第1回ホラー・ミステリー小説大賞
選考概要
ホラー・ミステリー両ジャンル多彩な作品が集まる中、編集部内で大賞候補作としたのは、「人形の輪舞曲(ロンド)」「のりこさんによろしく」「探偵と助手の日常」「放課後の乙女探偵はスイーツを手放せない」「お悔やみ様は悪鬼に祟る」「白雪姫の接吻」「極上の女」「コンビニ夜話」の8作品。最終選考の結果、いずれも大賞には一歩及ばないとし、それぞれ異なる特徴があり評価が分かれた「探偵と助手の日常」「極上の女」の二作を特別賞に選出することとした。
「探偵と助手の日常」は、切れ者だが癖のある探偵と苦労人男子高校生の助手が織りなすキャラ文芸系ミステリー。小江戸川越という絶妙なローカル感や、会話を主体とした探偵紗川の謎解きなど、ニーズを意識したとっかかりやすい設定に評価が集まった。一方で、キャラクターの個性という点でやや物足りなさがあったのが残念だった。
「極上の女」は、とある少女が母親とともに古びた一軒家に引っ越すことから始まるホラーミステリー。曰く付きの家に幽霊が出るという恐ろしさに加え、周囲の薄気味悪い登場人物達をうまく絡ませながら、主人公の薄暗い過去や家庭環境を明らかにしていく構成が見事だった。所々設定に粗さが見られたのが惜しかった。
なし
人形の輪舞曲(ロンド)
探偵と助手の日常
一癖ある美貌の探偵とその助手を中心に、キャラクターたちの軽妙なやり取りが心地よい作品でした。川越という舞台設定や、時折出てくるお菓子やコーヒーの描写など、読者を惹きつける工夫が随所に感じられ、ミステリーファン以外にも楽しんでもらえるお話になっていると思います。
極上の女
不可解な夢や幽霊といった非現実的な要素と、主人公の周囲を取り巻く歪んだ現実とが入り交じる構成が巧みでぐいぐいと引きこまれました。次第に明らかになっていく主人公の暗い過去や内面に抱えた攻撃性にも不気味さがあり、総じて、読み応えのある作品に仕上がっていると思います。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。冒頭からの流れるようなストーリー展開に、次はどのような事件が起こるかと先が気になる作品でした。場面に臨場感があり、読者はまるでミナミや誠二と一緒に謎に立ち向かっているような気持ちになれたのではないでしょうか。