんでも美味しく食べることができた。
脂身が多いと胃がもたれるんですよ…。

半分くらい削ぎ落した塊に、今度はその辺に生えていた香りの強い葉っぱを焚火の中に入れて、肉を回し始める。
4人は何故葉っぱを入れるのか分からないようであるが、要は肉に香りを付ければ、香草焼きになる。勿論、燃やした葉っぱには毒性が無いものを教えてもらい使った。

しばらく肉を回していい色になって来た頃合いを見て、肉をそぎ落とし、皿に盛って渡す。
最初は怪訝そうに見ているが、匂いの暴力には勝てない。各々、香草焼きを口に入れると、途端に笑顔になる。
「んまい。」
 その一言が嬉しい。

「ニノマエさんは料理の天才ですね。」
「野営でこんなおいしい食事ができるなんて…。」
「俺、生きてて良かった…。」

ブライオンさんや…、そんな事言うとフラグが立ちます…。

 結局2kgくらいあった肉は、あっという間に5人の胃の中に消えていった。
飲み物は各自持っているようではあったが、練習したウルトラ水流ではなく、水を小さな球体にして出すことでのどの渇きを潤す。酒があれば尚良しかもしれないが、生憎俺は下戸だ。

 その後は団らんタイムだ。

俺は辺境の村からやって来たため、この界隈のことを知らない。そんな設定で4人から様々なことを教えてもらった。
国、貨幣、ギルド、暮らし…etc。
特に貨幣は重要だ。パン1個が銅貨1枚で買えるので、銅貨1枚100円ってところか。
銅貨10枚で銀貨1枚、つまり銀貨1枚が千円だな。

ん…、ちょっと待て!
バーンさん、さっき焼いた肉が銀貨20枚以上で売れるって言ってたよな?
そうすると、銀貨1枚が千円だから…、 俺たち5人で2万円以上食ったってことか!
2万円って言えば、俺の毎月の小遣いと同額だぞ…。

俺は心の中で泣いた…。
価値を知らない無知なやつが陥る初歩的な罠だったよ…。

会話をしていると、エミネさんがスッと席を立ち、森の中に行こうとしている。
あ、お花摘みね。
俺はバリアを解除し、彼女が何事もなかったかのように戻ってくるタイミングでもう一度バリアを張る。

 しばらくして、今度はベアトリーチェが、その次にはバーンとブライオンが…と時間差で動く。
あ″――――ウザイ。一緒に行けよ!特に男ども、お前らなら連れションも有りだろ!
などと思いながらも、一回一回バリアを解除し再度かけを繰り返す。

 エミネさんがおもむろに俺に話してきた。
「ニノマエさん、もしかして結界をかけていらっしゃるんですか?」

げ!ばれてたよ。それも結界って何て高尚そうな固有名詞だこと。

「あ、はい。自分も初めての魔法なので、実際効果があるのか分かりませんので。」
「いえ、ニノマエさんが何度もかけられている結界は、この中に誰も入って来れないくらい強いものです。だからですね、一回一回結界をかけておられたのは。」

と嫌に納得した顔で頷かれる。
はい、仰るとおりです。おっさん、バリアーは攻撃は通さないってイメージしてるから。

「いろいろと気を遣わせてしまってすみません。結界魔法って難しいんですよね。」
などと、ジト目で見てくる。
もしかして教えてくれって事か?
でも、おっさん、教えることできんよ。イメージできても言葉で説明できないからね。
イメージか…。じゃぁ、守りたい人が結界の内と外とを行き来できる結界をイメージすれば、一回で済むかも。

 早速、エミネさんに協力してもらい、先ずは全員が結界を出入りできるイメージでバリアを発動し、エミネさんに出入りしてもらう。結果成功。
 では、エミネさんを対象外に、彼女が外に出た後、バリアを発動。結果、エミネさん入ることできず。
 検証の結果、対象者を行き来することを可能とイメージすれば、それ以外は入って来れないことを確認できました。検証にご協力いただきましたエミネさん、ありがとう。

「うまくいきましたか?」
「はい。うまくいきました。これでその都度バリアを張る事をしなくて良さそうです。」
「それは良かったです。ニノマエさん、もしよろしければ回復魔法について教えてほしいのですが…。」
「エミネ…、先走りすぎ…。私だってニノマエさんが使った魔法の事知りたい…。」

 うわ、来た。さっきのキラキラ眼。
 そんな事言っても、説明できないものは説明できないから、教えようにも教えられないんだけど…。

「自分の魔法は特異なものだって、住んでた村の人から言われたことがあります。」
「そうだと思う。だって、あんな異常な速さで詠唱もなしに魔法が発動すること自体異質。」

聞けば、自身のマナの適性によって使える魔法が違う。火の適性があれば火、水なら水、風なら風となる。ほかにも教会では神の加護のもとに回復魔法を覚えることができるが、それにも適正があるらしい。まぁ、言うなれば適正にあったマナであれば魔法を使えるって事だ。

では、適性が複数ある人だっているはず。そういった人であれば治癒と火を使えるって事になる。
しかし、複数の適性を持った人は少ないらしい。
また、魔法を発動する時は、自身のマナを使い魔法陣のようなものを空間に描きながら発動するんだが、空間に魔法陣を描く際に必要な言葉があり、その言葉が詠唱と言われている。

 なので、俺のようなイメージだけで魔法を発動するという事は到底できないんだと…。
おっさん、高尚な話は良く分からない…。要は発動できれば良い!って思っているくらいだから。

「そろそろ遅くなってきたから、身体を休めよう。順番は俺、ベア、ブライオン、エミネの順で周囲の見張りを行う。おっさんは疲れただろうから今回は寝とけよ。」

 はい。おっさん、疲れ果ててます。
ここは甘えた方が良いと思い、「よろしくお願いします。」と伝えて、焚火の近くで横になった。
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