第15回絵本・児童書大賞
選考概要
第15回となる今回の応募数は1,211作品と、過去最高だった前回を超えるエントリー数となった。一次選考を通過したのは、絵本22作品、児童書24作品の計46作品。
その後さらに検討を続け、大賞候補に残ったのは、絵本からは「ながーーーーーーいキリン」「ベアソムとナギはどこ?(ドイツの旅)」「はんにんは ------たべられたケーキ------」「たべていいよね」「にじいろのしっぽ」、児童書からは「天乃ジャック先生は放課後あやかしポリス」「【完結】またたく星空の下」「ユメコネクト☆ ~夢の中で魔物をやっつけろ!~」「鮫嶋くんの甘い水槽」「転校生はおんみょうじ!」のあわせて10作品。
最終選考の結果、いずれも個性的で魅力あふれる意欲作ではあったものの、ストーリー、そして絵本の場合は画力も含め、いずれもあと一歩決め手に欠け、残念ながら大賞はなしとした。
しかしその中でも、構図が巧みな「ながーーーーーーいキリン」をアイデア絵本賞に、ラストにドキッとさせられる「たべていいよね」をちょっとこわい絵本賞に、読み聞かせが楽しそうな「はんにんは ------たべられたケーキ------」を親子で遊べる絵本賞に、陰陽師の設定をうまく取り入れた「転校生はおんみょうじ!」をサバイバル・ホラー児童書賞に、中学生の淡い恋心を描いた「鮫嶋くんの甘い水槽」を学園恋愛児童書賞に、吹奏楽部の青春を描いた「【完結】またたく星空の下」を君とのきずな児童書賞に選出した。
なお、最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。
「ながーーーーーーいキリン」は、子供のキリンがお母さんの長い首に憧れ、自分の首がどんどん長くなって、広い世界を探検することを夢想する可愛らしい物語。大胆な画面構成が楽しく、言葉選びにも著者独特のリズムがあり、全体的に勢いを感じる作品だった。
「たべていいよね」は、可愛らしいイラストと、狼がどんどん動物たちを食べていき、最後には……というストーリーとの大きなギャップが怖さを誘った。構成の巧みさと大胆なラストには大人でも恐怖を感じる迫力があり、まさに「ちょっとこわい絵本賞」に相応しい作品だった。
「はんにんは ------たべられたケーキ------」は、探偵がケーキを盗み食いした犯人を捜していく物語。犯人と名指しされた動物たちの画面いっぱいのリアクションがユニーク。子供たちが大笑いする様子が目に浮かぶような、読み聞かせにぴったりの作品だった。
「転校生はおんみょうじ!」は、主人公と陰陽師の転校生が、学校や街で起こる怪異な事件を次々に解決していく児童小説。個性的なキャラクターと安定感のあるストーリー展開は読み手を飽きさせず、ぐいぐい先を読ませる力のある小説だった。
「鮫嶋くんの甘い水槽」は、同級生のコワモテ男子とひょんなことから同居することになった主人公が、実は生き物好きな彼の優しさをみんなに知ってもらうため「いきもの係」になるという物語。主人公はもちろんライバルも魅力的で、王道の青春恋愛小説として人気を集めた。
「【完結】またたく星空の下」は、吹奏楽部に所属する内気な中学一年生の主人公が、学校生活の中で自分の殻を破り、大きく成長していく姿を描いた作品。文章表現力の高さで、読者を一気に物語の世界観に引き込んでしまう点が評価された。
受賞を逃した作品の中にも、是非出版化を進めたい、あるいは出版化の道を探りたい魅力のある作品が数多くあり、個別に連絡をしていく。
また、2023年8月には「児童書」ジャンルを独立し、新設のコンテストとして「第1回きずな児童書大賞」を開催する予定である。児童小説の新星となる書き手の応募を期待したい。
なし
空の国のハルメン
ながーーーーーーいキリン
親子でほっこり楽しめる作品。成長を夢見るキリンが世界に憧れる様子は微笑ましく、最終的に母親への大好きな気持ちを再認識するのもとても可愛らしかったです。言葉選びや大胆な画面構成にも独自のセンスを感じます。
たべていいよね
シンプルでかわいらしい絵柄と、襲い来る恐怖のギャップに惹きつけられる作品です。大人も思わず驚いてしまうラストの見開きの画面作りはとても効果的で、前半から煽られてきた恐怖が爆発する構成も良く練られていると感じました。
はんにんは ------たべられたケーキ------
探偵に「はんにんは おまえだ!」と指をさされた動物たちのリアクションがユーモラスでかわいらしく、ページをめくるのが楽しくなる作品でした。勢いのある作風は読み聞かせにぴったりで、子供たちとの楽しいコミュニケーションを盛り上げてくれそうです。
転校生はおんみょうじ!
ちょっぴり怖がりな主人公が怪異に巻き込まれ、転校生のイケメン陰陽師に助けてもらう……というキャッチーな設定に引き付けられました。キャラクターも魅力的で、展開も大胆で凝っており、物語にぐいぐい引き込まれていきました。
鮫嶋くんの甘い水槽
不良っぽい同級生と同居することになった主人公が、彼の優しさと「いきもの愛」に触れ、次第に淡い恋心を抱いていく様子が瑞々しい筆致で描かれた秀作。誰もが心の片隅で憧れる甘く切ない青春の物語でした。
【完結】またたく星空の下
「またたく星空」というタイトルが作中に印象的に使われている美しい作品。丁寧な心情描写に愛を感じました。他者とのコミュニケーションがうまく取れず、ついネガティブになってしまう主人公が、挫折を糧に大きく成長していく姿が魅力的です。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
奨励賞
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ベアソムとナギはどこ?(ドイツの旅) ( トリスヨシコ ) <7 位>
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母さんは、死者の国。 ( 糸掛 理真 ) <39 位>
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女王転生 デーモンヒーラー ( 中川鈴野 ) <42 位>
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ユメコネクト☆ ~夢の中で魔物をやっつけろ!~ ( 成井露丸 ) <45 位>
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ニャンコクイズ (rainbow) <89 位>
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靈界レスQテンマ ( 常葉みつき ) <93 位>
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山笑う娘 (瀬戸晴海) <136 位>
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心霊部へようこそっ! ( 緒方あきら ) <143 位>
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まじない師見習いと夜の国―The story of children Who couldn’t fly (瀬戸晴海) <912 位>
ポイント最上位作品として、”読者賞”に決定いたしました。主人公のハルメンをはじめ、心優しい登場人物たちと美しい色彩に癒される作品でした。また、音楽をつけるなど、著者ならではの作風もユニークです。