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31話:物理と化学の共闘

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 再び柿渋作りをしている石角は、受験勉強と陸上本大会の練習をしながらその状態を伺う。

「この独特な匂い…最初は逃げたくなるものだったけど、武器になるんだと思うとなんか嬉しいな。変な感情だわ」

 ニンマリとした物理部部長の顔は、今にも何かをしでかすような雰囲気を醸し出している。同席していた富林も、石角と確認をするが匂いに悶絶した。

「鼻が死ぬぞ。でも、堀田さん苦手だったから色んな意味で死ぬかも」

「化学部巻き添えにしようぜ(笑)」

 石角のブラックな作戦案を止める事ができなかった。独特なオーラを周囲に放ちまくる。

 一方、ピラニア酸を調整している公森は溶液がスプラッシュできるように工夫を凝らしている。技名で言えばピラニアスプラッシュと言ったところだ。

「これくらいの強酸なら問題なさそうかな。あとはどうやって手榴弾のように投げて拡散するか、だなぁ」

 ピラニア酸をどのようにして大きな武器にするか、迷う中寺野に匹敵するバカ過ぎる考えが頭の中に雷の如く走る。

「そっか!大胆にこうしちゃえばいっか!」

 公森の笑顔は、どこかサイコパスじみたヤバい化学者へと変貌する。堀田から教わった技術をある意味感謝しながら殺意を出す女子というのも聞いたことがないだろう。

 準備を進めて決行日前日となり、物理部と公森が集まる。まずはクラッシャーの寺野と湯田が怪力を見せるべく、成果として鉄のインゴットを用意した。

「寺野は何するの?」

「下原、まぁ見てろって。マジパネェから」

 寺野は、履いていた靴と靴下を脱いだ後気を足に込める。その足は、目で見ても分かるほどの筋肉と血管が浮き出ていた。

「これが元祖フットクラッシャーの真髄だ!」

 寺野は一撃で厚さ10センチもある鉄インゴットを真っ二つにした。周りは拍手で賑わう。

「流石寺野や。車のエンジン壊しただけあるわ」

「梓馬先生、そんな言わないでくださいよ」

 煽りのように言う梓馬だったが、次の湯田の体つきに驚く。

「お前どうやってその筋肉鍛えたんか?石角からUSBメモリーをよく壊してたと聞いてはいたけど、アニメで言う世界最強の男じゃないか?」

「デッドリフトとかアブドミナルなどしましたし、体幹トレーニングやランニングなどをしてました」

 湯田の筋肉は、ボディビルダー日本代表として選出されてもおかしくないくらいの仕上がりだ。上腕二頭筋はともかく、太ももの筋肉は競輪選手にも匹敵する。

「寺野君!鉄のインゴットを10枚重ねて」

「これ厚さ10センチもあるけど良いのか?身長足りねぇだろ」

「バカにしないでよ、フットクラッシャー!」

 湯田は可愛く怒る。

 寺野は鉄のインゴットを重ね終わった後、距離を置く。湯田は瓦割りのような構えでインゴットの真ん中を見事に捉えた。

「これがUSBクラッシャーの力だよ!」

「湯田先輩すごい…。上の服も破れて下の床に風穴作りましたよ」

 加賀木が何気なく呟く。そこにいた人たちは、あまりの強さに大爆笑した。

「誰がこの床の修理代払うんだよ(笑)」

「ヤバすぎだろ。流石筋肉鍛えてるだけ強い」

「寺野に続いて黒歴史作ったね」

 石角と左右田、下原は湯田にお疲れの意を込めて煽る。湯田は分からずだったが、下原との握手で彼の手を握りつぶした。

「痛いって!バキバキって音が鳴ったしさ、何してんの?」

「目が信用してないように見えたから」

 理由が理由で特に物理部の女子は湯田の筋肉に一目惚れだった。

「鶴居さん、これヤバいよね」

「喬林さんもそう思う?この前腕がやばい」

 語彙力が追いつかない様子だった。しかし、加賀木はまたしても不思議すぎる言葉を口にした時、波乱を巻き起こす。

「湯田先輩ってそんな力が最初からあるなら、下原先輩の今までの借金分を出す意味で握り潰したらどうですか?」

 湯田はニヤリ。下原は、荷物をまとめてそろりそろりと逃げようとしたが時すでに遅し。

「あっれれ~?なんで逃げるのかな~?」

「喬林!どけぇ!」

 下原の両腕を抑えられた後、湯田は指の関節をバキバキと音を出しながら一言声を掛ける。

「さて、生クリームしゃぶしゃぶのお返しをこの鍛えられた肉体で返そうかな」

「やめてくれぇぇぇ」

 下原は堀田毅を潰す決行日の前日に、両手の骨を湯田によって握り潰された。

 その姿は、軟体動物の一種でもあるタコのような状態だ。
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