上 下
25 / 266
第1章……王国編

24話……魔力を認識してみよう

しおりを挟む
「では魔法の説明を始めますね」
「よろしくお願いしまーす」

 楽しみだ。サーシャはどんな授業をしてくれるのだろうか。

「では【魔法とはなにか?】ということから説明しますね」


 ~レッスン1、魔法とは?~

 魔法とは、体内の魔力を操り各属性に変換して放つ技術のことを言う。

 魔力とは、空気中に存在する魔素を体内に取り込んで変換したもののこと。
 ステータスの魔力とは魔素の変換効率、体内に留めておける魔力の量のこと。

 属性とは、火、水、風、土を基本とするが他にも沢山ある。

 魔法適性とは、適性のある属性には効率よく変換できる。
 逆に適性の無い属性の魔法は使えるけど魔力を余分に使用してしまうし、威力も出ない。


「という感じです。ここまでは大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。わかりやすいよ」

 どこかで見た設定と酷似してるし覚えやすい。

「では次に進みますね、次は【魔法の使い方】です」

 レッスン2~魔法の使い方~

 魔法を使うのに大切なのはイメージと魔力コントロールである。
 イメージが明確でないと必要以上に魔力を込めないと魔法は発動しないし、イメージが明確でも発動に必要な魔力が足りないと発動しない。

 イメージが明確で必要以上に魔力を込めすぎるとその分は無駄になる。


「簡単に説明すると以上です」
「魔力コントロールねぇ……」

 定番中の定番、ド定番なんだけど、魔力コントロールどうやるんだろう?
 妄想は得意だからイメージは大丈夫。

「まずは魔力を感じることからですね。魔力を感じられたら体内での操作、放出の順番に練習しましょう」
「わかったよ。それでどうやって感じればいいの?」

 やり方さっぱり思いつかないよ。

「主に瞑想ですね。私が教わったのは魔素の豊富な森の中で意識を自分の内側に向けて……という感じです」
「森の中って危なくないの?」
「もちろん安全確保はしっかりしていますよ。王国では分かりませんが教国ではこれが一般的なので魔物や危険な動物を排除した小さな森がありましたので」

 なるほどなぁ、それなら安全に集中出来るのか……

「それでどのくらいで自分の魔力って感じ取れるの?」
「それこそ人によるとしか……私の場合ですと確か3日目か4日目になんとなく感じられてそこから1週間くらいでハッキリ認識出来たって感じですね。自分で言うのもアレですが、結構早い方らしいです」
「そうなんだ、やっぱり聖女の職業を得てるくらいだしすごい才能なのかな?」
「そんな……私なんてクリード様の足元にも及びませんよ!」

 なんでサーシャは俺の事全肯定なんだろうね?

「しかし森の中で瞑想ね……王都にそんな場所あればいいけど」
「クリード様……例え見つけたとしても明日出発です……」
「そうだった……」

 出来ないじゃん。
 これはリンも教えてくれなくて当然だわ……いやリンは本当にめんどくさかっただけな気がするな。

「森の中は難しいですが……瞑想する事に意味がありますよ!  だから諦めないで頑張りましょう!」
「そうだね。時間はかかるかもしれないけど毎日瞑想するようにするよ」
『マスター、よろしいでしょうか?』
「どうしたの?」
『魔力認識の訓練ですが、お役に立てると思います』

 毎度のウルトのよく分からない発言。
 魔力認識訓練の役に立てる?  どうやって?
 もしかして俺の代わりに自分が魔法使いますとかだったり……?

「えっと……どういうこと?」
『はい。マスターと私は魔力を同期しています』

 魔力同期?  あぁ、そういや召喚してすぐしたっけな。

「うん、それで?」
『マスターと私の魔力は同一です。ですのでマスターと私の間で魔力のやり取りが可能です』

 魔力の……やり取り?

「つまり?」
『私がマスターの魔力を吸収すれば魔力の吸い出される感覚を掴めるのでないかと』

 おぉ……なるほど……

「ウルト様、それではクリード様に負担がかかるのでは?」
『問題ありません。マスターの魔力が少なくなれば私からマスターに魔力をお渡しすることも可能です』
「そうなのですか?  それでしたらクリード様の負担はかなり少ないですね」

 本当に出来たトラックだよお前は……

「それなら頼もうかな?  それが一番早そうだ」
『お任せ下さい。それでは手を私に触れてください、魔力のやり取りは触れずとも行えますが接触吸収の方が感覚は掴みやすいと思います』
「わかった、よろしくね」

 ウルトを手のひらに乗せて意識を集中する。

『では開始します』
「おぉ?」

 ウルトが吸収を開始した途端、手のひらから何かが抜けていくような気がした。

「クリード様頑張ってください」

 サーシャは両拳を握って応援してくれる。
 なんだか癒されるしやる気出るんだよな……流石聖女様。

 しばらく集中していたが、なんとなく手のひらから抜けているような気がする、という段階から進むことは無い。

『マスターの魔力量が少なくなってきました。これからマスターに魔力を供給します』

 特に疲れや脱力感は無いが俺の魔力が少なくなってきたらしい。
 全然わかんない……

 供給する、と言われたが抜けていく感覚が無くなっただけで特に入ってくる感じも何かが満たされる感じも無い。

 んー……魔力に対して鈍感なのかな?

