学園生活は意外と大変

白鳩 唯斗

文字の大きさ
2 / 7
第一章・第一幕

学園に到着

しおりを挟む
2
 結局俺は書類にサインをしてしまった。
 葬式を終えて、雪人と一緒に屋敷へ帰る。

「あたらしいパパ?」
「うん、俺は卯川魁星。君は今日から俺の息子で卯川雪人だよ」
「わかった・・・・・・・」

 雪人は死について理解しているようで、突然の出来事なのにこの状況を受け入れている。
 きっと、俺に気をつかっているんだろう。
 
 晃さんが言うには、雪人はまだ六歳で、今年から小学校に入る予定らしい。
 俺も二日後には全寮制の夢丘学園に入らなければいけない。本当にどうしようか・・・。

「とりあえず理事長に電話してみるか」

 携帯を取り出して、夢丘学園の理事長に電話をかける。
 屋敷をしばらく開けることになるから、出来れば雪人と一緒に寮で暮らしたい。

「もしもし、今お時間大丈夫ですか?」
『ああ、君の部下から家の事情は聞いたよ・・・・・・。息子が出来たんだってね?』
「はい。それで、出来ればなんですけど――」
「君が心配していることは分かってる。息子くんも連れてきて構わないよ」
「・・・・・・・・ありがとうございます・・・・・・」

 良い事のはずなのに、すごく複雑な心境だ。
 電話を切って、まずは食事の準備に取り掛かる。

 冷蔵庫を開けると、母さんが作った手料理の残りや、半分だけ残った野菜などがあった。
 捨てなきゃいけないと分かっているのに、なかなか捨てられない。

 適当に卵を取り出して、油を垂らしたフライパンの上でかき混ぜる。
 今日のご飯もスクランブルエッグと白米。

 作ろうと思えばなんでも作れる。
 ただ、食べる気力も作る気力もないだけだ。

「明日はちゃんと作るから、今日はこれで許して欲しい。いただきますしようか」
「うん、いただきます・・・・・・」

 一緒に手を合わせて、ご飯を食べる。
 雪人は真っ白な髪と青い瞳をしていて、もぐもぐとご飯を頬張る姿が可愛い。

 この子が孤独の中で生きるくらいなら、俺が引き取れて良かったのかもしれない。



 二日後。
 遺品の整理などは行わずに、屋敷はこのままの状態で保管することにした。

 寮に持っていくものはケースに詰めて、先に送ってある。晃さんが迎えに来るのを待つ。

「どこにいくの?」
「俺たちが一緒に住む所に行くんだよ」

 雪人はずっと俺の手を握っていた。
 インターネットの情報によると、小さい子供は環境の変化に弱く精神的に負荷がかかるらしい。

 向こうに着いたら、子供用の携帯を買って、出来れば小動物なんかも飼ってあげたい。

「もしもペットを飼うとしたら、何が良いかな?」
「ぼく、とりさんといっしょにさんぽしたい・・・。あと、イヌとネコとフクロモモンガ・・・・・・」
「も、物知りだね・・・・・・。考えておくよ」

 最後のは想定外だった。
 そうか・・・フクロモモンガか・・・・・・・。
 さすがに俺一人でペット四匹と子供一人の世話をしながら学校生活を送るのは厳しい。

 どうしたものか考えていると、送迎用も車が屋敷の前に止まった。
 雪人と一緒に車に乗る。

「後見人の問題や遺産の相続などの手続きは我々が処理しておきました」
「ありがとうございます」

 卯川家に仕える家紋は5つある。
 どの家も俺達を最優先に考えてくれて、忠義に厚い人達ばかりだ。

 ズラズラと長い紙に書かれたリストを確認する。
 俺が相続したのは親戚たちが遺した全ての資産。
 土地や会社の経営権、株や金など、総資産額100兆を超えるものだった。

 たった一日で、世界一の富豪になってしまった。
 いくらお金があっても、俺が本当に欲しいものはもう戻ってこないというのに・・・・・・。

「はぁ・・・いつまでも落ち込んでいる訳にはいかないよな・・・・・・・」
 
 血の繋がりは薄いとはいえ、雪人は唯一の血族。
 晃さんに頼まれなくとも、俺が面倒を見なければならないことに変わりは無い。
 父親・・・・・・として、もっとしっかりしないと・・・・・・。



「雪人様の送り迎えは私が担当させていただきます。毎朝6時半頃にお迎えにあがります」
「本当にありがとうございます。お気をつけてお帰りください」
「あきらおじさん、バイバイ・・・・・・」

