【R18】ユーテリアにさいわいを!

kuro-yo

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下界にて

4〜5:王族達

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「やむを得ん。秘具を使おう。」

 ブルビオ国の王妃の私室にて、長期の遠征のため不在の国王に代わり政務を執る王弟が、王妃にそう語りかけた。

「秘具…」

「一年近い国王の不在の折に、王妃が子を身籠るとは。」

「紛れもなく殿下のお子ですよ。」

「そんな事はわかっておる。」

「殿下には喜んではもらえぬのですね。私は愛するあなたの子を授かった事がとても嬉しいのです。たとえ不倫の謗りをうけようとも。」

「これが兄王の知るところとなれば、そなたと私は罰を受けるのだぞ。良くて王籍剥奪のうえ国外追放、悪ければ一生幽閉される事になる。」

「…それで、秘具とは。」

「我が王国に伝わる、換胎の魔具と呼ばれる、魔道具だ。」


 換胎の魔具は、読んで字のごとく、二人の妊婦の胎児を交換する事ができる呪具である。見た目は、まさに双頭の張り形ディルドであり、淫獣の触手を用いて邪属性の魔法で作りあげられた魔道具である。
 二人の妊婦が呪具のそれぞれの端を自身に挿入して使用する。使用者の魔力を使って呪具の魔法が発動し、一時間ほどかけて胎児の交換がなされる。胎児が完全に交換されるまでの間、使用者はこの世のものとは思えぬほどの快楽を感じ続けるという。その代償として、淫獣の邪気が使用者をいくらか蝕む。


「そしてこの秘具は、何も妊婦同士で使わなければならないという事はない。一方は妊婦でなくとも良いのだ。」

「つまり、自分の子を他人に産ませる事ができるのですね。」

「そうだ。但し、胎児を受けとる側の女は、秘具を使っている間中、耐え難いほどの苦痛に見舞われると言われておる。」

「ふふ、それ、面白そうですわね。」

「…王妃?」

「使いましょう、その秘具とやらを。それはどこにあるのです?」


 その夜城の地下の一室で、一人の女のよがり声と、もう一人の、拘束され、目隠しをされた女の断末魔とも思える叫び声とが、部屋中に反響していた。しかし、その部屋にいた一組の男女と、その二人が騙して呼び出した一人の処女以外に、それを耳にした者は誰もいなかった。


 その数ヶ月後、王都から離れた辺境の村の、人目を憚るように建てられた小さな小屋の中で、赤ん坊の女の子が一人産声を上げた。

 赤ん坊の母の名はマリアンヌ。元は王都のアディアナ神教会で聖処女の見習いだったが、ある時受胎している事がわかり、教会から破門されてしまった過去を持つ。その時受胎していた子が、今産まれた女の子である。

 小屋の中ではもう一人、マリアンヌの兄で冒険者のディックがいて、妹の身の回りの世話をしていた。

「マリー、子供の名前は決めたのかい。」

「ええ、兄さん。アディアナ様から天恵があったのよ。」

「本当かい!?」

「ええ。この子はアディアナ様に見守られているのね、きっと。」


 こうして産まれた女児は、ユーテリアと名付けられた。
 

 ユーテリアが産まれて間もなく、国王が長い遠征を終え、突然王都に帰還した。

 王都が凱旋ムードに活気づいている頃、王都のアディアナ神教会の祈りの間にて、アディアナ神に祈りを捧げる老人の姿があった。

「そこにいらっしゃるのは大賢者様ではございませんか。お戻りになられましたか。」

 教会の神職に声をかけられ、老人は声の方を振り向いた。

「しばらくぶりだね。さっき戻ったところだよ。老骨に長旅はきつい。」

「お戯れを。」

 どこからどう見ても矍鑠としている老人は、神職と笑い合った。

「早速だが、マリアンヌは元気にしておるかの。」

「それが…」

 神職にマリアンヌが破門となった事を告げられ、大賢者は一度アディアナ神に短い祈りを捧げ、失意のうちに教会を立ち去り、王城に向かった。


「聖賢女の器たるマリアンヌを教会が破門にしたそうだな、ユリナス。やれやれ、王国史上、我が王妃に続いて二人目とは、いやはや…。」

 国王の執務室にて、国王にそう言われた大賢者は、しばらく逡巡した後、国王に嘆願した。

「私を新たな器探しに派遣してください、陛下。魔王を倒すためには、聖賢女の器となる娘がどうしても必要なのです。」

「しかし今は遠征から戻ったばかりで、派遣の費用が捻出できぬ。どうにか数年待ってはくれまいか。魔王の影響はまだまだ限定的なのであろう。多少の猶予はあるのではないか。」

「確かに多少の猶予はございますが。」

「そう慌てるな、時を待て。」

 しかし大賢者にすれば、その猶予が自分の寿命にも当てはめられるとは到底信じる事ができなかった。

「…。かくなる上は、少数の供を連れ、私費で参ります。さすれば、しばしの暇を頂きたく。」

「ユリナス。そちも頑固じゃ。」

 かくして、大賢者ユリナスは、慌ただしく旅支度を始めるのだった。

 王都でそんなやり取りがあったしばらく後、王国の外れでは、ユーテリアがついに前世の記憶を取り戻した。

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