「全然分かんない……俺魔力の扱い向いてないのかな?」
「まだ始めたばかりですよ?  最低でも数日はかかると思いますので焦らずやった行きましょう!」

 そんなもんか……

『マスターの魔力が回復しました。吸収を再開します』

 再びなんとなく抜かれている感じ。
 なんか献血とか検査とかで血を抜かれてるのに似てる気がしてきた。

「表情が変わりましたが何か掴めましたか?」
「いや、なんか血を抜かれてるのに似てるなぁって思ってた」
「血……ですか?」

 こっちには献血や血液検査の概念は無いのかな?

「うん、俺のいた世界では血を失った人に分け与えたり、血の成分調べて健康状態判断したりしてたから血を抜くことは結構あったんだよ」
「なるほどそんな方法が……」

 サーシャは考え込んでしまった。
 予想は付くけど俺も詳しいわけじゃないからこれ以上話せないし、それより魔力の感覚を掴むことが大事だ。

 それからしばらく吸収と供給を繰り返したが感覚を掴むことは出来ず、夕食を食べて早めに床に就いた。


 翌朝、いつも通りに起床して準備、朝食を食べて宿を精算した。

 前払いしていたお金の返金は渋られたがなんとか返金してもらい冒険者ギルドへ。

「お待ちしておりました、こちらが新しい冒険者証と査定結果です」

 まずは全員分の冒険者証を交換、おぉ……金色に輝いてる……

 それから査定結果を受け取り目を通すと、そこには【金貨3枚、大銀貨3枚】と書かれていた。

 165万……
 魔法の付与された武器ってそんなにするの!?

「へぇ、中々の値がついたのね」
「はい。使い手はかなり選びますがやはり【状態保存】の価値は高いのでこの値段となります。どうされますか?」
「売却でお願いするわ。私たちじゃ宝の持ち腐れになるもの」
「かしこまりました。ではこちらが代金になります」

 リンは代金を受け取り手渡された紙にサインする。

「はい、確認しました。それで皆さんはこれから依頼ですか?」
「いいえ、北のリバークの迷宮に挑もうかと思っているわ」

 なんか頼みたいことでもあったのかな?

「そうですか……実はサーシャ様、ソフィア様、アンナ様のゴールドランク昇格試験のお話があったのですが……」
「あら?  それってここじゃないと受けられないのかしら?」

 昇格試験か……今さっきシルバーランクの冒険者証貰ったばかりなのにな……

「いえ、受験資格は満たしていますので何処の冒険者ギルドでも手続きをして頂ければ受けられますよ」
「なら宿も引き払っちゃったし、リバークで受けるようにするわ」

 受付嬢はかしこまりましたと引き下がる。
 せっかくここまでやってくれたのに心苦しいが今回は仕方ないね。

「ではまたのお越しをお待ちしております」
「ありがとう、元気でね」

 軽く挨拶をしてギルドから立ち去る。
 ギルドマスターに挨拶しなくてよかったのかな?

「いいのよ、どうせ引き止められたりして長くなるんだからさっさと立ち去るのが一番よ!」
「冒険者は自由な仕事ですからね。移動も依頼も基本自己責任です」
「そんなもんか、わかったよ」

 しばらくはこれで王都とお別れか……
 次の街はどんな街か楽しみだな!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

婚約破棄したい婚約者が雇った別れさせ屋に、何故か本気で溺愛されていました

蓮恭
恋愛
「私、聞いてしまいました」 __ヴィオレット・ブラシュール伯爵令嬢は、婚約者であるフェルナンド・ブルレック辺境伯令息に嫌われている。  ヴィオレットがフェルナンドにどんなに嫌われても、たとえ妹のモニクと浮気をされたとしても、この婚姻は絶対で婚約破棄などできない。  それでもなんとかヴィオレット側の都合による婚約破棄に持ち込みたいフェルナンドは、『別れさせ屋』に依頼をする。  最近貴族の間で人気があるラングレー商会の若き会長は、整った顔立ちな上に紳士的で優しく、まさに『別れさせ屋』にはぴったりの人選だった。  絶対に婚約破棄をするつもりがない令嬢と、嫌いな令嬢との婚約を破棄したい令息、そして別れさせ屋のイケメンのお話。 『小説家になろう』様、『カクヨム』様、『ノベプラ』様にも掲載中です。