 雪人と一緒に晃さんを見送る。
 晃さんから受け取った、護身用の日本刀を腰に携えて、俺は学園を見上げた。

 夢丘学園は由緒ある名門校で、小中高一貫の全寮制の男子校だと聞いている。
 在校生のほとんどが政治家や名家の子息で、治外法権のような場所だそうだ。
 
 ざっと見ただけでも、某テーマパークがふたつあっても足りないほど広大な敷地だった。

 正門はオートロックのようで、顔認証で開けることが出来るらしい。
 センサーを覗き込むと、自動的に門を開く。

「わあぁ・・・! すごい!」

 雪人がぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ。
 門を潜ると、そこにはおとぎ話に出てくるような、王城のような光景が広がっていた。

 両脇には綺麗な花が植えられていて、門のすぐに先には噴水の広場があった。
 広場から前、左、右には桜の木で道が作られており、それぞれの道の先には大きな建物がある。
 
 右の道の先には初等部、中央の道の先には高等部、左の道の先には中等部があるらしい。

「行くよ、雪人」
「はい」

 手を繋いで真ん中の道を進む。桜がヒラヒラと舞い散り、幻想的な景色が広がっていた。
 宙を舞う桜を掴んだ雪人が、得意げに笑みを浮かべ、こちらを振り向く。

「とれた・・・! みて、ママ! パパ! ・・・・・・・あっ・・・・・・・」

 雪人の笑顔が消えた。
 そして、申し訳なさそうに俯く。
 
 まだ六歳の子供なのに、そんなに気を遣わなくても良いのに、そう言ってあげたかった。
 
 長い道を歩くのは疲れるだろうと、しゃがみこんで両手を広げる。

「好きなように呼んで良いんだよ。ママでもパパでも、お兄ちゃんでもおじさんでも」

 俺が雪人の好きなものになってあげる。
 そう笑顔で告げると、雪人の身体が震えた。

 抱っこしているから表情は見えないが、声を殺して泣いているんだろう。
 背中をポンポンと叩いて、俺は寮に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平穏な日常の崩壊。

猫宮乾
BL
 中学三年生の冬。母の再婚と義父の勧めにより、私立澪標学園を受験する事になった俺。この頃は、そこが俗に言う『王道学園』だとは知らなかった。そんな俺が、鬼の風紀委員長と呼ばれるようになるまでと、その後の軌跡。※王道学園が舞台の、非王道作品です。俺様(風)生徒会長×(本人平凡だと思ってるけど非凡)風紀委員長。▼他サイトで完結済み、転載です。

世話焼き風紀委員長は自分に無頓着

二藤ぽっきぃ
BL
非王道学園BL/美形受け/攻めは1人 都心から離れた山中にある御曹司や権力者の子息が通う全寮制の中高一貫校『都塚学園』 高等部から入学した仲神蛍(なかがみ けい)は高校最後の年に風紀委員長を務める。 生徒会長の京本誠一郎(きょうもと せいいちろう)とは、業務連絡の合間に嫌味を言う仲。 5月の連休明けに怪しい転入生が現れた。 問題ばかりの転入生に関わりたくないと思っていたが、慕ってくれる後輩、風紀書記の蜂須賀流星(はちすか りゅうせい)が巻き込まれる______ 「学園で終わる恋愛なんて、してたまるか。どうせ政略結婚が待っているのに……」 ______________ 「俺は1年の頃にお前に一目惚れした、長期戦のつもりが邪魔が入ったからな。結婚を前提に恋人になれ。」 「俺がするんで、蛍様は身を任せてくれたらいいんすよ。これからもずっと一緒っすよ♡」 ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢♦︎ ♢ 初投稿作品です。 誤字脱字の報告や、アドバイス、感想などお待ちしております。 毎日20時と23時に投稿予定です。

どうしてそうなるんだよ!!!

藤沢茉莉
BL
俺様な会長、腹黒な副会長、無口な書記、双子の庶務……不本意ながら生徒会役員に選ばれてしまった見た目不良なお人好し主人公が、バラバラな生徒会をなんとかまとめようと奮闘する話。 多忙のため少々お休み中。 誤字脱字ほか、気になる箇所があれば随時修正していきます。

全寮制男子高校 短編集

天気
BL
全寮制男子高校 御影学園を舞台に BL短編小説を書いていきます! ストーリー重視のたまにシリアスありです。 苦手な方は避けてお読みください! 書きたい色んな設定にチャレンジしていきます!

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

処理中です...