子爵令嬢マーゴットは学園で無双する〜喋るミノカサゴ、最強商人の男爵令嬢キャスリーヌ、時々神様とお兄様も一緒

かざみはら まなか
ファンタジー
相棒の喋るミノカサゴ。 友人兼側近の男爵令嬢キャスリーヌと、国を出て、魔法立国と評判のニンデリー王立学園へ入学した12歳の子爵令嬢マーゴットが主人公。 国を出る前に、学園への案内を申し出てきた学校のOBに利用されそうになり、OBの妹の伯爵令嬢を味方に引き入れ、OBを撃退。 ニンデリー王国に着いてみると、寮の部屋を横取りされていた。 初登校日。 学生寮の問題で揉めたために平民クラスになったら、先生がトラブル解決を押し付けようとしてくる。 入学前に聞いた学校の評判と違いすぎるのは、なぜ? マーゴットは、キャスリーヌと共に、勃発するトラブル、策略に毅然と立ち向かう。 ニンデリー王立学園の評判が実際と違うのは、ニンデリー王国に何か原因がある? 剣と魔法と呪術があり、神も霊も、ミノカサゴも含めて人外は豊富。 ジュゴンが、学園で先生をしていたりする。 マーゴットは、コーハ王国のガラン子爵家当主の末っ子長女。上に4人の兄がいる。 学園でのマーゴットは、特注品の鞄にミノカサゴを入れて持ち歩いている。 最初、喋るミノカサゴの出番は少ない。 ※ニンデリー王立学園は、学生1人1人が好きな科目を選択して受講し、各自の専門を深めたり、研究に邁進する授業スタイル。 ※転生者は、同級生を含めて複数いる。 ※主人公マーゴットは、最強。 ※主人公マーゴットと幼馴染みのキャスリーヌは、学園で恋愛をしない。 ※学校の中でも外でも活躍。

『購入無双』 復讐を誓う底辺冒険者は、やがてこの世界の邪悪なる王になる

チョーカ-
ファンタジー
 底辺冒険者であるジェル・クロウは、ダンジョンの奥地で仲間たちに置き去りにされた。  暗闇の中、意識も薄れていく最中に声が聞こえた。 『力が欲しいか? 欲しいなら供物を捧げよ』  ジェルは最後の力を振り絞り、懐から財布を投げ込みと 『ご利用ありがとうございます。商品をお選びください』  それは、いにしえの魔道具『自動販売機』  推すめされる商品は、伝説の武器やチート能力だった。  力を得た少年は復讐……そして、さらなる闇へ堕ちていく ※本作は一部 Midjourneyにより制作したイラストを挿絵として使用しています。

転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~

夜夢
ファンタジー
 数々の発明品を世に生み出し、現代日本で大往生を迎えた主人公は神の計らいで地球とは違う異世界での第二の人生を送る事になった。  しかし、その世界は現代日本では有り得ない位文明が発達しておらず、また凶悪な魔物や犯罪者が蔓延る危険な世界であった。  そんな場所に転生した主人公はあまりの不便さに嘆き悲しみ、自らの蓄えてきた知識をどうにかこの世界でも生かせないかと孤軍奮闘する。  これは現代日本から転生した発明家の異世界改革物語である。

世界は節目を迎えました

零時
ファンタジー
 気が付くと主人公は、バスの車内にいた。  しかし彼にはバスに乗った記憶も、乗ろうとした記憶も無い。それどころか、友人、親、兄弟、自分の名前すら思い出すことができなかった。  そしてそのことについて深く考える暇もなく、彼は瞬間的に地獄を見ることになる。   プロローグは2話あります。

不忘探偵2 〜死神〜

あらんすみし
ミステリー
新宿の片隅で、ひっそりと生きる探偵。探偵は、記憶を一切忘れられない難病を患い、孤独に暮らしていた。しかし、そんな孤独な生活も悪くない。孤独が探偵の心の安寧だからだ。 しかし、そんな平穏な日々を打ち破る依頼が舞い込む。 ある若い男が事務所を訪れ、探偵にある依頼を持ちかける。 自分の周りでは、ここ数年の間で5人もの人間が不審な死を遂げている。ある者は自殺、ある者は事故、そしてある者は急な病死。そして、いずれも自分と親しかったりトラブルがあった人達。 どうか自分がそれらの死と無関係であることを証明して、容疑を晴らしてもらいたい。 それが男の依頼だった。 果たして男の周囲で立て続けに関係者が死ぬのは偶然なのか?それとも何かの事件なのか?

強引に婚約破棄された最強聖女は愚かな王国に復讐をする!

悠月 風華
ファンタジー
〖神の意思〗により選ばれた聖女、ルミエール・オプスキュリテは 婚約者であったデルソーレ王国第一王子、クシオンに 『真実の愛に目覚めたから』と言われ、 強引に婚約破棄&国外追放を命じられる。 大切な母の形見を売り払い、6年間散々虐げておいて、 幸せになれるとは思うなよ……? *ゆるゆるの設定なので、どこか辻褄が 合わないところがあると思います。 ✣ノベルアップ+にて投稿しているオリジナル小説です。 ✣表紙は柚唄ソラ様のpixivよりお借りしました。 https://www.pixiv.net/artworks/90902111

処理中です...